「時計の秒針」が聞こえにくいと要注意…それ、「認知症の第一歩」かもしれません

「時計の秒針」が聞こえにくいと要注意…それ、「認知症の第一歩」かもしれません

2025年5月26日 7時0分 現代ビジネス

補聴器を持つ手

時計の秒針が聴こえにくいと要注意

認知症リスクを「およそ半分」にまで下げられる、「とっておきの方法」があった!』で紹介した『Lancet』の研究によれば、LDLコレステロールと並んで認知症リスクをもっとも高めている因子が難聴だ。慶應義塾大学名誉教授でオトクリニック東京院長の小川郁氏が、そのメカニズムを解説する。

「人間は聴覚を通じて相手の言葉を認識し、頭の中で意味を理解したうえで、適切な返答を考えて発話しています。目から情報を受け取る視覚と比べて、コミュニケーションの過程でより能動的に脳を使っているため、大脳のさまざまな高次機能が活発に働くわけです。


しかし聴覚が衰えると言葉の入り口が遮断され、大脳に入る刺激も弱まってしまう。結果的に難聴が認知症を招くと考えられています」

一般的に40 dB未満、すなわち時計の秒針の音が聴こえにくい人は、すでに軽度の難聴の可能性がある。

時計の針

「認知症が発症してから聴力を補っても手遅れで、認知機能が回復する見込みはありません。最近ではイヤホンで音楽を聴く人が増えて、難聴かつMCIの患者も増加している。仮に日常生活では問題がなくとも、早めに対応すべきです」(小川氏)


認定補聴器技能者がいる店へ


聴力を補う手段の一つが補聴器だ。デパートや家電量販店など、いまや至る所で手軽に買える補聴器だが、うぐいす補聴器代表で認定補聴器技能者の田中智子氏は、まずは近くの耳鼻科を受診することを勧める。

「まずは聴力検査で耳の状態を把握したうえで、補聴器の専門店に行ってみてください。オススメなのは、専門資格である認定補聴器技能者がいるお店。公益財団法人テクノエイド協会のHPから、資格を持ったスタッフがいる店舗を検索できます」

オトスコープで耳の中を診察しているところ

一口に補聴器と言っても、タイプやメーカーによって千差万別だ。大きく形状で分けると、耳穴型と耳かけ型の2種類がある。

「耳穴型は耳の中にすっぽりと収まるので目立たない反面、パワーが弱いタイプもあるため難聴の程度が重い方だと出力が足りない場合がある。逆に耳かけ型はパワーは強いものの、メガネやマスクとぶつかってわずらわしく感じる人もいます。一長一短あるので、ご自身の聴力や生活に応じて決めてください」(田中氏)


充電式か、電池式か


また電源についても、充電式と電池式の2種類から選べる。後者は1〜2週間に1度は専用の電池を交換する必要があるうえ、電池はどこでも買えるわけではない。面倒に感じるならば、充電式がオススメだ。

しかし難聴が進行し、一瞬たりとも補聴器が手放せなくなると、充電が切れても電池を換えればすぐ使える電池式を好む人もいる。災害時に避難先の体育館に電源がなかったとしても、電池があれば問題ない。

これら2×2=4通りの選択肢を踏まえたうえで、次ページのフローチャートも参照しながら、自分に合った補聴器メーカーを選んでみよう。一般的に日本のものと比べて、海外メーカーの補聴器は性能が高いと言われる。

耳あな型補聴器、耳かけ型補聴器、充電式、電池式の説明図


「世界シェア1位を誇るフォナックは幅広い難聴に対応していて、製品ラインナップが豊富。とくに言語が発達途上の子ども向け補聴器にも強いため、言葉の聞き取りやすさに定評があります。

一方、オーティコンは脳内の音声処理のプロセスに着目し、周囲360度の音が聴こえるようになっています。自然で柔らかい音を聴きたい人にはオススメです。


小型の耳穴型に強みがあるスターキーはAIを搭載していて、スマホのアプリと連動し1日の会話量を測定、使用者の健康状態まで把握できます。防水にも力を入れており、業界初の『水ぬれ保証』があるので、プールによく行く人にもピッタリですね。

ドイツのメーカー・シーメンスの流れをくむシグニアは、先進的な技術に定評があります。たとえばカメラで、被写体が動いても自動でピントを合わせる機能がありますよね。それと同じく、話し手を捉えて声を自動で追ってくれる機能が好評です」(うぐいす補聴器代表で認定補聴器技能者の田中智子氏)



国内メーカー、どれを選ぶ?

各社が特徴的な製品を打ち出している海外メーカーだが、対する国内メーカーはサポート体制の充実ぶりに軍配が上がる。田中氏が続ける。

「国内シェアの約20%を占めると言われているリオンは、耳鼻科医との連携が密なのが特徴。全国に180以上の直営店があり、きめ細かなサポート体制が魅力でしょう。

サポートと値段のバランスがいいのはシャープです。しっかりとした補聴器の相場が30万〜40万円の中で、自分の聴力に合うよう調整してくれるオンラインサポートも含めて10万円に収まる。またスマホのアプリで音量を調節でき、使いこなせれば非常に便利です。最初の1台、あるいは予備機として購入する方もいます」

補聴器メーカーの選び方フローチャート


バラエティに豊んだ国内外のメーカーを渉猟すれば、自分にピッタリの1台がきっとみつかるはずだ。

「週刊現代」2025年5月26日号より


リンク先は週刊現代というサイトの記事になります。


 

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