【漫画】アニメに字幕がなくてガッカリしたのはなぜ? マイノリティへの理解が深まる『字幕が欲しかった子ども』

【漫画】アニメに字幕がなくてガッカリしたのはなぜ? マイノリティへの理解が深まる『字幕が欲しかった子ども』

2025.11.04 06:55
文・取材=青木圭介

【漫画】アニメに字幕がなくてガッカリ

 夜中に眠れずリビングでぼんやり過ごす少年。ふとテレビをつけると、面白そうな深夜アニメが放送中。ワクワクしながらとあるボタンを押すも、ガッカリすることになってしまい……。

 聴覚障害を抱える少年の悲しみと嬉しさを描く漫画が、「字幕が欲しかった子ども」の文言とともにXにアップされた。本作は自身も耳が聞こえないなかで生活をする、漫画家・あかね(@akanedeaf)氏の作品だ。

 今回は作品発表時の反響や自身の体験について、あかね氏に話を聞いた。(青木圭介)

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『字幕が欲しかった子ども』(あかね)

『字幕が欲しかった子ども』(あかね)


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ーー本作を創作した経緯を教えてください。

あかね:去年の秋に耳の聞こえない友人に一緒に「デフ・アート展」に出展しないかと誘われ、「漫画を描いて展示しよう!」と決めたのがきっかけです。耳が聞こえない人が実体験をもとにした漫画を描いたら面白そうだと思い、自分や知人の体験をもとにオリジナル漫画を制作しました。展示は今年の夏におこない、本作を含めた漫画をまとめて本にして自費出版もしています。

ーー漫画を発表した際の反響はどうでしたか?

あかね:非常に多くの共感の声をいただいて、嬉しかったです。聞こえない人だけでなく、聞こえる人からも多くの反応がありました。「私は聞こえるけど聞き取りが苦手だから字幕が欲しい」「家族が寝てると音を出せないから字幕があると助かる」というコメントがあり、深く頷きました。

 また、本作の最後に描いた「オープニングとエンディングの歌に字幕がないから歌詞がわからない」にも共感の声が多かったです。歌詞にも字幕をつけてほしいという人がこんなにもいたんだ、自分だけじゃなかったんだ、と嬉しくなりました。早口だと聞き取れないなどの声もあり、聞こえる人でさえこうなのだから歌詞にも字幕を付けていただけたら嬉しいなと、改めて思います。

ーー本作はあかね氏自身の体験をもとにしているんですよね。


あかね:このお話はすべて私の実体験です。子どもの頃好きな漫画が原作のアニメがあり、それを観ようと思っても字幕が出ませんでした。リモコンの字幕ボタンを押しても反応はありません。当時、ゴールデンタイム以外のアニメには字幕が無いことが多く、観たくても観れなくてとてもがっかりしたのを覚えています。

 それ以外にも、私が小学生か中学生くらいのときに、有名だけど観たことがなかったアニメ映画をレンタルしたんです。早速家で観ようと思ったらメニュー画面に字幕設定が無くて、すごく悲しかったです。そのときは、せっかく借りたからと、半ば意地でセリフを妄想しながら最後まで観ました。でもやっぱり字幕が無いと展開についていけず、「なんでそうなったの???」と物語の面白さがよくわからず消化不良のまま終わってしまいましたね。

 数年経ち、その映画が金曜ロードショーでやることになり、念願の字幕ありで観ることができました。やっと話の内容を知ることができ、とても嬉しかったのをよく覚えています。今では配信サービスが充実し、ほとんどの作品に字幕も付くようになったので、様々な作品を字幕付きで楽しめるようになってとてもありがたいです!


ーー作中で描かれていたこと以外に、映画やアニメを観るうえで困ることはありますか?

あかね:劇場に映画を観に行く場合、日本語字幕付き上映が上映期間中の最初にしか付かなかったり、付いたとしてもその日の朝一番の回だったり一番最後の回のみだったりと、あまり自由に選択できないのが困ります。

 また、洋画に日本人が出てくると、その日本人が喋ってるシーンだけ日本語字幕が無くなるんです。「日本語だから字幕なくてもいいよね?」と言われているようで、結構困りますね。日本語字幕付きで観ている人の中には、聞こえない人もいるということを考えていただけると非常に嬉しいです。


ーー作中の、レンタルしたDVDに日本語字幕がなかった際の表情が印象的でした。

あかね:日本語字幕がないから内容がわからない。せめて絵だけでも観てどんな内容かセリフを想像するも、楽しい気持ちになかなかなれず、「字幕があればこんな気持ちにならなかったのに」という悲しみと怒りが混ざった気持ちを表現しました。


ーー自身の体験を漫画にするなかで、特に入れたかった感情を教えてください。

あかね:聞こえない人はアニメも満足に楽しめないのかと考えてしまう悲しさや怒りと、それから数年経ち配信サービスで字幕が付くようになって多くのアニメを楽しめるようになった嬉しさを特に入れたかったです。聞こえない人のほとんどが体験したことかなとも思いますので、その人たちに共感してもらえるような漫画にしました。


ーー最後に、今後はどのような漫画を描きたいですか?

あかね:自分を含む耳が聞こえない人が実際に体験したことをもとに、リアルを伝えられる漫画を描いていきたいです。聞こえる人たちにとっては「そうなんだ!」となり、聞こえない人たちにとっては「そうそう!」となれるような漫画を描いていけたらと思います!

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青木圭介
エンタメ系フリーライター兼編集者。漫画・アニメジャンルのコラムや書評を中心に執筆しており、主にwebメディアで活動している。

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