2025/11/20 10:47
西口大地
聴覚障害者による国際スポーツ大会「デフリンピック東京大会」(読売新聞社協賛)は第5日の19日、陸上男子400メートル決勝で山田真樹(ぴあ)が47秒61の日本デフ新記録で優勝し、今大会全競技を通じて日本勢第1号の金メダルに輝いた。山田は2017年サムスン(トルコ)大会の男子200メートル、同400メートルリレー以来となる自身8年ぶりの金メダル。男子三段跳びでは中西椋(フジミインコーポレーテッド)が自身の持つ日本デフ記録に並ぶ14メートル20で4位。女子砲丸投げでは境橋真優(豊田自動織機)が自己新記録の12メートル80で6位に入った。
会心の走り「150%の力を出し切った」
男子400メートルで金メダルを獲得した山田真樹(19日)=浦上太介撮影
完璧なレースだった。男子400メートル決勝で、山田はスタートから積極的に飛ばし、後半も粘り強い走りで先頭を譲らず、両手を広げて歓喜のゴールへ。デフリンピックで8年ぶりに頂点に立ち、「最高に気持ちがいい。金メダルを取るためにずっと頑張ってきて、努力が報われた」と笑顔がはじけた。
3年前のカシアスドスル(ブラジル)大会は、コロナ禍の影響で日本選手団が大会途中で出場を辞退。連覇がかかっていた200メートルのスタートラインにさえ立てず、「この理不尽はなんだろうと運命を呪い、自分のこともダメだと思った」。
一時は陸上から離れたが、デフリンピックの東京開催が決まり、「もう一回やってやろうと思えた」。競技実績に加え、俳優としても活躍する端正な顔立ちから「大会の顔」として公式ポスターに起用された。重圧がかかったが、「注目を浴びた方が、本番は強くなる」と前向きにとらえ、練習への活力に転換した。
この日はポーランド選手の猛追を受け、「抜かれてたまるかと、150%の力を出し切った」という会心の走りで、自身が持つ日本デフ記録を0秒21更新。国内大会よりも国際舞台で力を発揮することから、「世界の山田」と評される強心臓ぶりを見せつけた。
本命種目ではない最初の400メートルで最高の結果を出した28歳は「これで満足せず、200メートルでもう一度金メダルを取りたい」と宣言。まだまだファンを喜ばせるつもりだ。(西口大地)
スタートでミス、高田が予選失格…男子110メートル障害
5大会連続出場の男子110メートル障害・高田裕士(トレンドマイクロ)が、予選でまさかの失格。スタートランプの合図が「号砲」を意味する緑色に変わる前に飛び出す不正スタートを犯し、「緑色が見えたつもりだったが、気持ちが入りすぎてしまったかもしれない」と悔やんだ。生まれ育った東京での快走は果たせなかったが、41歳のベテランは「次に続く選手が非常に増えてきた。本当にうれしい」と後進の活躍を喜んでいた。
男子三段跳びで4位の中西「うれしさより残念」
男子三段跳び・中西が4位に食い込んだ。前半は自身が持つ日本デフ記録に並ぶ14メートル20を跳んで4番手につけると、後半は助走に入る前に観客席へ手拍子を求め、「音が聞こえなくても、盛り上がっているのを肌で感じられる」。後押しを受けて逆転を狙ったが、惜しくもメダルには届かなかった。「記録より、メダルが目標だった。うれしさより残念という気持ちの方が強い」と悔やんだ。
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