『難聴とソリューション』
「きこえ」は1人1人異なり、全く同じ聴力というものは存在しません。
難聴による「きこえにくさ」や「日常生活の不便さ」も人それぞれですので、1人1人、その人に合わせた解決方法を選択することが大切です。
きこえにくさを改善する方法には、手話、口話、筆談、補聴器、人工内耳、などがあります。
「聴力」と「生活スタイル」を考慮し、自分に合ったソリューションを組み合わせて活用することできこえにくさを改善します。
聴覚活用のソリューション例
補聴器
補聴器は普通の大きさの声で話される会話が聞き取りにくくなったときに、はっきりときくための管理医療機器です。
耳に掛けて使う「耳かけ型」、耳に挿入して使う「耳あな型」(1人1人の耳の形に合わせて作成するオーダーメイドタイプと、購入してすぐに使える既成タイプがあります)、携帯型のラジオのような「ポケット型」、音を振動で伝える「骨導眼鏡型」などさまざまな形状の補聴器があります。
補聴器は聴力検査の結果を参考にして、専門家に聴力に合わせて調整してもらって使います。
人工内耳
一般的に補聴器で補聴ができるのは高度難聴までで、それ以上の難聴者には「人工内耳」手術が考慮されます。人工内耳とは、マイクロホンで拾った音を人工的に電気信号に変え、その信号で直接聴神経を刺激する装置です。
体外装置と外科的手術で体内に埋め込む体内装置とで構成されます。
体内装置:①音を集めるマイク、②その音を電気信号に変換するプロセッサー、③信号を体内に送る送信コイル、④送信コイルをつなぐケーブル
体外装置:⑤耳介の後の皮膚の下に埋め込まれる受信装置、⑥蝸牛の中に埋め込む電極
人工内耳を通してきく音は機械的に合成された音であるため、術後にリハビリテーションを行うことで、徐々に言葉が聞き取れるようになります。
再生医療
京都大学の山中伸弥教授らによって世界で初めて作製されたiPS細胞を使った研究が内耳にも応用され始めました。このiPS細胞の技術を用いて、慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室と生理学教室の共同研究チームにより蝸牛のほぼすべての種類の細胞が作製されています。
近い将来、さまざまな難聴の詳細な原因の解明はもちろん、病態に即した新しい治療法の開発がこの技術を用いてなされることでしょう。
<きこえのコラム> 補聴器のように「きこえ」を補うツールに「集音器」というものがあります。 |
市村恵一(いちむら・けいいち)先生
東京大学医学部卒。耳鼻咽喉科医師。 浜松医科大学講師、東京都立府中病院医長、東京大学医学部講師、助教授、自治医科大学教授、副学長を歴任。 石橋総合病院院長を経て、現職。現在自治医科大学名誉教授、評議員。耳鼻咽喉科専門医、気管食道科専門医。 日本小児耳鼻咽喉科学会理事長、日本鼻科学会常任理事など多くの学会の要職を歴任。 難病のオスラー病鼻出血の手術治療の第一人者。補聴器適合判定医、 補聴器相談医の資格を活かして、最近は高齢者の補聴診療に携り、市村順子と「イチムラデザイン」を考案、実行。