まもなく開幕「東京2025デフリンピック」。世界が注目する “静かな熱戦” を楽しむための予習ガイド

まもなく開幕「東京2025デフリンピック」。世界が注目する “静かな熱戦” を楽しむための予習ガイド

2025-11-04

デフリンピック会場

2025年11月15日、きこえない・きこえにくいアスリートの国際大会「東京2025デフリンピック」が開幕します。開催に先立ちさまざまなイベントが行われ、大会への期待が徐々に高まっているところですが、皆さんはデフリンピックをご存知ですか? 日本で初開催されるという、またとないこの機会に知らないままではもったいない! そこで、周りの人よりちょっと詳しくなれる、デフリンピックの基本や観戦のポイントなどを紹介します。デフリンピックの魅力を知って、観戦に臨みましょう!

東京2025デフリンピックのロゴ

4年に1度のデフアスリートによる国際大会が、ついに日本にやってくる!

東京2025デフリンピックのバナー

デフリンピックは、きこえない・きこえにくいアスリートのための国際総合スポーツ大会です。11月15日に東京体育館で行われる開会式を皮切りに、26日までの12日間、東京をはじめ、静岡(日本サイクルスポーツセンター)や福島(J ヴィレッジ)、伊豆大島(裏砂漠)など、都市のど真ん中から自然豊かなフィールドまでが会場となり、各種競技が行われます。

※    サッカー会場 福島(Jヴィレッジ)は11月14日から実施します。

100周年記念大会となる本大会では、21の競技を実施。70〜80の国・地域から、選手約3,000人を含む各国選手団約6,000人が参加する、大規模なスポーツイベントです。
音声の代わりにランプやフラッグを活用したシステムが導入されるなど、一部の競技における視覚的情報保障がある以外は、基本的にオリンピックのルールと一緒とのこと。つまり、各競技のトップアスリートの迫力ある姿やスピードを間近で見られるチャンスなんです!

さらに、開閉会式を除いて、各競技の現地観戦は事前申込不要で無料なのがすごいところ。これは観戦しないわけにはいきませんね!(射撃会場は観戦できません)

21競技の詳細と会場は
こちらをチェック


東京2025デフリンピック大会エンブレム

国内で唯一の聴覚障害者・視覚障害者のための国立大学である筑波技術大学の学生が制作した案から、ろう学校を含むろう学校を含む都内の中高生の投票によって決定した大会エンブレム。人々のつながりを意味する「輪」をテーマに、「手」や桜の花びらなどが表現されたデザインです。さまざまなところで見かけるので、一度じっくり見てみてください!

東京2025デフリンピック大会エンブレム


知れば知るほどもっと面白くなる、デフリンピックの基礎知識

デフリンピックは、パラリンピックよりも歴史が深いって知っていましたか? 観戦の楽しみ方や注意事項だけでなく、こうした歴史や、大会・競技の運営の特徴を知ることで、楽しみが倍増するはずです!


今年で25回目を迎えるデフリンピックが歩んできた100年


パラリンピックが1960年に始まったのに対し、デフリンピックの起源は1924年にさかのぼり、フランスのパリで、9カ国が参加して行われた「国際サイレント競技大会(夏季)」。国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)が主催する大会で、1949年には冬季大会が誕生しました。1955年には国際オリンピック委員会がこの大会を「オリンピック基準を有する国際競技団体」と認定し、オリンピックとの2年間隔に開催するベースができます。以降も名称の変更や競技の種類の拡大を経て、2001年には大会名称が現在の「デフリンピック」となりました。開催国や選手の数も増え、同年に開催された第19回ローマ大会では、70カ国以上が参加する規模になっています。

今年で25回目を迎えるデフリンピックが歩んできた100年

日本は1965年の夏季大会、続いて1967年の冬季大会でそれぞれ初参加を果たしました。初めてのメダルはワシントン大会(1965年)において、卓球女子シングルスで中井リヲ子選手が獲得した銀メダルです。ちなみに2022年の前回大会では、金メダル12個を含み全部で30個と、過去最多のメダルを獲得しています。

