ディズニーは車椅子、体育見学で「なんで?」と言われ… 21歳女優が生きる“片耳難聴”の知られざる日常

ディズニーは車椅子、体育見学で「なんで?」と言われ… 21歳女優が生きる“片耳難聴”の知られざる日常

2025年10月01日

坂上未優1 朝起きたら周囲が「ものすごく静か」だったことも。“手帳”はもらえない「目に見えない障害」の日常を語ってくれた

朝起きたら周囲が「ものすごく静か」だったことも。“手帳”はもらえない「目に見えない障害」の日常を語ってくれた


坂上未優インタビュー前編

 女優、インフルエンサーとして活動する坂上未優さん(21)は、左耳が聞こえない片耳難聴だ。国内に30万人以上がいるとされるが、周囲にはわかりづらい“目に見えない障害”で国の支援も遅れている。YouTubeなどで片耳難聴についても発信している彼女に、片耳難聴の実態や大変な点をライター・グラビア評論家の徳重龍徳氏が聞いた。

【写真19枚】「4年くらいで両方の聴力がなくなってしまうかも」  自身の“耳”を見せてくれた坂上さん ほか


――女優やゲーム配信などをしている坂上さんですが、片耳難聴を抱えています。YouTubeなどでも片耳難聴について発信されていますが、何歳ごろから耳の異変には気付いたんですか。

坂上:もともと生まれた時から耳が聞こえづらい方だったんですが、小学4年生くらいの聴力検査で引っかかり、病院に行ったところ「左耳が人の半分くらいしか聞こえていない」と診断されました。中学生の時に悪化して、左耳がほぼ全部聞こえない状態になりました。


――不勉強で坂上さんのYouTubeを見るまでは知らなかったんですが、片耳が聞こえなくなると平衡感覚が保てなくなり、転びやすくなったりするそうですね。

坂上:そうなんです。左と右で聞こえ方が違うと平衡感覚が保てなくなるみたいで。私の場合は突然、朝起きようと思っても起きられなくて。それでも踏ん張って起きようとするとベッドから降りた瞬間に転げ落ちてしまって。立ち上がろうとするとめまいがして気持ち悪いんです。これはおかしいぞとなって病院に行きました。治るまでには1年くらいかかりましたね。

 家の中では歩けていて、近所への買い物くらいは母や姉の手を借れば大丈夫だったんですけど、ディズニーランドだったり水族館だったり人が多いところでは、いつめまいになって周りの方に迷惑かけてしまうか分からないので車椅子を借りて回っていました。


――YouTubeでは人混みの中にいると気持ち悪くなるとも話していましたね。

坂上:それはあります。人混みであったり、いろんな人がザワザワと話している状態だと、聞き取りづらいですし、それに聞こえない耳の音を、右耳や目で情報を補おうとするので、気持ち悪くなります。



「なんであいつは見学なんだ」

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

――坂上さんは片耳の難聴なので、一見健常者に見える分、誤解も生みやすいそうですね。

坂上:どうしても左側から話しかけられると聞こえなくて、それが無視しているように見えてしまうというのはあります。

 中学の時に左耳の聴力が急になくなり、平衡感覚がなかったので、学校には行っていたんですが、体育を休んでいたんです。そうすると「なんで、あいつは見た目はどこも悪くなさそうなのに見学なんだ」と白い目で見られたり。一時期、耳の聴力を同じくらいにするために器具をつけていたことがあったんですけど、「なんで学校でイヤホンつけているの?」と言われたりしました。


――中学時代には一時期、両耳ともに聞こえなくなったそうですね。

坂上:はい。ストレスが原因なのか、一時的に両耳が聞こえなくなりました。朝起きたらものすごく静かで。ステロイドを飲んで対処したら1日で治ったんですけれど、あれはもう味わいたくないですね。


――朝起きたら聞こえなくなっているのは怖さを感じます。耳の治療なんですが、投薬によるものなんですね。

坂上:私はずっと投薬による治療です。難聴にも何種類かあるんですけれど、私は感音性難聴で、さらにそこにも色々と種類があるんです。

 私は耳に音は入っていて、耳の機能も全部正常なんですけれど、入った音を脳に届ける神経の方がうまくいっていないんです。なので本当は補聴器をつけても聞こえるはずはないんですけれど、でもなぜか聞こえます。まだ解明できていない何かがあるのかもしれないです。

 知り合いで私と同じように神経が原因の難聴の方がいらっしゃったんですけど、ちょっとその方が交通事故に遭い、大きい衝撃を受けたことで神経が繋がって聞こえるようになったんです。なので、実際は誰にも分からない感じなんです。


坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)


「ゲーマー」としての工夫

――まだわからない点も多いのですね。坂上さんはゲーマーで、YouTubeでゲーム配信もされています。その中でFPSゲームは片耳難聴だと難しい面があると聞いて、なるほどと思いました。

