聴覚障害者約2000万人の通訳ツールをAIで、中国バイドゥが双方向の手話技術

聴覚障害者約2000万人の通訳ツールをAIで、中国バイドゥが双方向の手話技術

朱 真明 匠新  齋藤 慶太 匠新  説田 莉子 匠新
2025.04.11

中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)は、AI(人工知能)によるリアルタイム認識と翻訳技術を活用し、手話を知らない人でも手話を使う人とスムーズに会話できる仕組みを実現している。同社は天津理工大学および聴覚障害者向けのバリアフリーコミュニケーションツールを開発する中国企業の鯨言科技(ジンイェン)と共同開発している。

百度(バイドゥ)が成果を発表した「双方向手話翻訳機」

百度(バイドゥ)が成果を発表した「双方向手話翻訳機」(2025年2月20日、画像はバイドゥのニュースリリースから)


97%の聴覚障害者が手話通訳不足で診療に困難

 中国で実施された第2回全国障害者サンプル調査によれば、中国には約2004万人の聴覚障害者が存在し、世界で最も聴覚障害者の多い国である。しかし、オンライン・オフラインを問わず、聴覚障害者を支援するサービスや設備はほとんど整備されていないのが現状だ。

 また、中国語の手話通訳を専門職として従事する人口規模は1000人未満で、約97%の聴覚障害者が手話通訳の不足により医療機関での診療で困難を抱えているとされる。

 手話は、多くの聴覚障害者にとって第1言語である。しかし、手話は視覚を使って意味を伝える言語であり、健常者が使う音声言語(話し言葉)とは根本的に異なる。この違いにより、聴覚障害者は視覚的な情報を中心に物事を考えることが多く、音声を使って考える健常者とは異なる思考の仕方をする。そのため、聴覚障害者は、音声言語を理解するのが難しい場合が少なくない。


1万1000以上の手話動作を滑らかに表現


 バイドゥは近年、聴覚障害者のコミュニケーションの課題を解決するため、AI(人工知能)手話技術の開発に力を入れてきた。同社は2022年、「AI手話プラットフォーム」を発表。オンライン向けには「AI手話デジタルヒューマン」、オフライン向けには「双方向手話翻訳機」を開発している。

 手話動作の専門性に関して、バイドゥは中国国内で関連機関と研究を続けてきた。百度智能雲(バイドゥAIクラウド)傘下のデジタルヒューマン製品「曦霊(シーリン)」の開発チームは、手話言語学の専門家、特別支援教育の専門家、天津理工大学聴覚障害者学院などと連携し、AI応用の手話アノテーション規範(手話をAIで認識・翻訳するために定められた標準的なルールや指針)を策定した。

 また、手話と中国語の翻訳を支援するため、収集・整理された大規模な語彙データセットを構築し、AIモデルが聴覚障害者の習慣に適した手話を生成できるようにしている。

 バイドゥのデジタルヒューマンは、4Dスキャン技術を活用してトレーニングが実施されており、リアルで生き生きとした表情を再現することが可能だ。また、動作融合アルゴリズムを採用することで、手話の語彙や文法の基本的な特徴を紹介する『国家通用手話辞典』に収録された1万1000以上の手話動作を人間のように滑らかに表現できるようになっている。


リンク先は日経XTECHというサイトの記事になります。


 

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