2026年2月24日 13時00分
岩本哲生

記者サロン「障害に気づく 私から変える」の収録に臨む手話通訳者=飯島啓史撮影
朝日新聞記者やゲストが語り合うトークイベント「記者サロン」では、聞こえない・聞こえにくい人に音声情報を届けようと、2025年3月から字幕を表示できるようにしています。加えて最近、手話通訳をつけることに取り組みました。
東京手話通訳等派遣センターの森せい子センター長によると、手話と字幕は「別の言語。文字で理解したい人と手話で理解したい人がそれぞれいる」とのことです。今回の取り組みは、手話独自の意義や表現方法を、より深く知る機会にもなっています。
【視聴はこちら】記者サロン「障害に気づく 私から変える」
手話通訳をつけたのは、2月6日からオンラインで配信中の「障害に気づく 私から変える」です。車いす生活を長く経験し、今は杖歩行の竹石涼子記者や、日本障害者協議会代表の藤井克徳さんらが出演した回です。
本編を収録・編集した後、東京手話通訳等派遣センターから派遣された2人の手話通訳者が、約15分ごとに交代しながら手話をつけていく様子を収録しました。2人には事前に本編を見てもらいましたが、それでも、現場の映像が思い浮かぶように理解する必要もあるそうです。
例えば、竹石記者が車いす用トイレの利用で苦労した経験を話した場面では、そのままだと情報が足りないと感じ、通訳をいったん止めることに。竹石記者に連絡して詳細を確認したうえで再開しました。手話通訳者の一人は「話した言葉をそのまま伝えるのではなく、その人が伝えたいことや状況がしっかり伝わるようにということを大事にしている」と話しました。
丁寧な作業は的確な手の動きを伴う通訳として、視聴した人たちにも伝わったようです。「表情が豊か」(香川県・女性)、「印象的で、より分かりやすくなると気づきました」(岐阜県・女性)という声が寄せられました。
最高裁判決にも導入 デフリンピックで社会に広がり
東京手話通訳等派遣センターの森センター長によると、最近では行政機関や企業が手話通訳を採り入れるようになり、「社会に手話がどんどん広がっていると感じる」と言います。
背景には、障害に基づくあらゆる差別を禁止した「障害者権利条約」が06年12月に国連総会で採択された影響があります。24年の旧優生保護法訴訟の最高裁判決の際、公費負担による手話通訳が導入されたのも後押しとなったようです。25年には、聞こえない・聞こえにくいスポーツ選手の国際大会「デフリンピック」が東京で開催され、理解が深まるきっかけにもなりました。
こうした流れのなかで、記者サロンでも手話通訳をつけることができ、意義深かったと感じます。記者サロンの手話通訳者の一人はこう話していました。「手話通訳をつけても、必要とする人に知られないままだと『ない』ものと思ってアクセスしなくなる。手話通訳をつけたら、それを知らせていくことも必要です」
東京手話通訳等派遣センターの森センター長はさらに、手話通訳は一般に、内容そのものが通訳者に理解しづらいと苦労しがちになる面もあると指摘します。「企画と進行次第ですね。いかに分かりやすくかみ砕いてくれるかにかかっています」。まずは、誰にとっても伝わりやすい内容にすることが大切なのだと改めて感じました。
今後の記者サロンの予定
【2月27日~配信】成長が続くゲーム産業の今や未来について、大手ゲーム会社「コーエーテクモホールディングス」の社長や「週刊ファミ通」編集長と考える「ゲーム産業のいま」(https://t.asahi.com/wq7k別ウインドウで開きます)
【2月28日~配信】福島第一原発事故を起こした東京電力が柏崎刈羽原発を再稼働。その適格性や、地元への影響、原発をめぐる諸問題などについて、記者たちが議論する「検証 柏崎刈羽原発再稼働」(https://t.asahi.com/wq7m別ウインドウで開きます)
【3月6日~配信】売る側を処罰対象とする日本の売春防止法の制定から70年。規制のあり方を見直す動きが出る中、買う側に罰則を科し始めたフランスの例と共に、課題や今後を考える「買春は暴力 変わるフランス、日本は」(https://t.asahi.com/wq7n別ウインドウで開きます)
【3月8日会場開催/13日~配信】政治分野のジェンダー不平等の解消をめざすFIFTYS PROJECT代表の能條桃子さんを「先生」に迎え、作家・山内マリコさんと語るRe:Ronカフェ「永遠の生徒~あなたの言葉が、社会を動かす」。会場開催は国際女性デーの3月8日、参加者募集中(https://t.asahi.com/wq7o別ウインドウで開きます)
【3月20日~配信】2040年にも訪れる、現役世代がいまの8割になる「8がけ社会」。「転出超過」が5年連続全国最多の広島県で、地元企業の若手社員が進める取り組みから未来図を考える「8がけ社会 新しい『はたらく』を考える」(https://t.asahi.com/wq7r別ウインドウで開きます)
【3月27日~配信】ときに不満や不安が渦巻く保護者と学校の間柄。精神疾患で休職した公立学校教員の数も過去最高の水準に。子どもの安心のためにも、双方がどうかかわるかを考える「学校と保護者 どう付き合う?」(https://t.asahi.com/wq7v別ウインドウで開きます)
◇この記事は朝日新聞グループの関連事業を紹介しています。
リンク先は朝日新聞というサイトの記事になります。
