「デフリンピック」バドミントン女子複、姉妹で目指す金メダル…前回大会は4強進出後にコロナの影響で棄権

「デフリンピック」バドミントン女子複、姉妹で目指す金メダル…前回大会は4強進出後にコロナの影響で棄権

2025/01/12 10:41

東京デフリンピック出場を目指す矢ケ部紋可さん(左)と真衣さん

東京デフリンピック出場を目指す矢ケ部紋可さん(左)と真衣さん(いずれも昨年12月22日、福岡県久留米市で)=木佐貫冬星撮影


 今年11月に東京で開かれる聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」(読売新聞社協賛)のバドミントン女子ダブルスで、金メダルを目指す姉妹がいる。生まれつき難聴のハンデがある、福岡県太宰府市出身の矢ケ部紋可さん(22)(ゼンリンデータコム)と、真衣さん(20)(筑紫女学園大)。日本で初めて開催される大舞台に向け、紋可さんは「練習したことをすべて出し切って、感動を届けられるような試合をしたい」と意気込む。(緒方裕明)


アジア太平洋大会で優勝…紋可さんは守り得意・真衣さんは攻撃力持ち味

 昨年12月、マレーシアで開かれたアジア太平洋ろう者競技大会。姉妹でペアを組んだ女子ダブルスで優勝し、金メダルを獲得した。ベスト8に終わった2023年夏の世界選手権から1年余り、2人はそれぞれの課題に向き合い、成長を遂げてきた。

 紋可さんが重点を置いたのは、レシーブだ。守りを得意とする紋可さんにとって、相手の強打をさばくレシーブは生命線。この1年、練習でも多くの時間を割き、精度を上げてきた。

 攻撃力が持ち味の真衣さんは、課題だったスタミナの向上に励んだ。「苦手で、自然と避けてしまっていた」という走り込みに積極的に取り組むと、「体が軽くなって、より良いプレーができるようになった」。

 アジア競技大会では、準決勝で23年の世界選手権を制したインドペアを破ると、決勝でも強豪の韓国ペアに競り勝った。「これまでは攻めていてもどこか不安な部分があったが、今回は不思議と自信があった」と真衣さん。姉妹の成長がかみ合い、レベルの高いアジアの頂点に立った。現在の2人の世界ランキング(女子ダブルス)は3位。


ダブルスは特に難しいが…姉妹ならではのコンビネーションで対応

 紋可さんは聴覚特別支援学校小学部1年の頃、クラブ活動でバドミントンを始め、真衣さんも後を追いかけた。紋可さんが大学2年、真衣さんが高校2年の頃に本格的にペアを組んだ。

 コート内では補聴器を使えないデフバドミントンは、シャトルを打つ音で打球の速さを予測することが難しく、判断が遅れる。さらに声によるコミュニケーションが取れないため、ダブルスは特に難しいとされる。

 それでも2人は姉妹ならではの息の合ったコンビネーションで対応。「駆け引きが重要で、予測したところに羽根(シャトル)が来るとうれしい」と真衣さん。紋可さんも「互いを信じてプレーできる分、ダブルスの方が好き」と笑う。

 紋可さんは昨年から拠点を埼玉県内に移し、福岡県内などで練習する真衣さんとは離れて生活しているが、ともに「互いの課題をわかった上で、何を練習するか明確にしている。久しぶりにペアを組んでも、理解してプレーできる」という。

 2人はデフリンピックに、大きな忘れ物がある。22年、ブラジルで開催された大会でベスト4に進出。しかし、メダル獲得を目前にして、日本選手団に新型コロナウイルス感染が相次いだ。「何とかもう少し、試合まで待ってほしい」。懸命の訴えもむなしく、チームは大会を棄権した。

 「借りを東京で返したい」と真衣さん。母国で巡ってくるリベンジのチャンスを心待ちにしている。


日本初開催、21競技に3000人参加見込み

日本初開催、21競技に3000人参加見込み

 デフリンピックは、英語で「耳が聞こえない」を意味する「デフ(deaf)」とオリンピックを組み合わせた造語。1924年に仏パリで初めて開催され、夏季・冬季大会がそれぞれ原則4年に1度、実施されている。

 バドミントンを含むほとんどの競技ルールはオリンピックと同じだが、陸上競技のスタートのピストルに合わせてランプを発光させて知らせたり、球技の審判が笛に加えて旗や手で合図をしたりと、聴覚の不利を視覚的に補うための工夫が凝らされている。

 100周年の節目で、日本初開催となる東京大会は11月15~26日、東京を中心に17会場で21競技が行われる。70~80か国・地域からデフアスリート約3000人が参加する見込み。


リンク先は讀賣新聞オンラインというサイトの記事になります。


 

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