名古屋大学
2025年4月10日

名古屋大学の研究者たちは、「サウンドスパイス」と呼ばれる特定の100Hzの音で内耳を刺激することで、吐き気やめまいなどの乗り物酔いの症状を大幅に軽減できることを発見しました。この安全でシンプルな技術は前庭系を活性化し、バランス感覚を改善することで、様々な移動環境における乗り物酔いの有望な治療法となります。
名古屋大学の研究者らが開発した100Hzの音は、内耳を刺激しバランスを改善することで乗り物酔いを安全に軽減します。
名古屋大学大学院医学系研究科の香川巧氏と加藤正志氏を率いる研究チームは、「独自の音刺激技術」、つまり特定の波長の音を内耳に照射する装置が乗り物酔いを軽減できることを発見しました。わずか1分間の刺激で、移動中の車内で読書をする人が経験するめまいや不快感が大幅に軽減されました。『Environmental Health and Preventive Medicine』誌に掲載されたこの研究結果は、広く普及している乗り物酔いに対する簡便かつ効果的な治療法を示唆しています。
「私たちの研究では、『サウンドスパイス』と呼ばれる独自の音を用いた短期的な刺激が、吐き気やめまいといった乗り物酔いの症状を軽減することを実証しました」と香川氏は述べています。「実効的な音圧レベルは日常的な環境騒音曝露の範囲内であり、この音響技術が効果的かつ安全であることを示唆しています。」
この発見は、音と内耳への影響に関する近年の研究成果を重要な形で発展させたものです。内耳のバランス感覚に関わる部位を独特な音で刺激することで、バランス感覚が向上する可能性があることを示唆する証拠が増えています。研究者たちは、マウスモデルとヒトを用いて、100Hzの独特な音が最適な周波数であることを特定しました。
音が内耳を刺激する仕組み
「この独特な音の振動は、内耳にある耳石器を刺激し、直線加速度と重力を感知します」と加藤氏は説明した。「これは、独特な音刺激が、平衡感覚と空間認識を担う前庭系を広範囲に活性化できることを示唆しています。」
デバイスの有効性を検証するため、研究者らは自発的に参加者を募り、独特の音を聞かせました。刺激後、ブランコ、ドライビングシミュレーター、または車に乗ることで乗り物酔いを誘発しました。研究者らは、姿勢制御、心電図、乗り物酔い評価質問票の結果を用いて刺激の効果を評価しました。
ドライビングシミュレーターを使用する前に、この独特の音を聴取すると、交感神経の活性化が促進されました。研究者たちは、乗り物酔いによく見られる「ふらつき」や「吐き気」といった症状が軽減されることを発見しました。
「これらの結果は、乗り物酔いにおいてしばしば不調となる交感神経の活性化が、この独特な音への曝露によって客観的に改善されたことを示唆している」と加藤氏は述べた。
「当社の独自の音に短期的にさらされても健康リスクは最小限です」と香川氏は述べた。「刺激レベルは職場の騒音安全基準をはるかに下回っているため、適切に使用すれば安全であると期待されます。」
彼らの研究結果は、乗り物酔いを軽減する安全かつ効果的な方法を示唆しており、数百万人の乗り物酔い患者を救う可能性を秘めています。研究者たちは、この技術をさらに開発し、航空旅行や海上旅行を含む様々な移動場面への実用化を目指しています。
参考文献:「日常曝露可能な音圧レベルで100Hzの純音に1分間曝露するだけで乗り物酔いが改善する可能性がある」Yishuo Gu、Nobutaka Ohgami、Tingchao He、Takumi Kagawa、Fitri Kurniasari、Keming Tong、Xiang Li、Akira Tazaki、Kodai Takeda、Masahiro Mouri、Masashi Kato、2025年3月25日、Environmental Health and Preventive Medicine。DOI
: 10.1265/ehpm.24-00247
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