今年で25回目を迎えるデフリンピックが歩んできた100年


全日本ろうあ連盟 倉野事務局長

「デフリンピックが1924年にパリで開催されてから記念すべき100周年を迎える2025年に、東京で開催できることをうれしく思います。
デフリンピック提唱者のウジェーヌ・ルーベンスーアルケー氏は、きこえない人の社会的地位が低く、また手話言語が言語と認められていなかった時代に、きこえない当事者による運営で、きこえない人の国際スポーツ大会を開催し、社会を変えようとしました。私たちは、デフリンピックの理念を引き継ぎ、東京2025デフリンピック開催を機に、障害のある人とない人とのコミュニケーションや情報バリアフリーや情報アクセシビリティを推進し、きこえる人ときこえない人が共に生きる共生社会の実現へのさらなる前進をめざします」


共通言語は国際手話。公平性を保ちデフアスリートが安心して競技に臨める環境を整備


きこえない当事者団体自身が主体となって大会を築き上げてきたデフリンピックの運営は、言語も合図も “視覚中心” に組み立てられています。大会の公式コミュニケーションは国際手話をベースとし、国際手話通訳等の体制により、選手・スタッフ・審判が同じ情報を平等に受け取れるようにするのが基本です。共通言語があるおかげで、競技外では各国の選手同士の交流が盛んに行われているのだとか。

共通言語は国際手話。公平性を保ちデフアスリートが安心して競技に臨める環境を整備
共通言語は国際手話。公平性を保ちデフアスリートが安心して競技に臨める環境を整備

競技においても同様です。スタートの合図はランプや旗、競技の進行や判定は旗・掲示・LEDランプ・審判のジェスチャーなどを使って伝達します。デフリンピックに出場可能な選手は、補聴器などを外した状態で、ふつうの声での会話(55デシベル)がきこえないなどの条件があります。さらに、公平性を保つため、選手は競技場など指定のエリアでは補聴器や人工内耳の使用が禁止されています。誰もが同じ条件で競えるよう、音に頼らずに視覚信号で状況を判断できるための標準化がなされているんですね。

競技の特性に合わせて違いがあるので、一例を紹介します。

①陸上競技

陸上競技

スタートの合図はスタートに取り付けられたランプや旗で行う。周回やレース展開の案内も掲示等で可視化


②自転車競技(ロード)

自転車競技(ロード)

スタートや周回告知を旗・掲示で行う。レース中の危険・進路規制なども旗や掲示で伝達し、審判のハンドサインと合わせて状況を共有


③サッカー

サッカー

主審のジェスチャーや副審の旗で進行・判定を伝える。交代やアディッショナルタイム、反則などの情報も掲示やサインで共有


④ゴルフ

ゴルフ

指定区域での補聴器・人工内耳の使用は禁止。コースや通過の情報は掲示板や地図・標識などで共有


全日本ろうあ連盟 倉野事務局長

「スポーツをやる上で、音は非常に重要な要素になります。例えば卓球、バドミントン。そのような競技では、打球音が非常に重要です。デフアスリートの場合はそれが全く聞こえないため、その代わりに打つところを目で見る、目で追うという戦いになります。聞こえる人の戦い方と、デフアスリートの戦い方には違いがあるのです。
また、デフリンピックでは、競技に必要な音声情報やコミュニケーションの全てが、視覚的な合図(フラッシュ、フラッグなど)や国際手話などにより、視覚的に保障された競技環境が構築されています。そういったところをぜひ注目していただきたい。そこがデフスポーツの魅力だと思っています」


