若い世代に広がる手話の輪  「鳥取県手話言語条例」制定から10年

若い世代に広がる手話の輪  「鳥取県手話言語条例」制定から10年

「手話言語条例」って聞いたことありますか?

2013年10月、鳥取県が全国に先駆けて制定した“手話を言語として位置づける”条例です。

条例が制定されてから授業の科目として、「手話言語」を導入した高校では、生徒たちがコミュニケーションの大切さを学ぶ機会にもなっています。

「手話言語」を学ぶ高校生
「県立岩美高校」の2年生の授業風景。生徒たちが学んでいるのは「手話言語」です。

授業は週に2コマ、合計100分。

国語や英語と同じように、継続して学びを重ねています。

なぜ高校の授業で「手話言語」?
「手話言語」の授業が始まったのは6年前の2017年。

希望する進路に合わせて、2年生からコースに分かれてより専門的な学びを重ねるこの高校で、福祉を学ぶ生徒たちに耳が不自由な人の気持ちを理解してもらおうと、県内で初めて導入されました。

日常で使える“より実践的な手話”を
日常で使える“より実践的な手話言語”を身につけてもらおうと、授業には耳が不自由で、手話言語を母語としている講師も参加しています。

授業が始まるおよそ1時間前、講師と手話通訳者を交えた入念な打ち合わせが行われていました。

この日の授業のテーマは、「手話で紹介する都道府県」。

担当教諭 「都道府県が47だから」

手話通訳者 「先々週、半分終わったんでしたっけ」

担当教諭 「でも、もう1回やってみてもよいかな」

講師の前島さん 「手話検定用の表現だったら こっちの方がよいかも」

積極的な参加が習得への近道!
生徒たち 「これから手話言語基礎1を始めます。よろしくお願いします」。

生徒たちは、カニやスイカ、それにゲゲゲの鬼太郎など、鳥取の名物を手話で表現する方法を学びます。

授業の最後には、ペアになって各地の名物を手話で紹介するため、試行錯誤をしながら会話を作り上げていきます。

気持ちを伝えるため、自分で考えるのが“上達のカギ”です。

「ちょっと表現が難しいですが、指を使って会話することはとても楽しいです」

「最初は難しそうで、普段は使うことがないと思っていましたが、勉強してみたら思ったより簡単でした。困ってる人がいたら手話で話せたらいいと思います」

授業を重ねることで上達する生徒たちを見守る講師は。

前島奈美さん
「手話を学ぶことによって、積極性や自分から行動する力が見えてくる。人間性も変わってくる部分もあるかなと思います」

学びをきっかけに生徒は
授業を通して、手話を大切なコミュニケーションの手段と感じ、学び続けることを決意した生徒も。

岩美高校3年の石橋結我さん。
去年の授業で手話に初めて触れましたが、学んでいく中で、相手に気持ちを伝えるために何が必要なのか気づきました。

石橋結我さん
「高齢者や障害がある人は耳が聞こえなかったり声が出せなかったりして、手話が必要だと思うので、相手と目線をあわせたり、相手の口の形を見たりなどを意識してやっています」

石橋さんは去年、地元の小学校を訪問し、授業で学んだ手話を通して児童たちと交流しました。

初めて会う相手に、お互い緊張がありましたが、手と体を動かして、身ぶり手ぶりで気持ちを伝えているうちに、心の距離も近づき、自然と笑顔がこぼれていたと振り返ります。

「やっぱり言葉だけじゃ伝わらないものがありましたが、児童たちがだんだんと手話も一緒にやってくれて、子供と大人じゃなくて友達どうしみたいな関係になって、 とても話しやすくなりました」。

手話を使うことで、子どもたちとの距離が大きく近づき、ことばを交わさなくても気持ちを伝えられる手話の力を実感。

将来、保育士を目指す石橋さんは、子どもや保護者など多くの人と心を通わせるため、これからも学んでいきたいと考えています。

石橋結我さん
「言葉を話せなくて困っている人がいたら、手話で話すことで、その人を助けることができるかもしれないので、手話は続けていきたいと思っています」

県内での浸透の歩み 当事者の受け止めは
鳥取県聴覚障害者協会の石橋大吾 事務局長です。

耳が聞こえない石橋さんは、手話言語条例が制定される前から、手話の普及に向けた取り組みを中心になって進めてきました。

条例が制定されて以降、最も感じた効果は“意識”の変化だと話します。

石橋大吾 事務局長
「制定前は聞こえる人や社会に対して迷惑をかけてはいけないということで、非常に我慢をしていて、自分らしさを出せなかったという状況でした。表向きは笑顔ですが、実際、心はもどかしかった。堂々と私は聞こえない ろうあ者であることを言えるように、社会に求めることができるようになったのは、条例制定の効果だと思っています」

訴える“教育”の重要性
手話言語や聴覚障害への理解が進み、教育現場での取り組みなどから若い世代への浸透も進んできましたが、石橋さんは「広がりは まだ限定的だ」と指摘しています。

そのうえで訴えているのは、より早い段階から手話に触れ、さらに身近に感じてもらうための取り組みの重要性です。

石橋大吾 事務局長
「条例制定から10年間、あくまでもここはホップの段階で、次の10年間がステップの段階だと思っています。小さいうちから手話言語を習得していくと、大人になったときには当たり前に手話で会話をすることが可能になる。さらに そのあとはジャンプの段階で、いつでもどこでも誰でも話もできる。それが一番よい社会で、そういった環境を作りたいと思っています」


リンク先はNHKというサイトの記事になります。
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