【映画『みんな、おしゃべり!』の河合健監督、主演の長澤樹さん舞台あいさつ】「言語の面でCODAと立ち位置が近い人って誰だろうと考えた」

【映画『みんな、おしゃべり!』の河合健監督、主演の長澤樹さん舞台あいさつ】「言語の面でCODAと立ち位置が近い人って誰だろうと考えた」

更新日:2026年3月23日

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は3月21日に静岡市葵区の静岡シネ・ギャラリーで行われた『みんな、おしゃべり!』の河合健監督、主演の長澤樹さんの舞台あいさつを題材に。
(文・写真/論説委員・橋爪充)

右から河合健監督、長澤樹さん、小澤秀平さん(3月21日、静岡市葵区)

右から河合健監督、長澤樹さん、小澤秀平さん(3月21日、静岡市葵区)


東京などでは2025年11月から順次公開されている河合健監督『みんな、おしゃべり!』が、満を持して静岡県内で見られるようになった。2026年4月2日まで静岡市葵区の静岡シネ・ギャラリーで上映中。ろう者と在日クルド人のコミュニティーのすれ違い、あつれき、和解をユーモラスに描く同作は、手話を含めたさまざまな言葉が飛び交う驚くべき「多言語映画」でもある。人と人の「分かり合えなさ」を強調しつつ、それでも「なんとかなる」という結論に着地させる。

3月21日、河合健監督と主演の長澤樹さん(静岡県出身)が同館を訪れ、舞台あいさつと質疑応答を行った。ファシリテーターは作品のプロデューサーを務めたLAUGHTRADEの小澤秀平代表。ろう者の観客からの質問も相次ぎ、盛り上がりを見せた。

『みんな、おしゃべり!』の一場面(C)映画『みんな、おしゃべり!』製作委員会

『みんな、おしゃべり!』の一場面(C)映画『みんな、おしゃべり!』製作委員会


(静岡県での上映について)

河合:この映画は昨年11月29日に東京都内の 2館で上映がスタートしているんですが、どんどん広がっていって今は40館規模。本当にありがたいなと思ってます。静岡県出身者と言えば、出演の長澤さん以外に、脚本チームの一人の竹浪春花さんもそうですね。

長澤
:特別な思いがあります。過ごした時間が長い場所で、出演映画が上映されるというのはやはり感慨深いところがあります。


(ろう者を映画にした理由)


河合:僕自身がCODA(ろう者の家族がいる立場)なんですね。それで皆さん、いろいろ大変なことがあると想像されていると思うんですが、全てのことを「障害」にくくって受け取ろうとするので、話が通じないということが結構あります。要するに映画の中の言葉を借りると「言語」というカテゴリーと「障害」というカテゴリーの二つがあるんですが、全部「障害」のカテゴリーで捉えられるんで話が通じないんですよね。手話っていう言葉が違うだけで意思疎通できるんだけど、と言っても「コミュニケーションは取れないよね」みたいになっちゃう。それで、この映画は言語を軸にした映画にしたいなと思ってスタートしました。

小澤秀平さん


(クルド人を登場させたのは)


河合
:CODAの僕と、言語の面で立ち位置が近い人って誰だろうと思った時に、外国から来た家族のお子さん、日本で生まれた子供がものすごく近いなと思いました。それで、ろう者VS.外国人家族という構造の映画を作ろうとまず思いました。次に外国語をどうするかという話になった。手話の歴史や背景に近い言語を選ぼうと思いました。手話は、どの国でもマイノリティーで第一言語になれないんです。昔はろう学校でも手話禁止だった。つまり、社会が日本語なので日本語を覚えなさい、という考え方だったんですね。一方のクルド。まず「国」がないので、どの国においてもマイノリティーである。トルコでは話すだけで逮捕されるっていう歴史もあるんです。そのあたりの手話との共通点からクルドになっていったというのが、経緯です。


(手話の習得について)


長澤
:作品に出演されているろう俳優の那須英彰さんのお宅に撮影の1カ月前からホームステイさせていただきました。毎日手話で会話をする時間があって、その間監督から言われたのは「筆談NG」でした。手話オンリー。那須さんのお宅はデフファミリーで奥さま、娘さんも聞こえない方なんです。私も挨拶などは勉強して行ったんですが、他の手話は全然わからなくて、最初は伝えることがすごく難しかった。そこから逃げたくなる自分もいました。でも那須さんたちは、ずっと会話しようとしてくださった。「伝えたい」という気持ちがあれば、手話ができなくても思いが伝わるな、と知りました。那須さんたちはじめ、ろう者の方々のおかげで映画の中で手話がスムーズに出てくるようになったと思っています。

河合:ホームステイしつつ、昼間は手話指導の江副悟史さん(日本ろう者劇団代表)とずっと一緒に街中を歩いてもらいました。ここも筆談禁止で。基本的には音声言語を使う時間の方が少ない中でずっとやってもらったみたいな感じですね。そのまま撮影に行ったんで、(長澤さんは)ずっと手話でやりとりしていましたね。ろう者のスタッフと話す方が多かったのでは。

長澤樹さん


長澤
:そうですね。ご相談したり、アドバイスをいただいたりするのは江副さんたちがメインでしたから、通訳の方を交えずに1対1で会話をしていました。

河合:想像していただけると思うんですが、撮影はとても大変でトラブル続きだったんですよ。ろうの大人チームとクルドの大人チームの双方でトラブルがある中、長澤さんは江副さんと離れたところから手話で楽しそうにやりとりしていて、めちゃくちゃうらやましいなと。それぐらいナチュラルに対話していたので、安心して見ていました。こういう映画であれば、長澤さんが手話を覚えるということにフォーカスが当たって、現場でケアしていくみたいなことになりがちですが、今回は逆にもうほったらかしでした。そこまで出来上がっていたんで。長澤さんをほったらかしにして、他のトラブルの解決に奔走できたのはうれしい誤算でした。唯一、想定より楽だったのが長澤さんのパートとも言えますね。

<DATA>※県内の上映館。3月23日時点
静岡シネ・ギャラリー(静岡市葵区)


しずおか文化談話室

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。


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