毎日新聞
2025/5/10 13:00(最終更新 5/10 13:00)

「UNIQUE ZONE WORLD」の決勝で対戦相手の香港選手(中央右)の目前でブレイキンを踊る勝間渚香さん(手前左)=兵庫県尼崎市の尼崎万博P&R駐車場・ひょうご楽市楽座で2025年4月19日午後8時43分、来住哲司撮影
音楽に乗って跳ねたり回ったりとアクロバティックな動きのブレイキン(別名・ブレイクダンス)、激しい動きから突然静止ポーズを取るロックダンスなどのストリートダンスを障害者同士が踊り合う。そんな障害者限定のダンスバトルの世界大会が2024年から兵庫県で開催されている。他人と違う踊りの熟練度が審査され、身体的な障害も強みになるという大会とはどのようなものか。
16人が出場
4月19日に兵庫県尼崎市で開かれたダンス大会「UNIQUE ZONE WORLD」(ユニークゾーンワールド)。海外招待3人(米国2人、香港1人)、24年度の国内大会優勝者ら5人、当日予選(出場25人)通過8人の計16人の障害者が出場し、トーナメントで1対1のダンスバトルを行った。
主催したのは日本アダプテッドブレイキン協会(JABA=大阪市北区)と日本リズムダンス・スポーツ協会(JRSA=同)。かつてプロダンサーとして活躍したJABA代表理事、高橋俊二さん(41)は22年、障害者対象の国内大会開催に携わった。その際、「日本一になったら、その先に世界大会があるはず。障害者ダンサーたちに日本代表の称号を与えたい」と思い、24年2月に同県伊丹市でユニークゾーンワールドを初開催。海外招待4人を含む16人が争った。
高橋さんは「ブレイキンは独創性が重視される。例えば、片足がない人ならではの動きは他の人にはできないから強みになる」と指摘する。出場者を性別や年齢別、障害の種別・程度などで分けず、ダンスジャンルも問わないのがこの大会の特徴だ。
優勝は大学1年生
「UNIQUE ZONE WORLD」で出場者や観衆に試合方式などを説明する高橋俊二さん=兵庫県尼崎市の尼崎万博P&R駐車場・ひょうご楽市楽座で2025年4月19日午後5時32分、来住哲司撮影
第2回となる今大会には小学4年生から40代までの男女が出場。1対1で交互に45秒(決勝は1分)ずつ2回踊り、審査員3人の多数決で勝敗が決まる。左足のない選手は松葉づえ、視覚障害の選手は白いつえをそれぞれ使って踊ったり、聴覚障害で音楽が聞こえない選手は観衆に手拍子を求め、それを見てリズムを取ったり、各自が工夫を凝らした踊りで観衆を沸かせた。
優勝したのは太成学院大1年の勝間渚香(ななか)さん(18)=ダンサー名・NaNaKa。「前回大会では優勝したドイツ選手に負けてベスト8。悔しい思いをしたので、今大会は絶対に優勝したかった」と喜んだ。21年12月に背骨がS字に曲がる側湾症になり、日常的に腰痛を抱えるものの「小学5年で始めたブレイキンをやめたいとはならない。障害があるからできないとは思わない」と言い切る。
ベスト8だった米国人女性のケイリー・ベイズさん(28)=同・Slaylee=は二分脊椎(せきつい)症などを患い、3年前から車椅子生活。ダンスでは車椅子を横に倒して車輪に座って回るなど、独創的な動きで観衆の喝采を浴びた。「とても素晴らしかった。こういう大会は見たことがないので、米国に持ち帰って広めたい」と感動した様子だ。
「自立につながる」
海外でブレイキンは健常者と障害者が一緒に戦うが、この大会を障害者限定にしたのには理由がある。高橋さんは「日本では健常者と戦うことに二の足を踏む障害者も多い」と説明し、「いずれは健常者も出場するものにしたい」と構想する。
審査員を務めた左足が義足のプロダンサー、大前光市さん(45)は「上位に入れば自信になり、精神的な自立につながる」と社会的な意義を指摘し、JRSA理事の岩花玄さん(39)も「障害者ダンサーが増え、障害者を教える人も増えることにつながれば」と願う。【来住哲司】
リンク先は毎日新聞というサイトの記事になります。