2025年5月19日 20:28

"全米3連覇"に貢献 難聴のチアダンサー 静寂の世界で感じるリズム 「心の耳」となる大切な存在 山梨
米国で行われた、大学チアダンスの世界的大会で日本の大学チームが3連覇しました。そのメンバーの中に、ハンディキャップを抱えながらもひたむきに汗を流してきた、山梨県出身のダンサーがいます。静寂が刻むリズムに「心の耳」をすませ、世界一への挑戦を続ける姿を追いました。
■全米大学選手権3連覇に貢献

埼玉県川越市にある尚美学園大のチアダンスチームVERITASは「USA CollegiateChampionships」3連覇を成し遂げました。なおも4連覇に挑むチームの中に、甲斐市出身の金丸萌さんがいます。
小学生の頃に出合ったチアダンスに情熱を注ぎ、東海大甲府高では全国大会で入賞。名門大学の3年生となった今、集大成のシーズンが幕を開けました。
そんな輝きの裏には、生まれながらのハンディキャップが―。
金丸さん
「先天性難聴で、生まれたときから耳が聞こえない」

ダンス中は、右耳の補聴器から伝わる、かすかなビートが頼り。
金丸さん
「細かい音、リズムの変化が聞きにくい部分がある。口元の動き、メンバーやコーチの動きを見て、よく視野を広げて補っている」
■わずかな感覚から呼吸を合わせる

補聴器越しに感じるわずかなリズム。精一杯の視覚。それらを読み取り、仲間と呼吸を合わせる─。
その難しさは計り知れませんが…。

「チアダンスは結構、細かいリズムやカウントが大事だが、ズレは感じない。そういった面でも尊敬しているし、信頼している同期」
島田杏柚さん(2年)
「うまくいかないことがあったときに、そっと手を差し伸べてくれる先輩。何事も諦めずに一生懸命取り組んでいて、すごく尊敬できる」
仲間との絆は、金丸さんの「大切な耳」に。

金丸さん
「チアダンスは本当に難しいし、高い壁にぶち当たることもある。それでも同じ夢に向かって努力する仲間がいるからこそ、本番の2分間で踊るチアダンスが魅力的」
そんな金丸さんを見守るコーチは…。

齋藤るりコーチ
「耳が聞こえない、聞こえづらいことを言い訳にして、テクニックができない、ダンスが合わないと言うことは一切聞いたことがない。萌自身も、そこを弱点だと思わないでやっている。だからこそ他のメンバーと同じように指導できる」
■「遠回りしても」妥協なき挑戦

世界的大会の3連覇への貢献は、想像もつかないほどの努力を積み上げてきた証。
ただ、金丸さんはさらなる先、「4連覇達成」を見据えます。
金丸さん
「これまでつなげてくださった先輩方の分も背負う。日本での成績もしっかり残していきたい」
そんな金丸さんにとって、ハンディキャップとは―。
金丸さん
「ハンディがある、ないに関わらず、絶対にできることはある。遠回りしても地道に頑張れば、絶対にできる。絶対に諦めないことが大事」
遠回りしても、絶対にできる―。
仲間との息の合わせたダンスでそれを証明し続ける金丸さん。
来年の大舞台でも、きっと大歓声が金丸さんに届くはずです。

金丸さんはこれまで、一部のターンやジャンプを苦手とし、当初は米国遠征の正式メンバーではありませんでした。その苦手なターン、ジャンプを克服。見事に遠征メンバーに選ばれました。
「これまでの人生でも、難聴を理由に諦めたことはない」と語る金丸さん。
大学卒業後は教員になり、母校・東海大甲府高でチアダンスを教え、さらには山梨で障がい者スポーツに携わる夢を抱いています。
(「YBSスポーツ&ニュース 山梨スピリッツ」2025年5月18日放送)
最終更新日:2025年5月19日 20:35
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