耳鳴りの原因は「脳」にあり?「ヘッドホン難聴」にも要注意

耳鳴りの原因は「脳」にあり?「ヘッドホン難聴」にも要注意

2026.03

耳の模型を持つ医者


キーンと響いたりブーンとうなったり……煩わしい「耳鳴り」に手を焼いている人はいませんか?
実は耳鳴りの多くは、加齢にともなう「聞こえ」の低下を補おうと、脳ががんばりすぎてしまうことに原因があるといわれています。本記事では、その対策と予防のポイントを解説します。


耳鳴りは「聞こえにくさ」の裏返し


「耳の老化」は20代後半から始まる

老眼や白髪、皮膚のしわやたるみなど、加齢にともない目につく老化現象にはいろいろありますが、意外と自覚されにくいのが「耳の老化」。20代後半から機能が低下し始め、高い音から徐々に聞こえにくくなります。

聞こえにくいといっても若いうちは、健康診断などの聴覚検査でも検出されない程度で日常生活にも困りません。ですが、耳鳴りがなく聞こえに不自由していない人でも、無音室に入るとわずかであってもキーンと耳鳴りするという研究報告もあります。耳鳴りは誰にでも起こりうる現象なのです。


耳鳴りは実は脳で鳴っている

日常生活に困っていなかったとしても、脳は敏感に「聞こえにくさ」を察知しています。聴覚の電気信号を補おうとして過度に興奮すると、耳鳴りが発生するという仕組みです(図表1)。
つまり耳鳴りは、耳で鳴っているのではなく、脳で鳴っているのです。

図表1 耳鳴りのメカニズム

取材をもとに作成/参考文献「よくわかる耳鳴りハンドブック」(リオン株式会社)


病院に行くべき?放っておいていい?耳鳴りの見極め方

問診の様子

耳鳴りがしても「疲れたときだけ」「いつの間にか消える」「たまに気になる程度」でしたら、そこまで問題ありません。しかし、寝ても覚めても鳴っていて、仕事や日常生活に支障が出るほど気になる場合、治療を要する病気が潜んでいる恐れもありますので、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

以下で発症しやすい世代別に、注意すべき疾患と症状を紹介していますので、自身の症状を見極める参考にしてみてください。ほとんどの場合、難聴もともないます。


■子どもに多い疾患


かかりやすい年齢【乳幼児期~小児期】

鼓膜穿孔(こまくせんこう)
慢性中耳炎    

<主な症状>
鼓膜や耳小骨(中耳にある小さな骨で、内耳へ音の振動を伝える)の動きが悪いために難聴や耳鳴り、炎症のために耳だれが起こる。
4週間で穴が閉じることが多いが、慢性中耳炎で鼓膜穿孔を起こす。

<治療方法>
鼓膜穿孔が残る場合、手術で聴力が回復する可能性がある。

かかりやすい年齢【小児期】

滲出性中耳炎    

<主な症状>
風邪などの後に、中耳に水(滲出液)がたまり鼓膜の振動が妨げられるために耳鳴りや難聴が起こる。耳が詰まった感じ(耳閉感)、自分の声が響く(自声難聴)という症状もある。数週間から数ヶ月続き、数年と長期化することがある。

<治療方法>
投薬や鼓膜切開などで水を減らせば症状は改善する。治療に数週間から数ヶ月かかる。


■働き盛りに多い疾患

かかりやすい年齢【20~40代】

耳硬化症(じこうかしょう)    

<主な症状>
鼓膜や耳小骨の動きが悪いために難聴や耳鳴りが起こる。耳鳴りは両耳で起こることが多く、低い音が聞こえにくくなり徐々に難聴が進行していく。

<治療方法>
手術で聴力が回復する可能性がある。

急性低音障害型感音難聴
   

<主な症状>
急に低音が聞こえにくくなり、耳の詰まった感じに。自分の声や周囲の音が響いて聞こえるとともに「ブーン」「ゴーッ」といった低音の耳鳴りや低い音の難聴、めまいが起こる。原因としてストレスや過労、内耳のリンパ液が増える「内リンパ水腫」とされている。早期の治療により2週間程度で改善する。

