「実は教育熱心な親ほど危ない」知らずに我が子の脳を壊す“マルトリ”の正体とは?

「実は教育熱心な親ほど危ない」知らずに我が子の脳を壊す“マルトリ”の正体とは?

2025/08/05 子育て・教育

親子


教育熱心な親ほどやりがちな“脳を傷つける接し方”とは?

「勉強をがんばらせたい」「いい子に育ってほしい」そう考え、“子どものため”と信じてやっていることが、実は子どもの脳を傷つけ、その後の人生に深刻な影響を与えるとしたら?

そこで今回は、小児精神科医・友田明美先生が最新の脳研究をもとに、不適切な養育のリスクに警鐘を鳴らし、親が気づかぬ“心への影響”と、その回避法をやさしく解説した書籍『子どもの脳を傷つける親がやっていること』(SBクリエイティブ)を一部抜粋してご紹介。

親なら誰でも無関係ではいられない、“マルトリ”(不適切な養育)の存在を知り、もし「またやってしまった」と感じたら、同じことを繰り返さないことが大切です。
あなたの「良かれ」が、知らず知らずのうちに子どもの未来を奪っていないか? 今一度、子どもとの関わりを見つめ直してみませんか。

『子どもの脳を傷つける親がやっていること』記事一覧はこちら

書籍「子どもの脳を傷つける親がやっていること 最新脳研究でわかった」


『マルトリ(マルトリートメント)』とは

マルトリとは、虐待やネグレクトに限らず、「子どもへの避けたいかかわり」を指す総称です。マルトリを経験すると、こころの傷(トラウマ)が生じ、認知の障害(IQ低下)、健康に害を及ぼす行動(薬物やアルコール依存)やさまざまな疾病リスクが高まり、最終的には早世につながる可能性があります。子ども時代に受けた虐待やネグレクトといったマルトリの経験は(たとえ、しつけの名のもとに行われたものであっても)、脳の構造や愛着(アタッチメント)形成に神経生物学的な影響を与え、成人後の生きづらさにつながっていきます。マルトリが最も影響を与えるのは幼少期であるため、妊娠期からの切れ目のない親への早期支援が重要です。
(『子どもの脳を傷つける親がやっていること』はじめにより)


教育熱心な親ほど、子どもの成長を阻害しているかもしれない

近年、「教育虐待」という言葉をよく耳にするようになりました。これは、親が子どもに過度な期待をかけたり、強いプレッシャーを与えて勉強を強要し、結果として子どもに苦痛を与える行為を指しています。メディアで話題になるような極端な例ではないにしても、子どもにかなりのストレスを与えているケースは少なくないように思います。

教育熱心な親が、「高いレベルの学校に進学してほしい」「優秀な成績を収めてほしい」と期待し、子どもがその期待に応えられないときに𠮟責したりすれば、それはマルトリと言って差し支えありません。

親は「子どものためを思って良かれと思ってやっている」と感じることがあるかもしれません。でも、子どもの能力を高めたいと思って発破をかけているつもりが、まったくの逆効果になってしまったらどうでしょうか。

たとえば、「こんな問題も解けないなんてどうしようもないバカだ」「勉強ができないおまえには価値がない」といった言葉を繰り返し使って子どもを追い詰めると、子どもの脳の「聴覚野」にダメージを与えてしまう可能性があります。聴覚野は言語にかかわる領域で、人の話を聞いて理解したり、会話をしたりする際に重要な役割を果たす鍵を握っています。この部分が変形することで、人の話を聞いて理解することが難しくなり、コミュニケーションが苦手になってしまうかもしれません。

本来なら健やかに成長できたはずの脳が、言葉の暴力によって傷つけられ、成長を妨げられてしまうのです。


親の脳も傷ついている

子どもの脳から始まった私の研究は、現在では「養育者の脳」にまで広がっています。私たちの脳は、さまざまなストレスによって傷ついています。特に子どもの脳は傷つきやすいですが、大人の脳も同様に影響を受けます。

たとえば普通のお母さんでも、周囲の協力が得られず孤独に子育てを頑張っている中で、育児ストレスや不安な気持ちが強まったとき、感覚処理能力が低下することがわかっています。感覚処理能力が低下すると、赤ちゃんの泣き声などの感覚刺激に対して反応しなかったり、逆に過剰に反応するといったことが起きます。

このような脳の状態が、マルトリを引き起こす可能性も推察できるのです。

こうした研究結果をもとに、マルトリを予防するための具体的な策を考えていきたいと思っています。


無知は罪である

マルトリはすべての親が経験することであり、マルトリをしてしまっ親を責める気持ちはまったくありません。ただ、「無知は罪」であると考えています。「マルトリなんて知らない、自分には関係ない」と目をつぶり、知らずに子どもの脳とこころを傷つけ続けることはあってはならないし、許されるべきでもありません。

「またやってしまった」と思ったら、次は同じことを繰り返さないように気を付ければいいのです。もしコントロールできないと感じたら、専門家に相談することをおすすめします。脳を癒やすことで、改善します。

そう、傷ついた脳は修復できるのです。私たちは希望を持って、科学的研究に取り組んでいます。


今回紹介したのはこちら!

書籍「最新脳研究でわかった 子どもの脳を傷つける親がやっていること」

『最新脳研究でわかった 子どもの脳を傷つける親がやっていること』
友田明美 (著)/SBクリエイティブ


不適切な子育ては、
子どもの脳を物理的に萎縮させるばかりか、
さまざまな疾患のリスクを高めていた!

小児精神科医で、米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究日本側代表を務めた友田明美先生が、不適切な養育について最新研究をもとに警鐘を鳴らし、不適切な養育に陥らない子育てのコツを提案します。

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〈著者プロフィール〉友田明美(ともだ・あけみ)

小児精神科医。医学博士。福井大学子どものこころの発達研究センター教授。熊本大学医学部医学科修了。同大学大学院小児発達学分野准教授を経て、2011年6月より現職。福井大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長兼任。2009─2011年および2017─2019年に日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究日本側代表を務める。著書に『子どもの脳を傷つける親たち』(NHK出版新書)、『新版 いやされない傷』(診断と治療社)、共著に『虐待が脳を変える─脳科学者からのメッセージ』(新曜社)などがある。


リンク先はwithclassというサイトの記事になります。


 

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