デフリンピック出場へ、トライアウトでテコンドー日本代表になった星野萌選手…東京都や企業のサポート広がる

デフリンピック出場へ、トライアウトでテコンドー日本代表になった星野萌選手…東京都や企業のサポート広がる

2025/10/15 05:00
岡本立

 聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」が11月に東京などで開催されるのを前に、都道府県や企業の間で聴覚障害者アスリートを支援する動きが広がっている。15日で大会まで1か月。選手たちは力強いサポートを受けて晴れ舞台に臨む。(岡本立)


コーチ派遣

コーチの指導を受けながら練習するテコンドー女子日本代表の星野萌選手(左)(東京都千代田区で)=松本祐典撮影

コーチの指導を受けながら練習するテコンドー女子日本代表の星野萌選手(左)(東京都千代田区で)=松本祐典撮影


 8月18日午後、東京都千代田区の貸しスタジオ。デフリンピックのテコンドー女子日本代表に選ばれた星野萌選手(21)(筑波技術大4年)が、鋭い蹴りや突きをテンポ良く繰り出していた。全日本テコンドー協会から派遣されたコーチから身ぶり手ぶりで指導を受けて約3時間の練習を終えると、「自分だけで資金を集め、練習環境を整えるのは難しかった。コーチと二人三脚で頑張れるのも心強い」と笑顔を見せた。

 スポーツをする聴覚障害者は指導者のアドバイスやスタート音が聞こえにくいほか、耳の器官の異常でバランス感覚が乱れるハンデを抱えながら、多くが健聴者に交じってプレーしている。小学5年でテコンドー教室に通い始めた星野選手も、周りの人の動きを見て練習し、技を覚えるのに時間がかかった。大会で審判の指示がわからず、パニックになったこともあった。

 高校で競技をいったん離れたが、聴覚や視覚に障害を持つ学生が学ぶ同大に進んで再開した。デフリンピック種目にテコンドーがあることや日本代表の出場実績がないことを知り、「第1号になろう」と決意した。


トライアウト


 そんな星野選手にチャンスを与えたのが、都が昨年6月に開催した「トライアウト」だ。

 日本代表の出場実績のない4競技(テコンドー、ハンドボール、射撃、レスリング)で大会出場を目指す選手を募り、計43人が参加。実技や運動能力テストの結果、星野選手を含む21人が合格し、各競技団体の強化・育成対象となった。

 都は合格者に対し、指導者の人件費や練習会場の利用料として年間最大250万円を補助。これまでに計10人が日本代表に決まった。担当者は「より多くの競技で日本代表が活躍してくれれば、大会の盛り上がりにつながる」と狙いを語る。

 同様の取り組みは他の自治体や企業でも見られる。


普及にも力


 埼玉県は、県ゆかりの聴覚障害者アスリートを対象に、トレーナーの派遣やスポーツ専門医の紹介を行っている。元々はパラリンピックの選手ら向けの事業だったが、デフリンピックの開催決定を受けて対象を広げ、今年度は11人の聴覚障害者アスリートを支援する。

 一方、衣料品メーカー「ベネクス」(神奈川県)は、2024年2月、デフバスケットボールの丸山香織選手とアンバサダー契約を締結。疲労回復を促す「リカバリーウェア」を無償提供している。

 同社の担当者は「競技力向上だけでなく、デフスポーツ普及に力を注ぐ姿をみて応援したいと思った」と契約理由を説明。丸山選手は「練習環境は良くなっている。大会で活躍することで、選手たちがより良い環境で取り組めるよう支援や理解の輪がさらに広がっていってほしい」としている。

 大会は11月15~26日に行われ、21競技に選手約3000人が出場する。

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