Ophthalmic Genet
2025年10月9日
TUBB4B遺伝子の新規ミスセンス変異(c.784C > T, p.R262W)が、錐体杆体ジストロフィーと感音性難聴を引き起こすことが明らかになった。この変異は従来知られていたR390/R391ホットスポット領域外に位置し、レーバー先天性黒内障と比較して発症年齢が遅いという特徴を持つ。この研究成果は、Ophthalmic Genetics誌2025年10月7日号に発表された。
3家系7例の臨床的特徴と遺伝子解析
研究チームは、血縁関係のない3家系から7例の患者を対象に、超広角偽カラー眼底写真、自発蛍光眼底写真、スペクトラルドメイン光干渉断層撮影、全視野網膜電図、ゴールドマン動的視野検査、聴力検査などの多角的評価を実施した。さらに次世代シーケンシング技術を用いた遺伝子検査も行った。TUBB4B遺伝子はβ-チューブリン4Bアイソタイプをコードしており、微小管サブユニットの構成要素となっている。これまでTUBB4B遺伝子の病原性バリアントは、光受容体と蝸牛細胞の早期かつ重度の喪失を特徴とする常染色体優性疾患である「早発性難聴を伴うレーバー先天性黒内障(LCAEOD)」との関連が報告されていた。
従来のホットスポット外に位置する新規変異
今回の研究で同定されたTUBB4B遺伝子の新規ミスセンス変異(c.784C > T, p.R262W)は、これまで報告されていた主要な変異ホットスポットであるR390/R391領域の外側に位置していた。この変異を持つ患者は錐体杆体ジストロフィーと感音性難聴を呈していたが、従来のR390/R391ホットスポット変異によって引き起こされるレーバー先天性黒内障と比較して、一般的に発症年齢が遅いという特徴があった。研究チームは、この新規変異が錐体杆体ジストロフィーと感音性難聴の原因となることを、詳細な臨床評価と遺伝子解析によって明らかにした。
TUBB4B関連網膜症の病態解明への貢献
本研究は、TUBB4B遺伝子関連網膜症の変異スペクトルと表現型の範囲を、従来知られていたR390/R391ホットスポットを超えて拡大するものである。この発見は、チューブリン病と呼ばれるこの稀少疾患の病態生理の解明に新たな知見をもたらす可能性がある。TUBB4B遺伝子変異による疾患は、微小管の構造と機能に影響を与えることで視覚および聴覚の障害を引き起こすと考えられている。今回同定された新規変異は、従来の変異とは異なる分子メカニズムで疾患を引き起こしている可能性があり、発症年齢の違いなどの臨床的特徴の差異を説明する手がかりとなるかもしれない。今後、この新規変異の機能解析が進めば、TUBB4B関連疾患の病態解明や治療法開発につながることが期待される。
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