先天性難聴の研究はここまで進んでいる。成人への治療効果にも期待

先天性難聴の研究はここまで進んでいる。成人への治療効果にも期待

2025.07.09 22:00
author Ellyn Lapointe - Gizmodo US[原文]( たもり )

補聴器を装用するところ

Image: Shutterstock

子どもの先天性難聴に対する有望な治療法として、ここ数年で現れた遺伝子治療。ある最新研究は、10代と成人の先天性難聴患者においても、この治療法が効果的だったと示しています。

ジャーナル『Nature Medicine』に発表された研究論文は、OTOF遺伝子の変異によって引き起こされた難聴、または重度の聴覚障害の患者たちを調査対象としていました。

OTOF遺伝子とは、耳から脳への信号伝達で重要な役割を果たすオトフェリンというタンパク質を作る遺伝子です。世界中でおよそ20万人が、このOTOF遺伝子での変異による難聴を罹患しています。

ここ数年で、遺伝子治療はOTOF関連難聴の子ども聴力を改善することに成功していますが、同じ病状の10代と成人患者での有効性を調べた研究はほとんど存在しません。研究論文の著者たちは、そのギャップを埋めようとしたのです。


どんな治療を行なった?


スウェーデンにあるカロリンスカ研究所の研究員たちは、中国にある5つの病院から、OTOF変異によって生じた難聴、あるいは重度の聴覚障害をもつ1歳~24歳までの患者10名に遺伝子治療を実施。内耳の蝸牛(液体に満たされた渦巻状の中空になった器官)への1回の注射で、正常なOTOF遺伝子を送り込むという治療でした。


治療後わずか1カ月で効果

治療から1カ月のうちに、ほとんどの患者の聴力が回復。6カ月後には10名全員の聴力に顕著な改善が見られ、認識できる音の大きさの平均は、106デシベル(クルマのクラクション程度)から52デシベル(エアコンの室外機程度)に改善しました。その上、治療後12カ月以内に深刻な副作用の報告はなかったとのこと。

カロリンスカ研究所の臨床科学介入技術部門のコンサルタント、かつ講師で共著者のMaoli Duan氏のチームは、この治療法が幼い子どもたち、具体的には参加者の大部分を占める5~8歳に最も効果だと気づきました。

患者の1人である7歳の女の子は、片耳に人工内耳を装用していて、もう片方の耳に遺伝子治療を受けましたが、聴力をほぼ回復したとか。治療から4カ月後には、母親と日常会話を行なえるようになったのです。

ある日、2人が嵐に見舞われた際、彼女は雨の音を初めて聴くことができたと母親に伝えたというエピソードを、Duan氏は米Gizmodoに教えてくれました。


子ども以外の改善例


コロンビア大学アービング医療センターの神経耳科医で、今回の研究には携わっていないLawrence Lustig氏は、これまでの遺伝子治療の研究も、OTOF関連難聴の幼い患者において同じく期待できる結果を示してきたと指摘します。しかし12歳以上の患者(それぞれ14歳と24歳だった)に改善が見られたことに、彼は驚いたのです。

「この研究について、年齢が上がれば上がるほど、聴力の結果は悪くなるとほとんどの人は考えていたと思います」とLustig氏。12歳という年齢の子どもがOTOF遺伝子治療によって聴力をある程度改善したと示す研究もありますが、「24歳の患者で何かしらの成果を得た人はいないと思います」と補足していました。

とはいえ、今回の研究は小規模で、成人はたった2人しか含まれていなかったため、今後の調査でOTOF関連難聴を持つ10代と成人における遺伝子治療の有効性を確かめる必要があります。


他の遺伝性難聴の治療にも適用したい

Duan氏たちのチームは、治療の効果が長期間にわたって持続するかどうかを見極めるため、少なくとも5~10年間は患者たちの追跡調査を行なう予定です。

OTOF遺伝子治療が利用できるようになるまでの道のりはまだ長いものの、今回のような成果が加わり、その有効性を示す証拠はますます増えていきます。

この研究がより一般的なタイプの遺伝性難聴治療への道も開いてくれたらと同氏は期待しており、「OTOFは始まりに過ぎません」とリリースの中で意気込んでいました。

”「我々と他のリサーチャーたちはGJB2とTMC1のような難聴を引き起こすもっと一般的な遺伝子に、研究を広げています。これらの治療はさらに複雑ですが、動物実験はこれまでのところ期待できる結果を示しました。さまざまな種類の遺伝性難聴の患者がいつの日か治療を受けられるようになると確信しています」”


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リンク先はGIZMODEというサイトの記事になります。


 

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