【愛媛県】聴覚障害でも音楽楽しく 東温・北吉井小の特別支援学級児童 南米発祥打楽器「カホン」を自作

【愛媛県】聴覚障害でも音楽楽しく 東温・北吉井小の特別支援学級児童 南米発祥打楽器「カホン」を自作

愛媛新聞 2026年3月4日(水)

上浮穴高校との交流演奏会でカホンをたたく藤田陸さん(左)と、指揮をする川原寛輝教諭(右)=1月末、東温市志津川の北吉井小学校

上浮穴高校との交流演奏会でカホンをたたく藤田陸さん(左)と、指揮をする川原寛輝教諭(右)=1月末、東温市志津川の北吉井小学校


 聴覚障害の有無にかかわらず、音楽を楽しもう—。東温市北吉井小学校(同市志津川)は2025年度、特別支援学級で南米発祥の打楽器「カホン」を用いた教育活動を実施した。体に伝わる振動で音やリズムを感じる試みで、聴覚障害の児童らが楽器製作や演奏会を通して音楽の新しい楽しみ方を体感している。

 特別支援学級の教育課程で、障害に応じて学習や生活をよりスムーズにするための「自立活動」の一環。カホンの導入は、学級担任、川原寛輝教諭(41)が聴覚障害の5年生藤田陸さん(11)が音楽を楽しむ様子を見たのがきっかけだ。

 藤田さんは人工内耳を使い、音楽の授業は普通学級で受ける。「ビートを感じると体を揺らす感性がある」(川原教諭)など音楽への関心が高いが、微妙な音程は捉えづらく、合奏や歌唱に加わるのが難しい。

 そこで着目したのがカホン。演奏経験がある川原教諭によると、箱形の楽器本体に座ってたたくため、尻に伝わる振動でリズムを捉えやすい。カホンは久万高原町産スギで製作する上浮穴高校から調達した。

 2025年4月、初めてカホンに触れた藤田さん。「お尻とかおなかにドンって音が響く!」。夢中になり、休み時間もたたいていた。

 手応えをつかんだ川原教諭は、藤田さんを含め特別支援学級に在籍する1〜6年生12人で、音楽への新たなアプローチを探る「カホンプロジェクト」を始めた。聴覚の他、情緒や知的障害がある児童もいる。

 プロジェクトではまず、楽器作りに挑戦。9月に上浮穴高生を講師に招き、木材を組み立て、自分専用のカホンを作った。5年生の藤田さんは、県の林業を調べ、楽器の体積を計算するなど音楽以外の学習へも発展させた。

 自作のカホンに愛着を持った児童たちは、たたき方の違いで高低の音色を出すこつをつかんだ。練習の成果を披露しようと、11月の校内音楽会で特別支援学級の演目を設けた。楽曲「それもいいね」に合わせ、得意げにリズムを刻む。「誰もが人それぞれ」「違ってもいいね」との歌詞を全校児童が合唱し、一体感が生まれた。藤田さんは「今まで合奏は苦手だったけれど、友達と音を合わせて、拍手をもらってうれしかった」と誇らしげだ。

 1月末、プロジェクトを締めくくる上浮穴高生との交流演奏会があった。輪になり、互いのリズムや表情を感じて笑顔が広がった。

 会で藤田さんは学習成果を発表。校内音楽会で味わった達成感や、久万高原町産スギの魅力にも触れ「カホンを始めて面白いことがいっぱいあった」と満足そうな表情を見せた。

 北吉井小では、普通学級の児童が休み時間に特別支援学級を訪れ、カホン演奏のこつを教わっている。川原教諭は「交流や学習がどんどん広がる」と語り「聴覚障害イコール音楽を楽しめないという思い込みを覆す事例になった」と力を込めた。


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