<治療方法>
おもに投薬と規則正しい生活指導。


かかりやすい年齢【30~50代】

メニエール病    

<主な症状>
数分から数時間続く、自分や周りがグルグル回るめまいで、吐き気を伴うことある。耳鳴り、難聴を繰り返す。内耳のリンパ液が過剰になり起こるとされている。

<治療方法>
投薬や規則正しい生活指導が治療の中心だが、有酸素運動が効果的なケースも。


かかりやすい年齢【40~60代】

突発性難聴    

<主な症状>
急に片側だけ耳鳴りがしたり聞こえにくくなったりする。難聴と耳鳴りは同時期に起こることが多い。めまいをともなう場合もあるが、めまいは反復せず1回のみ。ウイルスや血行障害説はあるものの原因不明。難聴は1か月経過すると回復が難しくなる。

<治療方法>
1週間以内に投薬等の治療を開始すると改善の可能性があるので一刻も早い受診を。


■全高齢者層に多い疾患

かかりやすい年齢【60~70代】

硬膜動静脈廔や脳腫瘍など脳や血管の病変

<主な症状>
ドクンドクンという拍動性の耳鳴り、頭痛を伴うこともある。

<治療方法>
血管病変、脳腫瘍などがあれば、その原因に対する治療が必要。


■全世代に多い疾患

かかりやすい年齢【乳児~高齢者層】

耳垢栓塞(じこうせんそく)
   

<主な症状>
耳垢がたまり聞こえが悪くなる。難聴、耳閉感、自声強聴がある。片側が多い。

<治療方法>
耳垢を取り除けば症状は改善する。


かかりやすい年齢【若年層〜高齢者層】

音響外傷・騒音性難聴
   

<主な症状>
・大音量や爆発音のような衝撃音を聞いた直後に耳鳴りが起こる急性症状。早期の投薬治療が望ましい。
・工場勤務等で長年大音量にさらされて起こる騒音性難聴は慢性化している。若者ではヘッドホン難聴として増加傾向である。原因にもよるが片側のこともある。85dB以上(地下鉄のホームや飛行機、交差点など)の騒音環境に数年以上いると起こる。

<治療方法>
音響外傷では早期に内科的な治療をすることで回復することもありますが、騒音性難聴では慢性化すると回復は難しい。現時点で有効な治療法がないため、予防が重要。


かかりやすい年齢【30~60代】


聴神経腫瘍    

<主な症状>
聴神経に発生する良性の腫瘍で、腫瘍のある片方の耳だけ難聴や耳鳴りが起こる。めまいが先に起こる場合も。腫瘍が大きくなると顔面神経麻痺、顔面のけいれんなどを起こす。

<治療方法>
手術や放射線治療が検討されるが一般的に進行が遅いため、高齢者では経過観察をすることも多い。
これらの病気がない場合、耳鳴りの正体のほとんどは「脳が過敏になっていること(「注意の脳」と「苦痛を感じる脳」)」(下記、図表2参照)です。医療機関では聴覚の検査を行い、難聴があればその治療を行いますが、併せて前項でも説明した耳鳴りのメカニズムを理解し、気にしないよう心掛けることで、脳の過敏性が落ち着き、気にならないレベルまで症状が和らぐことが多いといわれています。

ただし、うつ病やその他のメンタル面の不調が強いと、感覚が鋭敏になることが多く、難聴がなくても耳鳴りを強く感じ、苦痛を感じやすくなります。この場合は耳鳴りの治療と並行して心療内科や精神科などでの治療が望まれます。

図表2 注意の脳と苦痛を感じる脳

取材をもとに作成/参考文献「よくわかる耳鳴りハンドブック」(リオン株式会社)

取材をもとに作成/参考文献「よくわかる耳鳴りハンドブック」(リオン株式会社)


耳鳴り改善&予防の3か条


耳鳴りが気になるとストレスがたまります。耳鳴りに限らず誰でも、わずかな体の不調がつらく感じられるもの。ストレス→感覚過敏に→苦痛が増大→ますますストレスがたまる、の悪循環に陥ってしまいます。それを断ち切ることがセルフケアの肝になります。

その1 耳鳴りの大きさを確認しない
「今日の耳鳴りはどうかな?」などと、気にして耳鳴りを聞こうとしてしまうと、「注意の脳」が働きますます耳鳴りに対して過敏になってしまいます。耳鳴りの大きさを確認する習慣がある人は、減らしていくように心がけましょう。

