綿棒で耳を掃除する女性のクローズアップ写真=iStock.com/Olga Shefer

綿棒も、耳かきも、つまようじも全部ダメ…耳鼻科医が「耳掃除はしなくていい」という納得の理由

2026/05/31 11:00
PRESIDENT Online
音良 林太郎
医師、医療ライター

毎日お風呂上がりには綿棒で耳掃除をしている、という人は多い。しかし、耳鼻科専門医の音良林太郎さんは「綿棒を使うのも、こまめに耳掃除をするのもよくない。正しいケア方法を知ってほしい」という――。

綿棒で耳を掃除する女性のクローズアップ写真=iStock.com/Olga Shefer

写真=iStock.com/Olga Shefer
※写真はイメージです

 

耳掃除がなかなかやめられない理由

綿棒で耳をくるくる掃除するのがやめられない……という人は多いはずです。

実際、耳鼻科医である私は、毎日のように耳掃除をしすぎて炎症を起こした方を診ています。過去には外耳炎が悪化して入院になったケースもあるほどです。なぜ私たちは、そこまでして耳掃除をしたいのでしょうか。これには理由があります。

機能的MRIを使った研究で、かゆい部位を「かく」という行為が、脳の報酬系を活性化させることがわかっています(※1)。これは美味しいものを食べたとき、金銭的報酬を得たときに活性化するのと同じ系統。しかも面白いことに、耳をかいている間は、脳の痛みを感じる部位は抑制されます。だから「ちょっと痛い」くらいの強さでかくのが、いちばん気持ちいい。思い当たる人は多いはずです。

でも、本当は「かゆい」というのは、体からの「触ってはいけない」というサインです。創傷治癒の過程では、かゆみが生じます(※2)。このかゆみは「傷がちゃんと治りかけている」というお知らせだろうと私は思いますが、同時に脳に「かけ」と命じてしまうという矛盾があります。そうして実際にかくと、治りかけの組織を再損傷して負のループに入ってしまうのです。

※1 Papoiu ADP, Nattkemper LA, Sanders KM, Kraft RA, Chan YH, Coghill RC, et al. Brain's reward circuits mediate itch relief: a functional MRI study of active scratching. PLoS One.
※2 Paul JC. Wound Itch: An Update. Adv Skin Wound Care.

 

耳は「勝手にきれいになる」臓器

そもそも、耳の中は放っておいても勝手にきれいになる構造になっています。

外耳道(耳の穴の奥に続くトンネル)は、入口側の「軟骨部」と、奥側の「骨部」に分かれます。軟骨部は普通の皮膚に近く、毛も皮脂腺もあります。ここは外から手が届く範囲なので、お風呂上がりにタオルで軽く拭いても大丈夫です。

問題は、奥側の骨部。ここは人体で唯一、骨の上に皮膚が直接乗っています。毛包がなくて分泌物も出ないので、汚れが溜まる構造にはなっていません。もちろん、古い皮膚や剥がれた角質――つまり耳垢は出ますが、これも自動排泄されます。

その秘密は、外耳道の皮膚の「遊走能」と呼ばれる機能にあります。鼓膜の中心で新しい皮膚が生まれ、外側へとベルトコンベアのようにじわじわ移動していくのです。だから耳垢も、自然と外耳道の入口へと運ばれていきます。食事や会話の際に顎を動かすことも、この排出を助けるとされています。

「耳掃除は不要」と言われる根拠はここにあります。

耳垢は「軟骨部と骨部の境目」あたりまでは自動で出てきます。ただし、そこから先の入口まで届くかは、耳の形や耳垢の量によります。耳の穴が狭い人、もともと耳垢が多い人は詰まることがある。だから「詰まったら耳鼻科で診てもらう」ということもあるわけです。

 

耳掃除による有害事象は意外と多い

ちなみに、アメリカ耳鼻咽喉科学会は、患者向けの公式メッセージで「肘より小さいものを耳に入れるな」と呼びかけています(※3、4)。

綿棒もヘアピンも鍵もつまようじも、全部ダメ。理由は危険だからだけではなく、綿棒などは耳垢を奥に押し込んでしまうからです。本来は外向きに動いている自浄作用と、真逆の方向に運んでしまう。耳掃除をしようとして、耳垢で耳栓を作ってしまうこともあるわけです。

米国のある研究によると、1990年から2010年の間に、米国の子どもの綿棒関連耳外傷による救急外来受診は26万件を超えています(※5)。そのうちの73.2%が「耳掃除中」の事故で、76.9%は子ども本人が綿棒を持っていました。そして、25.3%は鼓膜穿孔という診断でした。

これは、子どもだけの話ではありません。2025年に米国で成人を対象に実施されたアンケートによると、95.6%の人が耳掃除に綿棒を使っていて、そのうちの92.6%は「医師が推奨していない」と知りつつ使い続けていました。さらに3割近くは、すでに何らかの有害事象(耳の痛み・耳垢悪化・聴力低下)を経験しています(※6)。

※3 Schwartz SR, Magit AE, Rosenfeld RM, Ballachanda BB, Hackell JM, Krouse HJ, et al. Clinical Practice Guideline (Update): Earwax (Cerumen Impaction). Otolaryngol Head Neck Surg.
※4 American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery. Experts Update Best Practices for Diagnosis and Treatment of Earwax (Cerumen Impaction): Important Patient Education on Healthy Ear Care
※5 Ameen ZS, Chounthirath T, Smith GA, Jatana KR. Pediatric cotton-tip applicator-related ear injury treated in United States emergency departments, 1990-2010. J Pediatr.
※6 Weissman B, Chowdhury S, Mattin MD, Viola F, Flanagan OL. Ear-Rational Behavior: A Survey Study of Q-tip (Cotton Swab) Habits and Health Perceptions. Cureus.

 

記事のポイント! 

耳掃除は「きれいにするため」の習慣と思われがちですが、記事では、耳には本来自然に耳垢を外へ運ぶ働きがあることが紹介されています。綿棒や耳かきで奥まで触ると、耳垢を押し込んだり、皮膚を傷つけたりして、かゆみや炎症を繰り返す原因になる場合があります。耳がかゆい、耳垢が詰まった、聞こえにくいと感じるときは、自己判断で触り続けず、耳鼻科で相談する大切さがわかる内容です。

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気になる症状がある場合は  

聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。 


原文掲載元はこちら 

 https://president.jp/articles/-/113683

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