2026年2月16日 12時42分
今川由紀子さん
つなぐプロジェクト代表 今川由紀子さん
1月6日、子どもたちと一緒に「福祉の学習会」を行いました。今回のテーマは「手話」。少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、子どもたちはこの日をとても楽しみにしていました。
学習会の最初は、米子市社会福祉協議会の方からの「ふくしってなあに?」という問いかけから始まりました。「ふくし」とは、特別な誰かのためのものではなく、一人ひとりの「しあわせ」を考えること。そのことを、子どもたちは大人と同じ目線で、ゆっくりと言葉を交わしながら学んでいきました。
「しあわせって人によってちがうんだ」「自分にとってのしあわせは何だろう」。子どもたちは考え、うなずき、時には首をかしげながら、自分の気持ちを言葉にしていきます。福祉は誰かにしてもらうものではなく、誰かと一緒につくっていくものだということを、自然と感じ取っているようでした。
その後、いよいよ手話の学習です。講師として来てくれたのは、医大生の手話サークルに所属する学生さん。いつも一緒に学習や遊びをしてくれたり、キャンプに行ったりしてくれるお姉さんの存在に、子どもたちは一気に心を開いていきました。あいさつの手話、指文字で自分の名前を伝える方法を教えてもらい、真剣な表情で何度も手を動かします。
最初は戸惑っていた子も、少しずつ指が動くようになり、名前を伝えられた瞬間、ぱっと顔が明るくなりました。「伝わった!」という小さな成功体験。その喜びは、教室全体に広がっていきました。
学習の途中、突然、スマートフォンの緊急地震速報が鳴り響きました。次の瞬間、建物が大きく揺れ始めました。子どもたちは一瞬、不安そうな表情を浮かべましたが、スタッフの声かけに従い、落ち着いて机の下に身を寄せました。
揺れが収まったあと、「大丈夫?」と声を掛け合う子どもたちの姿がありました。怖かったはずなのに、誰かを気遣う言葉が自然と出てきます。その光景は、つい先ほどまで学んでいた「ふくし」の時間と、静かにつながっているように感じられました。
揺れが収まるのを待ち、保護者の方々と情報共有し、安全を確認したあと学習会を再開。子どもたちの集中力は途切れることなく、むしろ少し大人びた表情で話を聞いていました。感想の時間には、「耳がきこえない人が困っていたら、ぽんぽんって肩をたたいてから手話であいさつしたい」「書いて聞いてみたら、何かお手伝いできるかもしれない」といった声があがりました。
「何かしてあげたい」ではなく、「一緒にできることはないか」。その言葉の選び方に、子どもたちの中に芽生えた変化を感じました。
この日の学習会は、手話を覚えることだけが目的ではありませんでした。違いを知り、相手の立場を想像し、行動につなげようとすること。その力は、地震という予期せぬ出来事の中でも、確かに発揮されていました。
日常の中で学び、体験し、時には非日常に直面する。そうした一つひとつの積み重ねが、子どもたちの中に「誰かと生きる力」を育てているのだと、改めて感じた一日でした。
いまがわ・ゆきこ
鳥取県伯耆町出身。鳥取大学医学部付属病院での広報業務を通じ、病気や障がいがある子どもや家族を支援する「つなぐプロジェクト」を2017年に任意団体として設立。21年に一般社団法人化された。
リンク先は朝日新聞というサイトの記事になります。
