障害のある人を支え、居場所をつくる 「しあわせのみみ」運営の久保知佐さん

障害のある人を支え、居場所をつくる 「しあわせのみみ」運営の久保知佐さん

2025/10/30 07:30
北村 博子

手話でコミュニケーションをとる久保知佐さん。「伝わったかどうかまで意識する」と話す=大阪市城東区(渡辺大樹撮影)

手話でコミュニケーションをとる久保知佐さん。「伝わったかどうかまで意識する」と話す=大阪市城東区(渡辺大樹撮影)


「利用者さんとの会話ではただ伝えるだけでなく、伝わったかどうかまで意識するようにしています」

令和5年に就労継続支援B型事業所「しあわせのみみ」(大阪市城東区)を立ち上げ、夫婦で営む久保知佐さん(31)は、普段から心がけていることをこう話す。夫も聴覚障害の当事者だ。

大正時代の古民家を改修した事業所は畳敷きで家庭的な雰囲気。聴覚障害や精神障害、発達障害のある人たちを受け入れる。会社をリタイアして通う人が多く「年齢層は高め」という。

利用者らの仕事は箱の組み立てや書類の封入、土産物の加工など内職が中心。お昼時は全員でテーブルを囲み、和やかなランチタイムを過ごしている。

「実は両親もここを利用しているんです」

久保さんは聴覚障害のある両親のもとに生まれ育ち、子供のころに手話を身につけた。久保さんによると聴覚障害のある人はあいまいな表現が理解できず白黒はっきりしているため、誤解を生じたりトラブルになったりすることも多いという。一般企業で苦労して働く父親の姿も見ており、「この事業所が高齢になっても社会とつながれる聴覚障害者らの居場所になれば」と考える。

大阪市出身の久保さんは高校卒業後、4年間で福祉が学べる大阪保健福祉専門学校(同市淀川区)の社会福祉科へ進学。精神科病院での実習では、患者のリアルやプロの仕事ぶり、また精神障害者らとの接し方が勉強になったといい、「偏見がなくなったのもこの経験が大きい」と振り返る。

「精神的なしんどさを抱える方との関わりがなく、接しにくいという先入観があった。でも実際に話をしてみると、私たちと何ら変わらない普通の人たちだった」と明かす。在学中に国家試験を受け、社会福祉士と精神保健福祉士の資格も取得した。


「しあわせのみみ」の1階をカフェにする計画もある=大阪市城東区(渡辺大樹撮影)

「しあわせのみみ」の1階をカフェにする計画もある=大阪市城東区(渡辺大樹撮影)


卒業後は福祉事業所を経営する法人に就職。大阪府熊取町の聴覚障害者入所施設に配属になり、職場の同僚だった現在の夫と結婚した。

仕事への充実感を感じていたが子供が生まれると状況は一変。熱が出るたびに保育園から呼び出しがあり、職場の仲間に気をつかうようになった。

一方で、夫も久保さんの子育ての苦悩・苦労を見ていて支えたいという思いが強くなった。仕事も利用者や家族に寄り添った支援をしたいと考えるようになったという。

こうしたことがきっかけとなり独立。営業から利用者のサポートまで業務は大幅に増えたうえ、子供も4人になったが「精神的には楽になった」とほほ笑む。

今後は職員たちが子育てしやすい環境づくりに取り組むほか、1階フロアを障害者やご近所さんが触れ合えるカフェに改装しようと計画している。

「今の自分があるのは幼いころから支えてくれた周囲の方々のおかげ。これからは自分が支える側になれたらいいですね」(北村博子)


社会福祉士や精神保健福祉士になるには

福祉系の大学や短大、専門学校で指定科目を履修し、国家試験に合格するのが基本的なルート。精神保健福祉士や社会福祉士の資格があると福祉関係の就職に有利。知識に基づいたきめ細かなサポートが福祉施設利用者の大きな助けとなる。


リンク先は産経新聞というサイトの記事になります。


 

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