鼻に指をあてる女性

「鼻うがいはやめて」耳鼻科医が警告、難聴や中耳炎になる可能性

2026年5月2日 17時15分
PRESIDENT Online
木村 至信
耳鼻咽喉科医

鼻が詰まっているときに、やってはいけないこととは何か。耳鼻咽喉科医の木村至信さんは「鼻は粘膜があり、荒れやすく炎症を起こしやすい部位だ。強くかんだり、安易に鼻うがいをしたりすると、かえって症状が悪化する。思わぬ病気につながることもある」という――。(第2回)

※本稿は、木村至信『1万人の鼻の悩みを解決した医師が教える 鼻炎のリセット法』(アスコム)の一部を再編集したものです。

鼻に指をあてる女性(写真=iStock.com/liza5450)

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/liza5450

 

「鼻の入り口」は炎症を起こしやすい

本稿では、毎日の生活の中でできる、鼻炎に対応する知恵を記します。習慣を変えるだけで、鼻の症状を抑えることがある程度はできるはずです。

まず、エチケットの話になりますが、人前に出る前には、歯磨きをするのと同じように、ちゃんと鼻をかむことを習慣にしていただければと思います。

とはいえ、花粉症や風邪のとき、慢性的なアレルギー性鼻炎の方は鼻をたびたびかむことになりますよね。鼻をかんでから家を出たとしても、すぐまたかむことになるでしょう。

何度もかんでいると、鼻の入り口が痛むことがあるかもしれません。鼻の入り口は「鼻前庭(びぜんてい)」と呼ばれています。鼻毛が生えているところと、粘膜との境目あたりです。外から侵入する異物を止めたり、体内から異物を押し出したりする場所なので、荒れやすく、よく炎症を起こします。

炎症が起きると、鼻前庭にかさぶたのようなものができます。「鼻前庭湿疹」というのですが、その炎症が進むと「鼻前庭炎」になります。これが、鼻の脇の痛みの原因です。

 

鼻をかむときは「片側ずつ、そっと」

いったん鼻前庭炎になると、1カ月以上かさぶたが残り、鼻くそが溜まることもあります。しかも、鼻前庭にできたかさぶたは、取ってもまたできるという悪循環になりがちです。ですが、鼻くそやかさぶたを無理にはがしてはいけません。

鼻前庭炎は、抗生物質の軟膏で治ります。ただし、加湿器やマスクなどを利用して、鼻の中を乾燥させないようにすることが必要です。

鼻前庭炎を予防するためにも、鼻前庭を傷めないように、鼻をかむときには片側ずつ、そっとかみましょう。周囲の人に聞こえる音がするほど、一気に強い圧をかけるのはいけません。思い切りかむのは気持ちがいいのですが、鼻前庭だけでなく、鼻の粘膜にも耳にも悪影響を及ぼします。

特に「アレルギー性鼻炎」では粘膜がもろくなっているので、あまり強いかみ方はしないようにしましょう。

強くかむと、出血しやすくなります。ちなみに、たびたび鼻をかむようなときには、少し高価になりますが、保湿タイプのしっとりしたティッシュペーパーがおすすめです。鼻の表面への刺激を軽減するので、少しでも不快感を減らすことができるでしょう。

 

「温かいタオル」で鼻づまりが解消する

小さなお子さんの場合、まずは親御さんがお子さんに、イラスト(図表1)にあるように「鼻をちゃんとかむ」習慣をつけさせることが大切です。

図表1.鼻のかみ方(出典=『1万人の鼻の悩みを解決した医師が教える 鼻炎のリセット法』(アスコム))

出典=『1万人の鼻の悩みを解決した医師が教える 鼻炎のリセット法』(アスコム)


乳幼児など、まだ自分でかむことができない年齢であれば、親御さんがご自分の口で、鼻水をスーッと吸ってください。その行為に抵抗のある方は、市販の吸入器を使いましょう。吸っている口の中に鼻水が入らないように、逆流防止弁がついているタイプがおすすめです。

なかには「吸い切るまで息が続きません」という親御さんがいらっしゃいます。そういう方は、無理に吸うことはありません。そういうお子さんには、私は去痰薬(きょたんやく)を処方します。粘液を外へ出したり、柔らかくしたりすることが目的です。そうなれば、無理なく吸えるようになります。

鼻づまりのあるお子さんには、「鼻ほっとタオル」(第1回参照)をやってください。43度ぐらいに温めたタオルを当てて、鼻から思い切り息を吸います。吐くときにはタオルを外し、またタオルを当てて息を吸います。蒸気を鼻から吸って、鼻粘膜の血流を良くすることで、膿(鼻水)を柔らかくして外に出すのを助けるので、お子さんの症状を緩和します。

図表2.鼻ほっとタオル(出典=『1万人の鼻の悩みを解決した医師が教える 鼻炎のリセット法』(アスコム))

出典=『1万人の鼻の悩みを解決した医師が教える 鼻炎のリセット法』(アスコム)


「鼻うがい」はやめたほうがいい理由

鼻うがいとは、鼻の奥の粘膜を洗浄して、汚れやアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす物質)を取り除くセルフケアです。

鼻の中(鼻腔)と口の中(口腔)をつなぐ上咽頭の鼻水や、粘膜の汚れ(花粉、ハウスダスト、雑菌などの異物)を物理的に洗い流すので、やればスーッとします。また、鼻づまりや鼻水を予防し、症状緩和に役立つともいわれています。

近年は「鼻洗浄器」として専用の器具も市販されています。ですが、鼻うがいには危険がいっぱい潜んでいるので、安易にすることは控えていただきたいと思います。

自宅での鼻うがいは、「正しい方法で行わなければ、難聴、中耳炎、咽頭炎、カビアレルギーによる鼻炎、肺炎などのリスクが高まる」というのが、耳鼻咽喉科学会の統一見解です。なぜなら、鼻うがいには、次のようなリスクがあるからです。

・細菌やウイルスが入った水が逆流して、難聴や中耳炎になる可能性がある。

・器具内に残存した水分からカビが繁殖し、鼻や喉に炎症を起こす可能性がある。カビが蔓延すれば、肺炎になる可能性がある。

・鼻や喉にある免疫力を損なう可能性がある。

・カルキを含んだ水道水が、粘膜を傷める可能性がある。

 

記事のポイント! 

花粉症や鼻づまり対策として広がる「鼻うがい」ですが、方法を誤ると耳に負担をかけ、難聴や中耳炎につながる可能性があると耳鼻科医が注意を呼びかけています。特に、水圧や洗浄方法を自己流で行う危険性、生理食塩水の重要性、耳管への影響などを分かりやすく解説しており、「安全に行うにはどうすれば良いのか」が理解できる内容です。鼻や耳の不調を感じやすい方にとって、正しいセルフケアを見直すきっかけになる記事です。

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聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。 


原文掲載元はこちら

https://president.jp/articles/-/112384

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