見えなくても聞こえなくても楽しめる上映会…指の形や手の動きで感じ取る「触手話」で鑑賞

見えなくても聞こえなくても楽しめる上映会…指の形や手の動きで感じ取る「触手話」で鑑賞

視覚や聴覚に障害のある人にも映画館で映画を楽しんでもらおうと支援の動きが広がっている。

長崎県内では一般の人とみる「ユニバーサル上映会」が6~7月に計8回行われ、約2500人が鑑賞した。

企画した視覚と聴覚の双方に障害がある盲ろう者団体は「障害の有無にかかわらず、同じ空間で同じ時間を共有できる機会は大切」と環境の広がりを期待している。(勢島康士朗)

6月中旬、長崎市の市民会館文化ホール。映画上映中、盲ろう者の男性と支援者の女性がスクリーンに対して横向きに座って向き合い、手を重ねていた。

手のひらで相手の手話に触れ、指の形や手の動きを感じ取って言葉を理解する「 触手話しょくしゅわ 」。盲ろう者がコミュニケーションを取る手段の一つだ。

上映されたのは、盲ろう者で世界初の大学教授になった福島智さん(60)と母・令子さんの半生を描いた「桜色の風が咲く」(2022年公開)。

支援者の女性3人は上映中、交代しながら盲ろう者の荒木秀信さん(62)(長崎市)の手を取り、セリフや内容を触手話で伝えた。

荒木さんは上映後、支援者に感謝を伝え、「同じ境遇の盲ろう者の物語を知って勇気づけられた」と手話で感想を語った。

荒木さんは生まれつきの難聴に加え、5年ほど前から目が見えない。

「劇場の空気感を味わいながら楽しめた。映画をみる機会はほとんどなく、うれしかった」と満足していた。

有意義な機会に
上映会は、県内の盲ろう者や支援者らでつくる団体「長崎盲ろう者友の会・あかり」と県映画センターでつくる実行委員会が開いた。

上映では視覚障害者を意識して場面や情景を説明する音声ガイド、聴覚障害者に配慮して日本語字幕などが付けられた。

ほかに、シナリオや場面解説を点字データ化した冊子も準備した。

会場には、触手話ができるスペースも設けた。

支援者の女性は「会場内は暗くなるのでスムーズに交代できるか心配だったが、大丈夫だった。雰囲気を壊さないよう、うまく伝えられた」と安堵の表情を見せた。

同会会長で実行委員長を務めた盲ろう者の古川幸枝さん(54)は、生まれつき弱視で耳が聞こえず、35歳で視力を失った。

映画は、人から話を聞いて想像するしかない世界だったが、「多くの人にとって障害への理解を深める有意義な機会になった」と語る。

リンク先は讀賣新聞オンラインというサイトの記事になります。
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