更年期に生じる「めまい」の原因は?自覚しにくい難聴にも注意

更年期に生じる「めまい」の原因は?自覚しにくい難聴にも注意

更年期を迎えると女性の体には大きな変化が訪れます。「更年期を単なる通過点ではなく新たなステージへの出発点ととらえ、後半の人生に向けて踏み出す準備をはじめましょう」と話すのは、医師・天野惠子さん。自身も更年期症状に悩んだ経験から、日本における「女性外来」の発展に尽力してきました。最新の情報をまとめた自著『女の一生は女性ホルモンに支配されている!』(世界文化社刊)から、更年期世代の女性に多いめまいや耳鳴り、注意したい難聴などについて解説します。

こめかみに手を当てる女性の写真
女性の一生にめまいはつきもの。(※画像はイメージです)

10代も50代も、女性はめまいを起こしやすい

“女性の一生にめまいはつきもの”といってよいほど、初経(初潮)を迎えた頃の立ちくらみに始まり、30~40代の月経前症候群や更年期症状など、ホルモンバランスや自律神経の乱れとも関係して女性は年代ごとに異なる要因でめまいを起こしがちです。実際、女性外来を担当する多くの医師たちが、多岐にわたる訴えのなかでも「めまい、ふらつき」は上位の主訴であると指摘しています。

症状は、体や周囲がぐるぐる回っているように感じる回転性めまい、立ち上がろうとすると体がふわふわする非回転性めまいなどさまざまで表現も人それぞれ。天野先生が更年期に経験したのは、ふわーんと体をどこかに持っていかれるような感覚だったといいます。

めまいはしばしば耳鳴りや難聴を伴います。まれに脳の病気が隠れている場合もあるのでまずは受診を。よくある症状ほど、油断して病気を見逃さない用心深さが必要です。

●年代で原因が異なる女性のめまいと耳鳴り

両手を頭に当てる女性の写真
※画像はイメージです

めまいを訴える女性はどの年代でも男性より多く、年代別に原因は異なります。更年期に生じるめまいの大半は検査で異常の出ない自律神経の乱れによるもの。60歳を過ぎた頃から増えてくるのが良性発作性頭位めまい症で、メニエール病も60代以降起こりやすくなります。

実際はない音が鳴っているように聞こえる耳鳴りは多くが原因不明ですが、高血圧、糖尿病、疲労、ストレス、睡眠不足により悪化することがわかっています。

女性のライフステージとめまい・耳鳴りを起こす主な病気の表
『女の一生は女性ホルモンに支配されている!』より

めまいには、このほか脳血管障害、脳腫瘍、小脳出血、高血圧症など重篤な病気が隠れている場合があります。めまいが長く続くときは病院を受診しましょう。

●めまいの症状別に漢方薬を使い分ける

漢方では、めまいの原因を血虚(血液の循環障害)と水毒(リンパ液や組織間液の滞り)ととらえ、これらを改善する漢方薬を用います。更年期のめまいによく使うのが苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)で、動くとくらくらするめまいや立ちくらみによく効きます。

ふらっとする、雲の上を歩いているような感覚のふわふわしためまいには真武湯(しんぶとう)。天気が崩れるときに調子を崩し、頭が重くなる回転性めまいには五苓散(ごれいさん)など。症状によって使い分けます。

耳鳴りの約4割に牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)が効くといわれています。また、腹式呼吸が効くこともあるので試してみるとよいでしょう。

耳に手を当てる女性の耳のアップ写真
※画像はイメージです

加齢性難聴の原因は内耳の中の有毛細胞(音を電気信号に変えて脳に伝える)の損傷。加齢や大音量を長時間聞き続けることで進行し、一度ダメージを受けた細胞は修復されません。

高い音や子音から聞き取りにくくなるのが特徴で、電子レンジや体温計の信号音に気づかない、「基地」と「位置」の聞き違いなどが生じます。血流の悪化もリスクとなり、動脈硬化のある人は高音域の聴力が低下しやすいとの研究結果が出ています。早く気づくためにも、ほかの病気(突発性難聴、メニエール病など)との鑑別のためにも定期的に聴力検査を受けましょう。

●難聴対策の基本は生活習慣。補聴器の使用は早めに

大きな音に長時間にさらされないことや血流の悪化を防ぐことは難聴の予防や進行を抑える効果があります。生活習慣の見直しは難聴対策の基本。運動習慣のある人はない人に比べて難聴になりにくいともいわれています。

聞こえの悪さを自覚したり周囲から指摘されたら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。自分に合った補聴器を積極的に使うことは、社会活動や生活の質の維持、ひいては認知症予防に有効です。

●イヤホン・ヘッドホンの長時間使用に注意。増えている“騒音性難聴”

ヘッドホンで音楽を聴く人たちのイラスト画像

「2016~20年の20代女性の聴力は、2000~04年の40代女性と同程度」という衝撃的な報告が出ました。国立病院機構東京医療センターによると、近年、40代以下の男女ともに、音響によるダメージを最も受けやすい高音域(4000Hz)の聴力が明らかに低下しており、イヤホンやヘッドホンで音楽を聴く環境が影響している可能性が高いとのこと。

加齢と大音量が重なると難聴は加速します。音量を小さめにする、長時間聞き続けないなどの注意は全世代の現代人に必要です。

Profile
天野惠子さん
1942年生まれ。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。09年より静風荘病院にて女性外来を開始。静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長

イラスト:佐々木公(sunny side)/画像素材:PIXTA

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