HIV陽性母親から生まれた子どもの聴覚機能、未熟児と新生児合併症が影響

HIV陽性母親から生まれた子どもの聴覚機能、未熟児と新生児合併症が影響

BMC Pediatr
2025年12月3日

南アフリカの三次医療機関において、HIV陽性の母親から生まれた子どもでは、未熟児出生、低出生体重、高ビリルビン血症、新生児集中治療室(NICU)入室、耳毒性薬物への曝露などの新生児合併症が聴覚障害と有意に関連することが示された。特に高ビリルビン血症と耳毒性薬物への曝露は、聴覚障害の独立した強力な予測因子であることが明らかになった。この研究成果は、BMC Pediatrics誌2025年12月1日号に発表された。


南アフリカの三次医療機関での後方視的データ分析

この研究は、南アフリカのヨハネスブルグにある大学病院で評価を受けた、HIV陽性母親から生まれた0~5歳の子ども85例の医療記録を用いた後方視的二次データ分析として実施された。研究対象となった子どもたちは性別分布がバランスよく、大部分が2~5歳であった。研究チームは、人口統計学的データ、臨床データ、聴覚検査データを抽出し、記述統計、カイ二乗検定、ロジスティック回帰分析を用いて、聴覚障害との有意な関連性や予測因子を特定した。この研究の目的は、低・中所得国(LMICs)である南アフリカにおいて、HIV曝露と不利な新生児転帰の両方が蔓延している状況下で、早期の臨床的リスク因子と聴覚障害との関連性を理解し、早期聴覚検出・介入(EHDI)戦略に情報を提供することであった。


新生児合併症と聴覚障害の関連性

対象コホートにおいて最も多く見られた新生児リスク因子は、低出生体重(58.8%)、未熟児出生(44.7%)、NICU入室(49.4%)であった。聴覚障害は全体の17.6%で確認され、そのうち感音性難聴(SNHL)が大多数(11.8%)を占めていた。分析の結果、聴覚障害と有意に関連していたのは、未熟児出生(p = 0.042)、低出生体重(p = 0.031)、高ビリルビン血症(p = 0.016)、NICU入室(p = 0.028)、耳毒性薬物への曝露(p = 0.012)であった。さらに、ロジスティック回帰分析により、高ビリルビン血症(オッズ比 = 4.12、p = 0.005)と耳毒性薬物への曝露(オッズ比 = 5.19、p = 0.002)が、聴覚障害の最も強力な独立した予測因子であることが明らかになった。


早期聴覚検出・介入の重要性と今後の展望

この研究結果は、南アフリカにおけるHIV曝露児の聴覚障害に新生児合併症が重要な要因であることを示している。特に高ビリルビン血症と耳毒性薬物への曝露が最も強力な予測因子として特定されたことは、リスクに基づいた早期聴覚検出・介入アプローチの緊急性を浮き彫りにしている。研究者らは、リスクのある新生児に対する定期的な聴覚フォローアップと、既存の母子保健の枠組みへの聴覚健康サービスの統合の必要性を強調している。低・中所得国における早期発見の取り組みを強化することは、予防可能な聴覚障害を減らし、公平な発達成果を促進するために不可欠である。今後は、これらの知見を基に、HIV曝露児を含むリスクの高い新生児に対する包括的な聴覚スクリーニングプログラムの開発と実施が期待される。


リンク先はAcademiaというサイトの記事になります。


 

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