騒音下や早口が苦手 ~聞き取り困難症(医誠会国際総合病院 阪本浩一・診療副院長)~

騒音下や早口が苦手 ~聞き取り困難症(医誠会国際総合病院 阪本浩一・診療副院長)~

 にぎやかな場所では話が聞き取れない、複数人の会話になると内容が急に理解できなくなる―。こうした症状があれば、聞き取り困難症/聴覚情報処理障害(LiD/APD)の可能性がある。

 通常の聴力検査では異常がなく、「気のせい」と見逃されがちだったが、2024年3月に「診断と支援の手引き」が公表され、適切な支援につながりやすくなると期待されている。

LiD/APD「診断と支援の手引き」が2024年に公表された

「診断と支援の手引き」が2024年に公表された


 ◇就職し初めて自覚

 LiD/APDの特徴は、静かな場面や一対一の対話では問題ないが、「騒音下」「早口」「電話対応」など、特定の条件下では音声を言葉として聞き取りにくい点だ。聴覚情報の処理の段階で何らかのトラブルが生じると考えられている。

 手引きの開発研究チーム代表を務めた大阪公立大特任教授で医誠会国際総合病院(大阪市北区)の阪本浩一診療副院長は「欧米では小児の聴覚障害の一つとしてAPDの研究が進んでいます。日本には明確な診断基準がなかったため、就職後に電話対応がうまくできない、上司の指示が理解できないなど、仕事に支障を来して初めて症状を自覚する人が多かった」と話す。

 主な患者層は20~30代の若い世代だが、実は幼少期から困難を抱えていた人は多い。発達障害やその可能性がある場合も多いが、発達障害でなくてもLiD/APDである人は多く存在する。「子どもは違和感を自覚できないケースがほとんど。早期に診断され、学童期から必要な支援を受けられれば、学習面やコミュニケーションの困難が軽減できるでしょう」


 ◇耳鼻科で聴力検査を

 診断で最も重要なのは「聞き取り困難の自覚症状がある」「末梢(まっしょう)性の聴覚障害がない」の2点だ。診断が付けば、困難を感じる原因が分かったとの安心感が得られる。必要に応じて学校や職場に診断書を提示し配慮を求めることができ、補聴援助システムの使用などの環境調整や、周囲の理解にもつなげやすくなる。

 「『静かな場所に移動して話す』『名前を呼びかけてから会話を始める』のも有効な支援。まずは耳鼻科で聴力検査を受けましょう。この疾患が広く認知され、症状による生きづらさを持つ人々に寛容な社会になることを切に願います」(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

(2025/09/22 05:00)


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