坂上:FPSは耳で相手が近づいているかを知る必要があるので難しいですね。なので私の場合、聞こえない左耳側は勘です。あと左で音がするとヘッドホンが震えるようにしています。そうすると震えることで「あっ、左から来ているな」とわかるので。

 ただ「エーペックス・レジェンズ」というゲームはすごく広いマップで戦うので、規則性がないといいますか、どこから敵が来るかわからないのでちょっと苦手なんです。けれど私がやっている「VALORANT」は5対5で比較的小さめのフィールドで戦うので、「絶対にこの方向からは敵は来ない」とわかりやすくて、そちらを好んでやっています。

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)


あと4年で両耳が…?補聴器の可能性


――現在、耳の状態はどうなんですか。

坂上:実は1年前に異変を感じて病院にいったら、右の耳も3分の2くらいしか聞こえてないと診断されました。平衡感覚に問題がないくらいわずかですけど、徐々に悪化していたみたいです。もし今後も止まらないようであれば、あと4年くらいで両方の聴力がなくなってしまうかもしれないと言われました。

 私は難聴の情報を発信していらっしゃるYouTuberの「難聴うさぎ」さんと仲良くさせていただいているんですが、先日、うさぎさんが使っている補聴器を貸していただいたんです。もともと私が受診してる病院では「絶対にあなたは補聴器は使えない」と言われていたんですけれど、うさぎさんの補聴器では聞こえたので、万が一聞こえなくなっても、補聴器は使えるんじゃないかとい考えていますし、国立病院でもう一度診断を受けようと思っています。


――補聴器でいえば、YouTubeで紹介されていた「nezu」についても驚きました。骨伝導を使って音を伝える器具で、デザインもネッククーラーのようなデザイン性も高いです。

坂上:「nezu」は補聴器ではなくて、骨伝導集音器で、医療器具には認定されていないものなんです。鼓膜がない方は聞こえないんですけど、それ以外の方でしたら音が聞こえるというものです。医療的に認められてないからこそコストをすごく低く作ることができるんです。補聴器って片耳30万~40万円くらいするんです。「nezu」は9万円くらいなんです。

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)


「手帳」申請外の障害

――先ほども少しお話いただきましたが、片耳難聴ならではの難しさはほかにもありますか。

坂上:片耳難聴は障害者手帳の申請外なんですよ。


――ええ、そうなんですか?

坂上:難聴の障害者手帳の申請には「両耳の聴力レベルが70デシベル以上」または「片方の耳の聴力レベルが90デシベル以上で、もう片方の耳の聴力レベルも50デシベル以上」でないといけないんですが、それだとほぼ両耳が聞こえないのと同じレベルでして。

「きこいろ」さんという片耳難聴の当事者や家族がやっている団体が、障害者手帳を申請させてくださいと国に働きかけているんですが、なかなか前に進んでいない状況です。


――坂上さんはYouTubeなどを通して片耳難聴について発信されていますが、もう少しここを理解してほしいなという部分はありますか。

坂上:これはどの障害にも言えることなんですけれど、目に見えない障害をどう目に見えるようにするか理解が深まってほしいなと思います。

 最近は、外見からは分からないけれど援助や配慮を必要だと周囲に知ってもらいやすくするヘルプマークも出てきました。私自身もヘルプマークを持っているんですが、ヘルプマークだけだと「何の障害を持っているんですか」と結構言われるんです。なので私はヘルプマークをつけている時は一緒に、知り合いの難聴の方が作ってくださった「耳が聞こえないよ」というマークとともにつけています。

 一方で、ヘルプマークが必要ではないのに悪用をして使っている人だったり、そもそもつけるのを嫌だと思っている人も多いんです。そこを教育などで変えていってほしいなと思います。

 ***

【記事後編】では、ミスマガのベスト16に残るも、その後“グラビアNG”にした事情や現在の活動についてお話を伺った。

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)


坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)


坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

坂上未優(撮影・徳重龍徳)

成功者は限られる芸能の世界…「それをミスマガの時に痛感しました」。坂上さんが語る“リミット”とは


坂上未優


埼玉県出身の女優・モデル。耳難聴というハンディキャップを抱えながらも、グラビアや雑誌掲載、TV出演など幅広く活動中。俳優としてもドラマ「岸辺露伴は動かない」「南くんが恋人!?」などに出演。2021年には写真集「SPECIAL FAN BOOK 坂上未優」も出版している。趣味はお菓子作り、カメラ、PCゲーム。YouTubeチャンネル、SNSでも積極的に発信中。X:@miy_u0130

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。ウェブメディアウォッチャー。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。その後、テレビ局のオウンドメディア編集長を経て、現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆している。著書に日本初のグラビアガイドブック「一度は見たい! アイドル&グラビア名作写真集ガイド」(玄光社)。noteでマガジンを連載中 X:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部


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