朝起きた瞬間や静かなときに確認してしまいがちですが、確認しようとした瞬間に「脳が感度をあげているな」と客観的に気づくだけでも効果があります。
また、心地よい程度の音量で好きな音楽やラジオ番組を聞くなど、耳鳴りを気にしない時間を作ると良いでしょう。

その2 耳鳴りのためにやりたいことをあきらめない
耳鳴りがあるから外へ出たくないなど、やりたいことをあきらめてしまうと、かえって耳鳴りのことが頭から離れなくなってしまいます。耳鳴りに構わずやりたいことに集中している方が、「注意の脳」の働きが弱まり、気にならなくなってきます。
趣味の時間や、ストレッチ・ウォーキングといった無理のない運動を、日々の生活に少しずつ取り入れていきましょう。

その3 豊富な音のある環境をつくる
しーんとした静かな環境にいると、耳鳴りの音が気になりやすく、「注意の脳」の働きが増してしまいます。音響療法といって、家にいるときは、長時間流れていても不快にならない、川のせせらぎや波の音といった自然音を、生活の邪魔にならない程度に小さい音量で流しておくと、耳鳴りに気をとられにくくなります。

なお、騒音や爆音は老若男女問わず難聴の大きな要因になります。近年は特に、ヘッドホンで大音量の音楽等を聴くことで発症する「ヘッドホン難聴」が世界的な問題に。WHOも「世界の若者(12歳~35歳)の約半数にあたる11億人が難聴のリスクにある」と警鐘を鳴らしています。

痛みもなく、じわじわと進行するため、初期は自分でも気づきにくい点に注意が必要です。「ヘッドホンやイヤホンを外したあとに耳鳴りがする」「耳が詰まった感じがする」「会話をよく聞き返すようになった」といった症状は、耳からのSOSかもしれません。ヘッドホンやイヤホンをするときには、外の音や会話が聞こえる程度の音量に調節しましょう。


補聴器使用は必ず、「専門のリハビリテーション」とセットで

補聴器をつけた笑顔の女性

補聴器は高齢者が使うもの、と思われがちですが、聴力には個人差があります。また、先に挙げた突発性難聴はむしろ若い世代に目立つことから、働き盛り世代でも難聴改善の目的で補聴器を使う可能性は十分にあります。ここでぜひ覚えておいていただきたいのは「補聴器はメガネと同じにあらず」。つまり、装着しただけでは十分聞こえるようにならないのです。

難聴になると、耳も脳も音の刺激が弱い環境におかれます。その状態で補聴器をただ装着しただけでは、入ってくる音が過剰な刺激となり、うるさく苦痛に感じられて、“そこそこ”聞こえる程度に補聴器の音量調整をしてしまいがちなのです。これではせっかく補聴器をつけても「大して変わらない」「少しましな程度」にとどまり、満足のいく聞こえ方が得られません。

補聴器を徐々に使用して、少しずつ慣れていき、適切な使い方をすることではじめて補聴器による難聴改善が見られます。このような補聴器による「聴覚リハビリテーション」で生活改善を目指していきましょう。適切なリハビリテーションは、補聴器を用いた音響療法(補聴器療法)を行っている医療機関で受けられます。


まとめ


難聴を起こす病気、血管病変などの治療を要する疾患もありますが、そうした病気に該当しない場合は、「また鳴っている……」と気にすればするほど、脳は敏感になり、耳鳴りを大きくしてしまいます。こうした悪循環は、耳鳴りを意識しすぎずに、上手に受け流すことがポイントとなります。

まずは耳鼻咽喉科で自身の聞こえの状態を確認し、病気の治療が必要かどうかをチェックしましょう。治療が不要な場合は、日々の生活では好きなことに没頭したり、心地よい環境音を流したりして、脳が耳鳴りを「監視」しない時間を作ることが大切です。

加齢による聞こえの変化は誰にでも訪れます。耳鳴りを完全に消そうと躍起になるのではなく、「生活に支障がなければよし」とおおらかに構えることが、結果として改善への近道となります。

 

監修者プロフィール

清益 功浩 | Takahiro Kiyomasu

小児科医、アレルギー専門医、産業医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院小児科・アレルギー科で診療に従事。論文・学会報告多数。診察室外で多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。


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