日本テレビ放送網
2025年12月14日 14:30

耳の不自由な親のもとに生まれた“聞こえる子ども”を指す『CODA(コーダ)』という言葉。「聞こえない家族に聞こえる人たちの世界をたくさん伝えたい」こんな思いを胸に、CODAとして家族で自分だけが聞こえる中で生活する一人の中学生の挑戦を追いました。
■耳の不自由なお母さんとの買い物

神奈川県に住む志村優妃(ゆうひ)さん。
この日は親子でショッピング。
優妃さんのお母さんは耳が聞こえません。
優妃さんが手話で通訳をして、お母さんと店員さんの会話をつないでいました。
優妃さん
「このオーバーオールを試着したいです」
店員
「もちろんです。SサイズとMサイズでご用意してます」
レジでも…。
優妃さん
「(この服の)サイズは?」
店員
「フリーサイズです」
袋が必要かどうかや店のアプリなどについても、お母さんに手話で通訳している優妃さん。
耳の不自由なお母さんを支えながら、一緒に買い物をします。

お母さん(優妃さんが手話で通訳)
「聞きたくても(店が)混んでると聞けないけど、優妃がいると情報がいっぱい聞ける」
優妃さんは、私たちへの通訳もしてくれました。
■家族で“私だけが聞こえる” CODAとして生きる中学生の日常

優妃さんの家族は、両親や祖父母、お兄さんも、先天性の難聴のため耳が聞こえません。
耳の聞こえない親を持つ、聞こえる子どものことをCODA(コーダ)と言います。
◇
CODA(コーダ)として生きる優妃さんは、4月に中学生になったばかり。
実は、将来、進行性の難聴で耳が聞こえなくなる可能性があるそうです。
そんな優妃さん家族の日常は…
優妃さん
「(家でテレビは)ほぼ音はつけてない。習慣がついちゃっているっていうか音が消えていてもそんなに違和感がない」

優妃さん
「音が聞こえない人は、これを使って光で知らせてくれる」
インターホンが鳴っても音では気がつかないため、光の点滅で人が来たことを知らせる機器を使っています。
お母さん
「『お風呂が沸きました』のアナウンスとかはわからないので、お風呂沸いたよって彼女(優妃)が教えてくれる。冷蔵庫のドアが開いたままの時も、音が鳴ってるよと彼女(優妃)が教えてくれる」
優妃さんが日常生活でも助けてくれるといいます。
車の運転をするときも。
お母さんは補聴器をつけて運転していますが、救急車のサイレンの音に先に気付いたのは、聞こえる優妃さん。
すぐにお母さんに、後ろから救急車が来ていることを知らせていました。
■「1人だけ聞こえるから、寂しい思いをさせないためにどうするか」

志村家の第二子として誕生した優妃さん。
優妃さんが生まれて2日目。両親はあることに気づき、不安を覚えたといいます。
お母さん
「(優妃さんが生まれて2日目のときに)反応があったんですよ。ドアにびっくりしていたりとか、お兄ちゃんのときは全く違って。(お兄ちゃんのときは)静かに寝ていて音に反応しない」
「(優妃は)もしかしたら聞こえているのかなって。すごく不安が先立ちました。家族みんなろう者なのに1人だけ聞こえるから、寂しい思いをさせないためにどうするか」
◇
優妃さんが手話を使えるようになったのは2歳ごろ。聞こえないことが当たり前の家庭で元気に育ちました。
幼いころから、兄のこともフォロー。しかし、伝えたいことが伝わらず泣きじゃくったこともありました。
優妃さん
「『りんご』とか『いちご』とか口パクが似てるものがあったりするから、勘違いされちゃったりすることがたまにあった」
■聞こえる世界と家族をつなぎたい

保育園に通い始め、徐々に言葉を覚えていきました。
優妃さん
「自分は聞こえるんだなっていうことを実感したのは小学1年生です。しゃべる機会はほぼ学校でしかない」
お母さん
「何かトラブルが起きた時に、お友達のご両親とのコミュニケーションには苦労がありました。」
優妃さんもまた、自分だけが聞こえる分、悔しい思いをしたことも。
優妃さん
「水族館に行ったとき、私たち全員耳が聞こえないと思った店員さんが、家族の悪口を言ってるのが聞こえてしまって」
そのときの思いを、去年出場したスピーチコンテストでこう話していました。

