人工内耳埋め込み時の蝸牛内微小外傷を光干渉断層撮影と電気化学センシングで検出

人工内耳埋め込み時の蝸牛内微小外傷を光干渉断層撮影と電気化学センシングで検出

2025年12月1日

重度から高度の難聴に対する効果的な治療法である人工内耳(CI)の埋め込み手術において、蝸牛内の微小外傷をリアルタイムで検出する新しい方法が開発された。光干渉断層撮影(OCT)と電気化学センシングを組み合わせたこの手法は、残存聴力を持つ患者への人工内耳適応拡大に伴い重要性を増している蝸牛構造の保存に貢献する可能性がある。この研究成果は、Scientific Reports誌2025年11月28日号に発表された。


スナネズミモデルを用いた蝸牛内外傷検出法の開発

研究チームは、スナネズミモデルを用いて蝸牛内外傷をその場(in situ)で検出する新しいアプローチを開発した。具体的には、生体内(in vivo)での光干渉断層撮影(OCT)を用いて基底膜破裂や骨らせん板骨折などの構造的損傷を可視化し、同時に酸化ストレスのマーカーである過酸化水素濃度を検出するために改良された人工内耳電極アレイを使用した。蝸牛内外傷の検証と定量化には、造影剤を用いたマイクロコンピュータ断層撮影(microCT)が採用され、これにより新しい外傷スケールが確立された。この研究では、過酸化水素レベルが外傷スケールおよび外傷体積と有意に相関していることが示された。また、蝸牛内外傷検出のための受信者動作特性(ROC)曲線が作成され、センサーの診断能力が明らかにされた。


OCTと電気化学センシングの組み合わせによる外傷検出


研究結果から、生体内OCTイメージングと電気化学センシングを組み合わせることで、蝸牛内外傷を効果的に検出できることが示された。人工内耳埋め込み手術中に発生する可能性のある基底膜破裂や骨らせん板骨折などの微小外傷は、残存聴力の喪失につながる重大なリスク要因である。本研究で開発された方法では、OCTによる構造的損傷の視覚化と、改良された人工内耳電極アレイによる過酸化水素濃度の測定を組み合わせることで、これらの外傷をリアルタイムで検出することが可能となった。特に、検出された過酸化水素レベルは、マイクロCTで確認された外傷の程度と有意に相関しており、この方法の信頼性を裏付けている。ROC曲線分析により、このセンシング技術が蝸牛内外傷の診断に有用であることが示された。


次世代人工内耳開発への基盤技術としての期待


この研究成果は、埋め込み手術中にリアルタイムモニタリングが可能な次世代人工内耳の開発に向けた基盤を提供するものである。現在、人工内耳の適応は残存聴力を持つ患者にも拡大されており、手術中の蝸牛構造の保存がより重要になっている。早期の人工内耳埋め込みは聴覚的転帰の改善と関連しているが、埋め込み時の外傷リスクが残存聴力を損なう可能性がある。本研究で開発された技術は、手術中に蝸牛内外傷をリアルタイムで検出することで、術者に即時フィードバックを提供し、より安全な埋め込み手技の実現に貢献する可能性がある。これにより、特に残存聴力を持つ患者において、手術成功率の向上と聴覚機能の保存が期待される。今後は、この技術の臨床応用に向けた更なる研究が必要とされる。


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