和田秀樹 耳が遠くなったことを「年をとったから仕方ない」と片付けると認知症まっしぐらに…難聴が認知機能の低下に直結する2つの理由とは?

和田秀樹 耳が遠くなったことを「年をとったから仕方ない」と片付けると認知症まっしぐらに…難聴が認知機能の低下に直結する2つの理由とは?

80歳で体はこう変わるからやっておきたいこと
和田秀樹 精神科医

耳に手を当てる年配女性の後ろ姿(写真提供:Photo AC)

(写真提供:Photo AC)


年を重ねていくと、心身にさまざまな変化が生じます。老後を元気に過ごしていくためには、どうしたらよいのでしょうか?今回は、長年高齢者医療に携わる精神科医・和田秀樹先生が、変わっていく自分の体に対する考え方や対処法をまとめた『80歳で体はこう変わるからやっておきたいこと』から、一部を抜粋してお届けします。


聞こえと認知症


関連性がないと思われがちですが、放っておいたら認知症まっしぐらという老化現象があります。それが「聞こえ」です。

年をとれば耳が遠くなるのはよくあることなのですが、しかたがないと簡単に片づけていい話ではありません。実は、耳が遠くなることこそ、認知機能の低下に直結しているのです。

海外の研究成果ではありますが、中年期(45~65歳)に難聴があると、高齢期に認知症のリスクが2倍に上昇するというデータが発表されました。

そもそも、難聴のある人は、もの忘れや不安感、焦燥などといった、認知症的な症状を感じる割合が高いので、より細やかな注意が必要なのです。

それでは、難聴が認知機能の低下に直結する理由を説明しましょう。


難聴が認知機能の低下に直結する理由

問題は二つです。一つは、人とのコミュニケーション不足に陥ることです。相手の話が聞きとりにくくなると、会話が減り、人や社会とかかわろうという気力も低下していきます。

「家族みんなが楽しそうに話しているのに、自分は話が聞きとれず孤独を感じる」

『80歳で体はこう変わるからやっておきたいこと』(著:和田秀樹/興陽館)

『80歳で体はこう変わるからやっておきたいこと』(著:和田秀樹/興陽館)


「患者は私なのに、医者の話が聞きとれないから、医者は付き添いの娘とばかり話している。治療も投げやりな気持ちになってしまう」

これらは、耳が遠くなった高齢の患者さんから聞いた、偽らざる気持ちです。

何を言っているのか聞きとることができないから、誰とも話すことができない。結果として、社会的に孤立してしまう。こうなってしまうと、うつ傾向が強まったり、認知症が進むという流れになってしまうのです。


認知負荷説

もう一つは、認知負荷説です。

耳が遠いと、脳の能力が耳からの情報処理に費やされるため、ほかの認知機能が落ちていきます。

女性の耳元(写真提供:Photo AC)

(写真提供:Photo AC)


このことが、認知症につながっていると考えられるのです。

私の臨床経験からいっても、耳が遠くなった人には、認知症を発症する人が多いように思います。


自分にあった補聴器を

耳が聞こえにくくなったときは、放っておいてはいけません。耳鼻科で検査をし、自分にあった補聴器のアドバイスを受けましょう。

これからの時代は、補聴器もAI(人工知能)化することが予測されます。そうなったら、いまよりもずっと便利になるはずです。

耳が遠くなったと感じたら、補聴器です。コミュニケーション不足に陥ることを徹底的に防いでくれるのです。そうすることによって、認知症発症のリスクを小さくすることができます。面倒だとか、煩わしいだとか感じたら、認知症発症のリスクを下げるためだと、自分に言い聞かせるといいでしょう。

補聴器はまだまだ高額ですが、自治体から補助が出る場合もあります。しっかり調べて、お得にゲットしてください。

※本稿は、『80歳で体はこう変わるからやっておきたいこと』(興陽館)の一部を再編集したものです。


80歳で体はこう変わるからやっておきたいこと』(著:和田秀樹/興陽館)

年をとって変わることなんて当たり前。

それでも、大丈夫、心配いりません。

この本では、変わっていく自分の体に対して、どう考えて対処すればよいのかを書きました。

80歳で体はこう変わるからやっておきたいこと

80歳で体はこう変わるからやっておきたいこと

作者:和田秀樹
出版社:興陽館
発売日:2025/7/15

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出典=『80歳で体はこう変わるからやっておきたいこと』(著:和田秀樹/興陽館)

和田秀樹
精神科医
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、35年以上にわたり高齢者医療の現場に携わっている。主な著書に『年代別 医学的に正しい生き方』(講談社)、『六十代と七十代 心と体の整え方』(バジリコ)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『80歳の壁』『70歳の正解』『コレステロールは下げるな』『「せん妄」を知らない医者たち』(いずれも幻冬舎新書)、『心が老いない生き方 - 年齢呪縛をふりほどけ! -』(ワニブックスPLUS新書)など著書多数。


リンク先は婦人公論.jpというサイトの記事になります。


 

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