難聴を伴わない耳鳴りは病気かも

難聴を伴わない耳鳴りは病気かも

今回は、脳と耳鳴りについてお話します。

音は耳から聴神経に伝わり脳に届くことで、私たちは音を認識することができます。

音を伝えるのは耳で、音を感じるのは神経と脳です。耳鳴りや難聴は耳の障害以外に脳や神経の障害でも起こります。

ご高齢になると耳鳴りを訴える方が多くなりますが、耳鳴りは特に病気ではありません。

私たちの周囲にはたくさんの音がありますが、脳はそれらの音を、「聞くべき(認識すべき)音」と「無視すべき音」に振り分けています。

自動的に雑音を抑え、認識すべき音だけを聞くように調節してくれています。

人混みの中で会話ができるのは、脳のおかげなのです。

時々、夜間など静かになると、なんとなく「キーン」「ピー」といったような耳鳴りのような音を感じることがありますが、普段は脳がその音を無視してくれているのです。

耳鳴りの原因として、一番多いのは難聴によるものです。難聴になると、音を聞き取ろうとして脳が音への感度を上げます。

音に対して脳が過敏に反応してしまい、今まで無視されていた音が耳鳴りとして聞こえるようになるのです。

実際に耳鳴りで悩む人の8割は難聴の症状があります。

高齢になると難聴の方が増えますが、この老化による難聴は「老人性難聴」で、それに伴って耳鳴りを訴える方も多くなります。両耳に「キーン」という高い耳鳴りを生じるのが特徴です。

また耳の病気として、メニエール病や中耳炎などでも耳鳴りが生じますが、難聴以外にめまいや耳閉感などを伴います。

耳鳴りと関連がある脳の病気では、「硬膜動静脈瘻(こうまくどうじょうみゃくろう)」というまれな病気があります。

硬膜は頭蓋骨と脳の間にある膜の1つで脳を保護しています。

硬膜には、硬膜を栄養している動脈と脳から血液を集めて心臓に返すための太いパイプのような静脈が存在し、健常人では、動脈と静脈は別々に走行しています。

しかしながら、硬膜動静脈瘻では、動脈がパイプ状の太い静脈に直接つながって、動脈血が静脈内に勢いよく流入します。

静脈内に流入された血液は、次第に脳内に逆流し、脳が腫れあがり、脳出血を引き起こしてしまうことがあります。

この病気が耳の近傍で生じると、心拍に合わせて川の水が流れるような「ザー、ザー」という耳鳴りが生じることがあります。

聴診器を耳の後ろに当てると第三者でも聞くことができます。

治療は、動脈と静脈のつながっている穴(瘻孔)を閉塞します。

このように耳鳴りには、老化によるものと病気が原因で生じるものがありますので、難聴を伴わない耳鳴りだけの場合や、突然の耳鳴り、めまい、頭痛などを伴う場合は、耳鼻科や脳神経外科を受診しましょう。

(県立医科大学 脳神経外科講師 八子理恵)

リンク先はiZaというサイトの記事になります。
ブログに戻る

コメントを残す