競技で変わる「よーいドン」時代とともに変化

競技で変わる「よーいドン」時代とともに変化

2025/07/17 05:00

 陸上競技、競泳、格闘技、球技――。あらゆるスポーツには「スタート」の瞬間があり、スタートの「合図」がある。時代とともに変化しながらも、合図にはそれぞれの競技の特徴が映し出されている。


競泳 五輪見据え英語に変更

 「位置について」「用意」――。かつて、運動会の徒競走や水泳などで、多くの人が耳にしたスタートの合図だろう。

 日本陸上競技連盟によると、1927年に当時の全日本陸上競技連盟が一般公募。その中から選ばれたものだという。国際大会でも開催国の言語での合図が認められていたためで、国内での合図を統一。陸上競技規則にも明文化された。

 2005年、五輪や世界選手権での合図が英語に統一され、日本陸連も「選手のことを考え、世界に準ずる方がよいと判断した」。日本選手権では10年から、「位置について」は「On your marks(オン・ユア・マークス)」、「用意」は「Set(セット)」に変更された。

 競泳は17年に「用意」を「Take your marks(テイク・ユア・マークス)」に変更。日本水泳連盟によると、国際大会に出場する選手から「『用意』はタイミングが取りにくい」などと要望があったといい、東京五輪も見据えて「世界標準に合わせる」形となった。


柔道の「はじめ」国際基準に

 一方、日本語が国際的な合図に採用された競技もある。

 柔道は試合開始や再開の際、「はじめ」と日本語で合図を送る。講道館によると、1951年から約20年、欧州で柔道の指導にあたった安部一郎氏の功績という。欧州では柔道の用語に各国の言語が使われていたが、54年にベルギーで大会が行われた際に使用言語でもめ、安部氏が「もめるなら日本語でやればいい」と提案。安部氏から当時の活動について話を聞いた津村弘三さん(64)は、「柔道は日本の文化。日本語を使うことが喜んで受け入れられたのでは」と話す。

 大相撲は、特殊な形で始まる。行司の掛け声などではなく、力士が互いに呼吸、動作を合わせ、立ち合いのタイミングを計る。立ち合い不成立でやり直すケースもあり、日本相撲協会には、過去に呼吸が合わずに仕切りが2時間に及んだ取組もあったとの記録が残る。

 昭和初期にラジオ中継が始まると、全取組を中継時間内に終わらせるため、仕切りの制限時間が設けられるようになった。現在は幕内で4分以内とされ、土俵下に座る5人の勝負審判のうち、「時計係」の親方が呼び出しや行司を通じて「時間いっぱい」を告げる。


「光」や「旗」も

 障害者スポーツでは、特性に合わせた合図が送られる。

 今年11月、聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック東京大会」(読売新聞社協賛)が開かれ、陸上競技や柔道、サッカーなど21競技が行われる。

 デフスポーツでは、聞こえない選手にランプや旗などでスタートや審判の合図を伝える。陸上競技では「位置について」からスタートまでを赤、黄、緑の発光で知らせる「スタートランプ」を導入。2022年のデフリンピック・カシアスドスル(ブラジル)大会では、スポーツ器具メーカー「ニシ・スポーツ」(東京)の装置が使われた。

 日本デフ陸上競技協会によると、ランプを使わない大会では、スターターの手や隣の選手の動きを見て、走り始める選手もいるという。男子100メートルなどで東京大会の日本代表に内定している坂田翔悟選手(25)は、「音の聞こえ方に差があっても、スタートランプがあることで対等に戦える」と話している。

 スポーツを見るうえで、スタートの合図に注目してみるのも面白いかもしれない。

「競技の特徴を映し出すスタートの合図」のバナー

リンク先は讀賣新聞オンラインというサイトの記事になります。


 

ブログに戻る

コメントを残す