「耳の聞こえにくさ」への早期・適切な対応と「足腰の機能」維持のセット実施が転倒事故防止に重要—都健康長寿医療センター研究所

「耳の聞こえにくさ」への早期・適切な対応と「足腰の機能」維持のセット実施が転倒事故防止に重要—都健康長寿医療センター研究所

2024.11.20.(水)

加齢性難聴だけでは転倒関連の事故を起こす可能性はそれほど高くないが、「加齢性難聴と歩行機能の低下が重なる」と、転倒関連事故のリスクが高まる—。

「耳の聞こえにくさ」に対する早期かつ適切な対応と、過度に歩く速度が遅くならないように足腰の機能を維持することが傷害予防の観点から重要である—。

東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)が11月18日に、こうした研究成果を発表しました(研究所のサイトはこちら)。


「加齢性難聴と歩行機能の低下が重なる」と、転倒関連事故のリスクが高まる


加齢性難聴は、転倒発生のリスクを高めることが数多くの疫学研究から報告されています。高齢者が転倒した場合、「骨折などの障害が発生する」→「要介護状態に陥りやすくなる」という経過をたどりやすくなります。

この点に関連して研究所では、「聴覚情報の制限→運動の変化」が加齢性難聴者の転倒リスクを高めていると考えられるという研究成果を発表しています。

さらに今般、「歩行機能の低下が難聴と転倒発生の関連を強めている」との仮説を立て、より具体的な研究・検討を行いました。

そこでは、2013年・14年に東京都板橋区で行った健康調査「お達者健診」に参加し、1年以上の追跡調査を行えた786名の高齢者を次の4グループに分け、最大8年間追跡して「1年間の(1)単回転倒(2)複数回転倒(3)転倒による骨折以外のケガ(4)転倒による骨折—の状況」を調べました。
【グループ1】非難聴・非低歩行速度
【グループ2】非難聴・低歩行速度
【グループ3】難聴・非低歩行速度
【グループ4】難聴・低歩行速度

ここで「難聴」とは、オージオメータを用いた聴力測定で25dB以上の者(軽度難聴者以上)と定義。また、「低歩行速度」とは、歩く速度が集団平均から1SD(標準偏差)遅い者と定義しています。

まず、高齢者全体において追跡期間中に発生した事故件数を見ると、(1)の単回転倒が328件、(2)の複数回転倒が117件、(3)の転倒による骨折以外のケガが249件、(4)の転倒による骨折が55件ありました。

これらの事故を、4グループで分けて見てみると、次のような状況が明らかになりました。

▽【グループ4】の「難聴・低歩行速度」群では、全ての転倒事故のリスクが高くなる

▽【グループ2】(非難聴・低歩行速度)と【グループ3】(難聴・非低歩行速度)、つまり「難聴もしくは低歩行速度のどちらかだけを満たす高齢者」では、各転倒事故リスクの有意な上昇は確認されなかった

難聴・歩行速度と転倒リスクとの関係

難聴・歩行速度と転倒リスクとの関係

ここから、▼加齢性難聴だけでは転倒関連の事故を起こす可能性はそれほど高くない▼加齢性難聴に歩行機能の低下が重なることで、転倒関連事故のリスクが高まる—ことが明らかとなりました。

研究所では、「これまでの『加齢性難聴が転倒リスクを高める』との各種研究報告は、歩行機能低下との相乗効果によるものと言える」と分析したうえで、▼特に難聴のある方では「足腰の衰えに注意を払う」必要がある▼「耳の聞こえにくさ」に対する早期かつ適切な対応と、過度に歩く速度が遅くならないように足腰の機能を維持することが傷害予防の観点から重要である—と提言しています。


リンク先はGemMedというサイトの記事になります。
ブログに戻る

コメントを残す