ゲーマーは騒音によって永続的に聴力を損失したりその他の聴覚障害を発症する危険に曝されていると、科学者らは1月16日に警告し、近年の世界的なテレビゲームの流行とeスポーツへの関心が高まる中、ゲーマーの健康リスクを最小限に抑えるよう当局に対応を求めた。
ゲーマーは潜在的な危険のともなう大音量に曝されることで、回復不能な聴力損失や持続的な耳鳴りなどの症状に見舞われるおそれがあると、BMJ Public Health誌に掲載された世界保健機関と複数の大学に在籍する聴覚の専門家による研究は報告している。
テレビゲームの平均的な音のレベルは、許容できる音響暴露レベルを超えるかそれに近いことが多いと、14件の査読付き論文の系統的レビューに基づき、研究チームは述べている。
北米、欧州、アジア、オーストラレーシアの9カ国、約5万4000人を対象に、さまざまな領域や目的で実施されたこの研究は、ゲーマーの自己申告による難聴の度合いが高いこと、ゲームセンターに通う学生・生徒には深刻な耳鳴りや高周波数における聴覚損失に見舞われる人が多いこと、ゲーム用ヘッドホンが潜在的に「安全でない音量レベル」に達していることなどを提示した。
平均の音響暴露レベルは、突発的な騒音の高まりを必ずしも捉えていないと研究者は警告している。ある研究によると、瞬間的な衝撃音は最大119デシベルに達することがあり、子供の許容限度である約100デシベルを大きく上回っている。
研究チームはこのテーマに関する研究が非常に限られていることを認めた上で、データはテレビゲームが「聴覚にとって安全ではない音を聞く原因」となる可能性を浮き彫りにしていると語り、議会や保健当局が教育プログラムを開発し、「セーフリスニング」を推進する活動の必要性を指摘している。
この問題に関してさらなる研究を緊急に行う必要があると研究チームは述べ、昨年はゲームやゲームセンターの騒音レベルを客観的に測定した研究がわずか2件しか発表されていないことを指摘し、近年のゲーマーの急増とeスポーツ人気の急速な高まりに言及した。
論文が引用した研究によると、平均的なゲーマーはテレビゲームを週に3時間プレイしているという。頻繁にゲームをする人(おそらくその多くが平均よりはるかに多くの時間プレイしている)は、許容される音響暴露を超えて、「安全でない聴取環境にいる」可能性が高い。このため「永続的な聴覚損失や耳鳴りを発症する危険性がある」と、研究チームは結論づけた。
テレビゲーム業界は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック期間中に急成長した。自宅待機やソーシャルディスタンスが呼びかけられる中、多くの人々が対面による交流を避け、何百万という人々がコンピューターやスマートフォン、ゲーム端末などで退屈さを解消し、社会的交流を維持した。テレビゲームやゲーマーは、社会的孤立や暴力的な傾向、認知力低下などにつながるニッチな活動であると長年見られてきたが、それらの見解を裏付ける確かな研究はほとんど行われていない。事実、最近の研究は、ゲームが健康な生活に影響を与えないことを示しており、WHOも、ゲームはメンタルヘルスの「意外な味方」であり、「視聴覚文化に不可欠な要素」としてメンタルヘルスに好影響を与える可能性があると評価している。
プレーヤーの人数と業界の価値に関するデータも、ゲームがニッチな産業であるという概念を打ち消す。レポートによると、2022年のゲーム産業の規模は2200億ドル(約32兆円)に上った。今後も伸びを続け、より多くのプレーヤーを呼び込むことで、2026年には売上が3200億ドル(約47兆円)を超えると期待されている。
レポートが引用した調査による2022年の全世界のゲーム人口は30億人となる。この数はすでに世界人口の3分の1を超えており、今後も増え続けることが予想される。
(forbes.com 原文)
リンク先はForbes JAPANというサイトの記事になります。
