Otol Neurotol
2025年10月9日
人工内耳電極アレイの挿入において、ロボット支援による自動挿入は手動挿入と比較して蝸牛内の力を有意に低減し、挿入の一貫性を向上させることが示された。また、電極ガイドチューブの使用により電極のバックリング(座屈)を効果的に防止し、より滑らかで再現性の高い挿入が可能になることが明らかになった。この研究成果は、Otology & Neurotology誌2025年10月7日号に発表された。
人工側頭骨ファントムを用いた90回の実験
この研究では、人工側頭骨ファントムを用いて合計90回の人工内耳埋め込み実験が実施された。実験は電極アレイの蝸牛への挿入、ツールからの電極の解放、およびその後のリード線固定という一連のプロセスで構成された。研究チームは3つの異なる挿入技術を比較した:手動挿入、電極ガイドチューブなしの自動挿入、および電極ガイドチューブありの自動挿入である。蝸牛内の力は、プロセス全体を通して時間同期されたビデオ記録とともに測定された。この実験設計により、挿入技術の違いによる蝸牛内の力の変化と挿入の再現性に影響を与える要因を詳細に分析することが可能となった。
自動挿入による最大力と力の変動の有意な低減
研究データは、自動挿入が最大力と力の変動を有意に低減することを確認した。しかし、この肯定的な効果は、電極のバックリング(座屈)修正やリード線操作などの手動操作によって相殺されることが明らかになった。特に挿入後の段階での手動操作は、蝸牛内に有意な力のピークを引き起こした。一方、ガイドチューブの使用は電極のバックリングと関連する手動操作を効果的に防止し、より滑らかで再現性の高い挿入を実現した。これらの結果は、人工内耳手術における電極挿入プロセスの改善に重要な示唆を与えるものである。
臨床応用に向けた手動操作の最小化の重要性
研究者らは、自動挿入の力低減効果を確認するとともに、ロボットデバイスを使用した挿入の再現性を向上させるために考慮すべき側面を提示した。臨床データでは、実験室実験で観察された自動化の利点が必ずしも明確に反映されていないことから、手動操作を減らすことで、これらの利点の臨床的な転用性が向上する可能性があると指摘している。人工内耳電極の挿入は、関連する外傷が聴覚結果に影響を与える可能性があるため、手術の重要なステップである。この研究は、挿入中および挿入後の最小限の手動操作による滑らかで安定した人工内耳電極の挿入が、蝸牛内の力に肯定的な影響を与えることを示している。
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