冬季デフリンピックについても少しだけ紹介

冬季デフリンピック

冬季大会では以下のような競技が行われています。次回は2027年、オーストリアで開催予定です。

  • アルペンスキー
  • クロスカントリースキー
  • スノーボード
  • カーリング
  • アイスホッケー

デフアスリートの技術と駆け引きを “見る”、応援を “視覚で届ける”。観戦するときのポイント

応援席

デフリンピック観戦の基本は、“音の代わりに見てわかる合図” を追うこと。スタート合図のライトや、競技の進行・判定を伝える旗・LEDランプ・審判のジェスチャーに目を向けるところから始めてみましょう。

ポイント① スタート合図→試合中の指示など→審判の手元の順に視線を移す

競技は視覚的な合図でスタート。合図を確認したらプレーに集中して楽しみましょう。選手同士の熱のこもったコミュニケーションや、駆け引きも “見て” 感じることができるはず。


ポイント② デフアスリートへ “目で見る応援” 「サインエール」を


「サインエール」とは、きこえる・きこえないにかかわらず、全ての人が想いを届けることができる、新しい応援方法です。デフアスリートへ力を与える応援を。


ポイント③ 会場で応援! 難しい場合はオンライン視聴も

現地での観戦には、事前申込が不要です。競技スケジュールや会場を事前にチェックし、観戦マナーを守って応援しましょう。会場までは、公共交通機関を利用してください。(混雑時は入場制限があるので、その場合は案内に従いましょう)

現地に行けない場合も心配いりません。公式YouTubeでライブ配信されるので、チャンネル登録をして目当ての競技の日を待ちましょう。


東京2025デフリンピック 21競技と会場


開会式(11月15日)、閉会式(11月26日) 東京体育館(東京都)

空手
東京武道館(東京都)

陸上競技    
駒沢オリンピック公園総合運動場

自転車競技(マウンテンバイク)    
日本サイクルスポーツセンター(静岡県)    

バドミントン    
京王アリーナTOKYO(東京都)

オリエンテーリング    
日比谷公園・日比谷エリア、伊豆大島 裏砂漠(東京都)    

バスケットボール    
大田区総合体育館(東京都)

射撃    
味の素ナショナルトレーニングセンター・イースト(東京都)    

ビーチバレーボール    
大森ふるさとの浜辺公園(東京都)

水泳    
東京アクアティクスセンター(東京都)    

ボウリング    
東大和グランドボウル(東京都)

卓球    
東京体育館(東京都)    

自転車競技(ロード)    
日本サイクルスポーツセンター(静岡県)

テコンドー    
中野区立総合体育館(東京都)    

サッカー    
Jヴィレッジ(福島県)

テニス    
有明テニスの森(東京都)    

ゴルフ    
若洲ゴルフリンクス(東京都)

バレーボール    
駒沢オリンピック公園総合運動場体育館(東京都)    

ハンドボール    
駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場(東京都)

レスリング(フリースタイル)    
府中市立総合体育館(東京都)    

柔道    
東京武道館(東京都)

レスリング(グレコローマン)    
府中市立総合体育館(東京都)

東京2025デフリンピック 21競技と会場

観戦案内ページ(東京2025デフリンピック 公式サイト内)

TOKYO 2025 DEAFLYMPICS公式YouTube

これまでデフリンピックやデフアスリートの競技に馴染みがなかった人も、理解が深まったでしょうか? 開幕が待ち遠しいですね!


ソフトバンクは、トータルサポートメンバーとして本大会を応援しています。期間中は選手や関係者への通信機器の無償提供に加え、機器の利用をサポートするヘルプデスクを設置。その他、大会サポートスタッフとしてソフトバンクの社員も大会運営を支えています。
また、ソフトバンクの社員である田中航太選手<自転車競技(ロード)>と上園久美子選手<オリエンテーリング>がデフリンピックに出場予定です! 後日、両選手のインタビュー記事を掲載しますのでお楽しみに!!

皆で一緒に大会を観戦してデフアスリートを応援しましょう!

(掲載日:2025年11月4日)
文:ソフトバンクニュース編集部


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