優妃さん(当時小学6年生)
「『あの家族、変だよね。声出さないで話してる』という声が私の耳に聞こえてしまいました。
私はこう言いました。『私聞こえるんです。家族の悪口言わないで』と、伝えました。
そのとき私は、とても悔しい気持ちになりました。
私は、生まれつきイヤホンやヘッドホンなどをつけると急に耳が聞こえなくなる可能性があるということを母から聞きました。
自分はいま、聞こえるうちに 母・父・兄・に通訳をしてあげたりとか、聞こえる人たちの世界をたくさん教えてあげたりしたいです」
■仲良し兄妹の新たな挑戦

そんな優妃さんが力を入れているのがダンスです。自宅には賞状や盾がずらりと並べられています。
始めたきっかけは兄の優斗(ゆうと)さん。耳が聞こえなくても振動を感じてダンスに励む兄に憧れ、4歳の頃から習い始めました。
優妃さん
「(兄の)その姿がかっこいいな、自分も挑戦してみたいなって思って」
お母さん(優妃さんが手話で通訳)
「ダンスを踊っているところを見てすごくうれしいし、お兄ちゃんも優妃もダンスやってるから、見て楽しいって思える」
小さいころからずっと仲が良い兄妹。
優妃さんとダンスができることに兄の優斗(ゆうと)さんは、「兄妹でダンスを一緒にやれるのがうれしかった」と話していました。
◇
2人は新たなことに挑戦しています。

デフリンピックを前に手話で町を盛り上げるイベントで、初めて和太鼓の演奏に合わせ、ダンスを披露することになったのです。
和太鼓の奏者や他のパフォーマーも、耳が聞こえません。練習中のやりとりは、もちろん手話。兄は太鼓の振動に合わせ、優妃さんは音と兄の動きに合わせて踊りをそろえます。

本番が約2週間後にせまった10月。初めて全体の動きを確認しました。
演奏の音が聞こえているのは優妃さんだけ。
優妃さんは仕上がりについて、「(完成度は)100です。あとはタイミングのずれとか、細かい振り付けを直せたらいいなと」と話してくれました。
■聞こえても聞こえなくても…

11月。ついにイベント『手話のまち 東京国際ろう芸術祭』当日を迎えました。
会場では、手話で楽しむ海外の最新デジタル技術の体験やマルシェが開かれるなど、手話を使う人たちの姿が多く見られました。
優妃さんは、友達のお母さんに髪の毛をセットしてもらい気合もバッチリ。いよいよ、優妃さんのステージです。
和太鼓の演奏から始まり、ダンスとのコラボレーション。兄妹の息はぴったりです。
そして、和太鼓の音がやむ場面では…

無音の中で2人が躍動的なダンスパフォーマンスを繰り広げます。
観客と和太鼓の奏者、他のパフォーマーも見守るなか、お兄さんと同じ音のない世界でのダンス。聞こえても聞こえなくても、心を一つに渾身のパフォーマンスを見せます。
ステージは大盛況の中、無事に終了。会場は、拍手の音と音の代わりに手を動かす手話の拍手に包まれていました。
■「聞こえる人たちだけじゃなく、ろう者もダンスできるんだ」

イベントに訪れた家族は。
ステージを見た人(手話で)
「2人でダンスしてる時に、すごいタイミングピッタリですごいと思いました。聞こえる人たちだけじゃなくてろう者もダンスできるんだなって」
お母さんと優妃さんは。
お母さん
「優斗と優妃もすごい笑顔で、それを見られただけでも最高にうれしい」
優妃さん
「めっちゃ楽しかったです。いろんな人からよかったって言ってもらえて、踊ってよかったなって」
聞こえる世界と家族をつなぎたい。優妃さんの挑戦は続きます。
(12月3日『news every.』より)
最終更新日:2025年12月14日 20:48
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