東京2025デフリンピック 競泳日本代表に過去最多15名が内定

東京2025デフリンピック 競泳日本代表に過去最多15名が内定

佐々木延江
国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表
7/1(火) 10:29

東京2025デフリンピック日本代表に選ばれた齊藤京香(CPAEP)の女子100mバタフライ。この種目で前回ブラジル大会で金メダルを獲得した。 写真・PARAPHOTO/内田和稔

東京2025デフリンピック日本代表に選ばれた齊藤京香(CPAEP)の女子100mバタフライ。この種目で前回ブラジル大会で金メダルを獲得した。 写真・PARAPHOTO/内田和稔


茨隆太郎、齊藤京香ら実力者と串田咲歩らニューエイジによる布陣

2025年11月に東京・福島・静岡を会場に開催される第25回夏季デフリンピックに向け、日本デフ水泳協会は6月29日、競泳日本代表内定選手15名を発表した。発表は、横浜国際プールで行われた「第28回日本知的障害者選手権水泳競技大会」終了後の記者会見で行われた。

東京2025デフリンピック日本代表を発表する豊田律氏(日本デフ水泳協会理事長) 筆者撮影

東京2025デフリンピック日本代表を発表する豊田律氏(日本デフ水泳協会理事長) 筆者撮影


日本デフ水泳協会の豊田律理事長は、「過去最多となる15名が内定し、国内初開催となるデフリンピックにふさわしい布陣がそろった」と語った。目標については、前回大会での13個のメダル獲得を踏まえつつ、ロシア、ベラルーシ選手の復帰などでハイレベルな競争が見込まれることから、「現実的にはメダル6個の獲得と全選手の入賞を目指す」と述べた。


競泳日本代表 内定選手一覧(15名)

【個人種目で内定(10名)】

◆男子(3名)
茨隆太郎(SMBC日興証券):50m背泳ぎ、200m平泳ぎ、200m個人メドレー
星泰雅(サムティ):50m平泳ぎ、100m平泳ぎ、200m平泳ぎ
金持義和(メルカリ):50m背泳ぎ、100m背泳ぎ

◆女子(7名)
中東郁葉(サムティ):400m個人メドレー
齋藤京香(CPAEP):50mバタフライ、100mバタフライ
串田咲歩(サンながら):100m平泳ぎ、200m平泳ぎ
久保南(大日本ダイヤ):50m平泳ぎ、200m平泳ぎ
吉瀬千咲(東京女子大):50m自由形
平林花香(上宮高校):50m背泳ぎ
吉田琉那(FUJIMI):50mバタフライ


【リレー種目で内定(5名+補欠1名)】

◆男子(4名+補欠1名)
野村空和(JDSA):4×100mメドレーリレー
村岡翼輝(JDSA):4×100mメドレーリレー
池田伊吹(静岡ぱしどる):4×100mメドレーリレー
荒川輝久(JDSA):4×100mメドレーリレー
【補欠】平賀大河(JDSA):4×100mメドレーリレー補欠

◆女子(1名)
川眞田結菜(JDSA):4×100mメドレーリレー、4×100mフリーリレー


主力は茨・齊藤らベテラン

200m平泳ぎで日本記録(2分19秒45)を更新した、茨隆太郎(SMBC日興証券) 写真・PARAPHOTO/内田和稔

200m平泳ぎで日本記録(2分19秒45)を更新した、茨隆太郎(SMBC日興証券) 写真・PARAPHOTO/内田和稔


男子の主軸は、前回大会で4冠を達成した茨隆太郎。今大会では3種目で基準記録を突破し、5大会連続出場を決めた。平泳ぎの星泰雅や、背泳ぎの金持義和も複数種目で代表に名を連ねた。

インタビューに応じる齋藤京香(CPAEP)前回カシアス・ド・スル(ブラジル)大会・女子100mバタフライで金メダルを獲得した。 筆者撮影

インタビューに応じる齋藤京香(CPAEP)前回カシアス・ド・スル(ブラジル)大会・女子100mバタフライで金メダルを獲得した。 筆者撮影


女子では、齋藤京香が3大会連続出場。400m個人メドレーの中東郁葉や、平泳ぎの久保南も複数大会経験を持つベテランとしてチームを支える。


串田咲歩、高校2年で2種目日本新記録 競泳で新たな舞台へ

岐阜県立岐阜商業高等学校2年の串田咲歩(サンながら)は、100m平泳ぎ(1分15秒18)と200m平泳ぎ(2分43秒33)で日本新記録を樹立し、デフリンピック初出場を決めた。

串田咲歩(岐阜県立岐阜商業高/サンながら)の50m平泳ぎ 写真・PARAPHOTO/内田和稔

串田咲歩(岐阜県立岐阜商業高/サンながら)の50m平泳ぎ 写真・PARAPHOTO/内田和稔


これまで健聴者の大会を中心に競技を続けてきたが、昨年のパラ水泳日本選手権(草津)でデフ選手として出場、「こういう世界もある」と新たな舞台への挑戦を志した。デフリンピックでは「いろんな人と話をして、学べることがいっぱいある大会にしたい」と語り、水泳競技を通じて世界を広げている。


支える施設・横浜国際プールの役割と行方

今回の選考会場である横浜国際プールは、1998年の開業以来、「障害の有無を問わず市民が利用できる競技用プール」として知られ、パラ水泳(身体・知的・デフ)の合同開催の場として活用されてきた。日本代表選手の育成拠点としても大きな役割を果たしてきたが、横浜市の再整備計画により2028年以降の廃止が検討されており、代替案がないまま「パラ水泳の聖地」が岐路に立たされている。

パラ水泳日本代表の活躍を支える、横浜国際プール。6月29日撮影 写真・内田和稔

パラ水泳日本代表の活躍を支える、横浜国際プール。6月29日撮影 写真・内田和稔


入場無料で誰もが観戦できる国際大会へ 注目集まる東京大会

デフリンピックは1924年に第1回大会が開かれた歴史ある国際競技大会で、日本開催は初めて。水泳競技は11月17日から25日までの9日間、東京アクアティクスセンターで開催される。大会は入場無料で行われる予定で、地域住民が気軽に世界レベルの競技に触れる機会となる。

東京都の調査(令和6年)によると、デフリンピックの認知度は39.0%にとどまっており、今大会を通じて聴覚障害者への理解が進み、共生社会の実現に寄与することが期待される。

豊田理事長は「地域や学校との連携、情報発信の強化にも力を入れていきたい」と観戦を通じて多くの人がデフスポーツの魅力に触れることを呼びかけた。

(この記事はPARAPHOTOに掲載された記事を再編集したものです)


佐々木延江
国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表

パラスポーツを伝えるファンのメディア「パラフォト」(国際障害者スポーツ写真連絡協議会)代表。2000年シドニー大会から夏・冬のパラリンピックをNPOメディアのチームで取材。パラアスリートの感性や現地観戦・交流によるインスピレーションでパラスポーツの街づくりが進むことを願っている。


佐々木延江の最近の記事

東京2025デフリンピックに向けて──「お金をかけない」国際大会から目指す新たなスポーツの価値とは?

パリ金メダリストが横浜に帰還!2025ワールドトライアスロン・パラシリーズ始動、市役所で記者会見!


あわせて読みたい記事

茨、斎藤らが競泳代表に 11月開催のデフリンピック


リンク先はYAHOO!JAPANニュースというサイトの記事になります。


 

ブログに戻る

コメントを残す