子どもの「ヘッドホン・イヤホン難聴」を防ぐには? 耳鼻咽喉科医が教える予防法と注意サイン

子どもの「ヘッドホン・イヤホン難聴」を防ぐには? 耳鼻咽喉科医が教える予防法と注意サイン

耳鼻咽喉科医・吉川沙耶花先生に聞く【子どものヘッドホン・イヤホン難聴】

2026.02.12
耳鼻咽喉科専門医:吉川 沙耶花

写真:Faustostock/イメージマート(ヘッドホンをしてゲームをする子ども)

写真:Faustostock/イメージマート


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スマホで音楽を聴いたり、動画やゲームを楽しんだり。生活の中でイヤホンを使う機会がぐっと増えたことにより、ゆっくりと聴こえが悪くなる「ヘッドホン・イヤホン難聴」になる可能性がある子どもたちが増えています。

今回は、桜が岡耳鼻咽喉科の吉川沙耶花先生に、ヘッドホンやイヤホンで聴こえが悪くなる仕組みや、注意したいサインなど、家庭で今日からできる「耳を守る工夫」を解説してもらいました。


吉川 沙耶花 (きっかわ・さやか)

桜が岡耳鼻咽喉科院長、耳鼻咽喉科専門医、アレルギー専門医、医学博士。
福岡県出身。九州大学医学部卒業後、九州大学病院、埼玉医科大学病院、茅ヶ崎中央病院などでの勤務を経て、2022年8月桜が岡耳鼻咽喉科開院。


目次

  • 静かに進む「ヘッドホン・イヤホン難聴」とは? 日常生活に潜むリスク
  • 一度壊れると戻らない? 音を伝える「有毛細胞」の役割
  • 難聴のリスクがある人とは?
  • 予防のポイント
  • 聞こえにくいと思ったら病院へ
  • 静かに進む「ヘッドホン・イヤホン難聴」とは? 日常生活に潜むリスク


静かに進む「ヘッドホン・イヤホン難聴」とは? 日常生活に潜むリスク

イラスト/吉田いらこ(聞こえなさそうなこども)

イラスト/吉田いらこ

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スマホで音楽を聴いたり、動画やゲームを楽しんだり、あるいはオンライン授業や会議に出席したり。気づけば毎日のようにヘッドホンやイヤホンを使っている人は多いと思います。

便利な一方で、使い方を誤ると聴力に影響が出ることがあり、とても問題になっています。それが「ヘッドホン・イヤホン難聴」です。

大きな音が原因で起こる難聴には二種類あります。ひとつは、工場の機械音や道路工事のような騒音が原因で起こる「騒音性難聴」。もうひとつは、ライブ会場やイヤホンで音楽を大音量で聞き続けることで起こる「音響性聴覚障害」です。

ヘッドホン・イヤホン難聴とは、イヤホンを使用し大きな音量で音楽などを聞き続けることにより、音の振動を脳へ伝える役割をしている細胞が少しずつ壊れて起こる「音響性聴覚障害」のことをいいます。

つまり、特別な職場環境にいなくても、普段の生活の中で誰でも起こりうる、身近な難聴といえます。

WHO(世界保健機関)は、世界の12~35歳の若者のうち、約半数にあたる11億人が、ヘッドホンやイヤホンなどの個人用オーディオ機器の使い方によって、将来的に聴覚に障害を抱える可能性があると警告しています(※)。

※WHOニュースリリース2019年2月12日配信
https://www.who.int/news/item/12-02-2019-new-who-itu-standard-aims-to-prevent-hearing-loss-among-1.1-billion-young-people?utm_source=chatgpt.com

ヘッドホン・イヤホン難聴は、イヤホンを使う習慣により、若年者でも起こりうる、現代ならではの“身近な難聴”なのです。


一度壊れると戻らない? 音を伝える「有毛細胞」の役割

イラスト/吉田いらこ(耳の解剖図)

イラスト/吉田いらこ

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音は、外耳から中耳まで空気の振動として伝わり、内耳の蝸牛(かぎゅう)というかたつむりのようならせん状をした器官へ入っていきます。

蝸牛の内壁には約2万個の「有毛細胞」が並んでいます。有毛細胞はその名のとおり感覚毛という細い毛のような束をもっています。

耳から入った音は、有毛細胞の毛先で、空気の振動エネルギーから電気信号に変換され、神経活動として脳に伝えられます。

ところが、この有毛細胞はとても繊細であるため、大きな音を長時間聞き続けると疲れてしまい、傷ついたり、毛の部分が抜け落ちたりすることがあります。

そうなると、音の振動をうまく受け取れなくなり、結果として聴こえが悪くなってしまうのです。一度壊れてしまった有毛細胞は元には戻りません。


難聴のリスクがある人とは?

