クアルコムのユーザー調査レポート「State of Sound」の2023年度版が発行された。
これはクアルコムが世界中の消費者を対象とした調査をまとめたもので、2023年の調査は今年の7月にアメリカ、イギリス、ドイツ、中国、インド、日本、韓国の各国で1000人ずつ、18歳から64歳までのスマートフォンユーザーを対象にした。
韓国の調査は今回が初だそうだ。
イヤホンなど、オーディオ機器の購入に影響を与える要因や、現在/将来の利用シーンにおける関心についての様々な項目が対象となっている。
外出先で毎日長時間イヤホンを装着するスタイルが浸透
完全ワイヤレスイヤホンを購入する決め手となったのは「快適性」だ。
昨年トップだった「価格」は2番目だが、30ドル以下のイヤホンの購入者では1位となる。
つまりそれ以上の価格帯の購入者ではあまり価格の要素は大きくないというだ。
また昨年は「音質」が3番目の要素だったのだが、今年は順位を下げて4番目となった。
今年の調査のポイントは、ユーザーのワイヤレスオーディオ機器の使用が、音楽鑑賞、音声通話、ビデオ鑑賞といった従来の用途から、職場、ゲーム、補聴といった用途まで、より複雑なユースケースを含むように変化したことだ。
実際に回答者の2/3以上が、喫茶店や共有ワークスペースなどで仕事をしていると答えている。
こうしたオフィス以外の新しい職場環境に対応するために「他の人を聞くこと(to hear)」と「他の人に聞かれること(to be heard)」の両方が必要であるとレポートでは述べている。
このあたりは耳を塞がないオープンタイプのイヤースピーカーや骨伝導ヘッドホンのヒットにも関係しているだろう。
また、ユーザーのイヤホンの使用頻度は高まり、長時間利用が進んでいる。
例えば、2022年に毎日ワイヤレスイヤホンを使うと答えたユーザーは26%だったが、2023年度では58%に増えている。コロナ禍が明けて、移動や通勤をする機会が増えたのだろう。
1日中装着できることが次のワイヤレスイヤホンの購入に影響すると答えたユーザーは全体の80%に及び、それが最も大事だと答えたユーザーが30%もいる。
ユーザーがより長時間イヤホンを使用するようになったため、快適さがキーになってきたとこのレポートでは分析している。
イヤホンを使うとき、もっとも不快に感じる箇所は耳への装着感の悪さと回答する割合は突出して高くなっている。
これは従来のカナル型のように耳穴に挿入するタイプよりも、耳穴を軽く塞ぐだけのタイプが増えてきていることでもわかる。
音質への関心はいまだ高く、ロスレスの認知も進む
一方で音質は順位を落としたが、依然として関心が高い要素だ。
回答者の73%が購入するたびにデバイスの音質がどんどん良くなっていることを認識していると答えており、この割合は2022年の67%から増加している。
またMP3以上の音質を望む割合が今年は特に大きくなっているのも特徴だ。
その割合は2021年、2022年と60%程度だったものが2023年では70%と10%も増えている。
69%の消費者がロスレス音質を購入の決め手として挙げているのも特徴だ。
Apple Musicでは2021年6月からロスレス配信をしている。
認知度が高くなったことに加え、パケット制限の障壁が低くなってきたことが関係しているのかもしれない。
ただし、各国で状況が異なるので、ここは一概に捉えるのは難しいだろう。
また空間オーディオへの関心も高く、回答者の60%が空間オーディオへの対応が次のイヤホン・ヘッドホンの購入に影響すると回答。
さらに20%はそれが最も影響すると答えている。
また、回答者の35%は空間オーディオ機能のために価格が高くなっても良いと答えている。
また今年見えた一つの興味深い傾向は、ユーザーが音の「距離範囲」を気にしているということだ。
150ドル以上の高価格帯イヤホン所有者の79%が、次のイヤホンの購入の決め手として「家庭内全てをカバーすること」を挙げている。
こうしたトレンドは最近発表されたクアルコムの「S7 Pro Sound Platform」におけるBluetoothとWi-Fi融合技術「XPAN」を開発する動機の一つになったのかもしれない。
このように様々なユーザー要求があるのだが、この調査ではユーザーは音楽を聴く、ゲームをする、通話をするなどユースケースごとに向いたイヤホンを買うよりも、複数のユースケースに最適化された一つのイヤホンを書いたいとしている。
これが開発側にとっては、なかなか頭の痛い一番の課題になるのかもしれない。
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