闘病の子供癒やすファシリティードッグ、関西で「就職活動」が難航 認知度向上が課題

闘病の子供癒やすファシリティードッグ、関西で「就職活動」が難航 認知度向上が課題

2025/5/22 10:39
木ノ下 めぐみ

スタッフを入院中の子供に見立て、病床での寄り添いを実演するファシリティ―ドッグのティンカ=大阪市中央区

スタッフを入院中の子供に見立て、病床での寄り添いを実演するファシリティ―ドッグのティンカ=大阪市中央区

病院で入院する子供の精神的支えとなるよう専門的な訓練を受けたイヌ「ファシリティードッグ」が活躍の場を探している。日本補助犬協会(横浜市)がイヌの「勤務先」を急募しているが、関西では実績がなく「就職活動」は難航。ファシリティードッグ以外の「補助犬」も含めて認知度向上が課題で、関係者は「病気と闘う子供たちに寄り添えるファシリティードッグについて理解を広げたい」と願っている。

ファシリティードッグは、医療施設や特別支援学級など特定の施設に常駐して活動するために専門的に育成されたイヌ。主に子供を対象に、検査や手術の際の付き添いやベッドでの添い寝をするほか、子供と触れ合ったり遊んだりする。

同協会は大阪府泉佐野市の医療施設の協力を得て、メスのラブラドルレトリバー「ティンカ」(3歳)を1年間にわたり育成。今春に訓練を終えたが、働き口が見つからないという。訓練を担当した松永玲奈さん(28)は「ティンカは人間でいう20代ぐらいで一番調子が良いとき。少しでも早く活躍できる場を見つけてやりたい」と焦りを募らせる。

同協会の朴善子代表理事(61)によると、ファシリティードッグは関東の一部の医療機関などで活躍。関西では兵庫県立こども病院(神戸市)が導入を目指している。

ただ、「衛生面が心配」などと慎重な医療機関は多い。病床にイヌが入る際、医療用チューブなどに足が引っかかるのではないかと懸念する声もある。同協会によると「病床に入る際は、前足をたたんで自分から動かないよう訓練されている」という。

朴さんは「苦しい検査を嫌がる子供がファシリティードッグの寄り添いで検査を乗り切れたり、つらいリハビリを頑張れたりするなど好影響は数知れない」と話す。

また、ファシリティードッグだけでなく、視覚障害者を誘導する盲導犬など「補助犬」についても「認知度や実働頭数が十分とはいいがたい」と関係者は口をそろえる。

世界の盲導犬実働頭数


補助犬は視覚障害者を誘導する盲導犬▽身体障害者の動作を助ける介助犬▽聴覚が不自由な人に音を知らせる聴導犬―の総称で、厚生労働省によると全国で盲導犬768頭、介助犬57頭、聴導犬51頭が活動する(4月時点)。一方、日本盲導犬協会が公表する盲導犬の潜在希望者は約3千人。朴さんは「視覚障害者以上に多い肢体不自由者の数から考えても補助犬希望者は全国で約1万人以上と推計される」と分析する。

また、日本補助犬協会が国際盲導犬連盟(IGDF)の2018(平成30)年度の資料を基に、盲導犬の普及率を諸外国と比較したデータでは、人口1万人あたりの実働頭数(概算値)は英国の74頭に対し日本は7頭にとどまるなど、欧米に比べて普及が遅れている。

自身も視覚障害で盲導犬と暮らす日本補助犬協会の青木保潔理事(62)は平成14年5月の「身体障害者補助犬法」の成立から20年以上を経た現在も「盲導犬以外の補助犬はあまり知られておらず、小型犬も多い聴導犬はペットと誤解されがちだ」と語る。

また、都道府県の障害福祉担当窓口で行う補助犬利用の手続きも、地域によって応募資格にばらつきがあり、普及の障壁になっているようだ。大阪府の場合、盲導犬は視覚障がい1級▽介助犬は肢体障がい1級または2級▽聴導犬は聴覚障がい2級-が応募要件。朴さんは「補助犬を必要としていても障害の重さによって諦めざるを得ない人もいる」と指摘する。

同協会は、補助犬やファシリティードッグの認知度向上に向け、今春、大阪府東大阪市の大阪事務所を「関西支部」へと昇格させ、常駐訓練士を増員。関西での活動により力を入れる方針だ。

6月には活動資金調達に向けクラウドファンディングも始める。朴さんは「心のバリアフリーを広げ、補助犬が活躍できる社会の実現に向けて活動を推進していく」と語る。(木ノ下めぐみ)


リンク先は産経新聞というサイトの記事になります。


 

ブログに戻る

コメントを残す