ヘッドホン・イヤホン難聴は、ある日突然聞こえなくなるというタイプの難聴ではありませんが、大きな音を長時間聞き続ける習慣が積み重なることで、少しずつ聴こえにくくなっていきます。そのため、初めのうちは本人が気づきにくいのが特徴です。

耳詰まり感や耳鳴りのようなサインが現れることもあります。一度失われた聴力は元に戻らないため、症状に早めに気づき、イヤホンの使い方を見直すことがとても大切です。

では次の中で、当てはまるものはありますか?

1.電車など移動中によくイヤホンで音楽を聴く

2.大音量で音楽を聴くのが好き

3.ノイズキャンセリング機能のないイヤホンを使っている

4.オンライン授業やオンライン会議で長時間イヤホンをつけている

5.イヤホンで音を聞きながら寝る習慣がある

ひとつでも心当たりがあれば、ヘッドホン・イヤホン難聴のリスクがあります。

出典 WHO Make Listening Safe(音圧レベルと一日あたりの許容基準)

出典 WHO Make Listening Safe


ヘッドホン・イヤホン難聴のリスクは、音の大きさと聴いている時間で決まります。
WHOは、難聴を防ぐためのイヤホンの使用目安として

・大人は80dBで週40時間未満
・子どもや若い世代は75dBで週40時間未満

としています。

ただし「40時間未満なら安心」というわけではありません。音の大きさが3dB大きくなるごとに、安全に聴ける時間がおよそ半分になるなど、音が少し大きくなるだけで耳が耐えられる時間は一気に短くなります。

例えば大人の場合、難聴を防ぐ目安は「80dBなら週40時間未満」ですが、「90dBになると週4時間ほど」と、一気に短くなります。

さらに100dB(ドライヤー、地下鉄車内の騒音)になると、短時間でも急に聴こえづらくなることがあります。

イヤホンを使うと耳内に直接音が入るため、大きな音量のまま長時間使うほど、耳へのダメージが蓄積しやすくなります。「音漏れするほどの大音量」や「つけっぱなし」は特に要注意です。


予防のポイント

ヘッドホンやイヤホンは、使い方に気をつけるだけで耳の負担をぐっと減らせます。次のことを意識してみてください。

● こまめに耳を休ませる
1時間使ったら10分ほどイヤホンを外し、耳を休ませましょう。

● 音量は控えめに
周りの会話が聞こえるくらいの音量を意識しましょう。平均80dB未満が安心とされていますので、再生機器の音量制限機能やアプリを活用しましょう。Bluetooth接続時に音量調整ができるものなど種類も多いため、子どもが使う端末の管理にも役立ちます。

● ノイズキャンセリング機能を活用
周囲の雑音に負けないよう音量を上げがちですが、ノイズキャンセリング機能を使うと音を大きくせずに快適に聴けます。イヤホンを選ぶときは、ノイズキャンセリング機能があるタイプを選ぶと安心です。

予防のポイントは、次の4つを覚えておいてください。

あ…あげない(音量を上げすぎない)
い…いしに相談(気になる症状があれば早めに耳鼻咽喉科へ)
の…ノイズキャンセリング(周囲の騒音をカット)
て…ていき的に休む(1時間に10分ほど耳を休める)


聞こえにくいと思ったら病院へ

最後に、「最近、なんだか聴こえにくい」「耳が詰まった感じが続く」など、少しでも気になる症状がある場合は、放置せず、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。

早い段階であれば、耳をしっかり休ませることで回復することがあります。音の刺激を減らすために耳栓を使ったり、イヤホンを使わない時間を意識的につくったりして、耳を休ませるようにしましょう。

───◆───◆───

子どもがヘッドホンやイヤホンを使う機会が増えている今、正しい知識を持った大人のかかわりが欠かせません。

まずは大人が「音との付き合い方」を知り、無理のない範囲で気を配ること。それが、子どもたちの未来の“聴こえ”を守る第一歩になります。

安心して音を楽しめる環境づくりを、家庭の中から始めていきましょう。


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