長崎新聞 2026/05/06 [11:20] 公開

「音のない世界」で夢を追う若者がいる。長崎県諫早市の山口惺也は、耳が聞こえないというハンディキャップがありながら、健常者と共にプレーしてきた。諫早商高を卒業した今春、デフサッカー(聴覚障害者のサッカー)のU23ワールドカップ(11~23日・セルビア)日本男子育成選抜に名を連ねた。就職先の九電ネクストのサポートもあり、世界の舞台へ挑む。
幼少期に「前庭水管拡大症」と診断された。完治するものではなく、徐々に進行していく可能性がある先天的な疾患。諫早商高OBで元Jリーガーの父、哲治さんは「難聴だからできないと諦めるのではなく、聞こえにくいからこそ、どうすればできるのかを考える力を持ってほしい」と願い、自身が代表を務める子ども向けスポーツクラブ「スポコミいさはや」でサッカーを習わせ始めた。
補聴器をつけると、会話はできる。ただ、頭に強い衝撃を受けると聴力低下のリスクがあり、激しいめまいや吐き気、頭痛などに襲われる。「症状が出るたびに病院へ通い、しっかりと診てもらった」。周囲の仲間のサポートもあり、北諫早小、スネイルSC、諫早商高で健常者と同じ環境でプレーを続けた。ポジションは「ゴールを決めた瞬間が気持ちいい」と一貫してFW。視野を広く持ち、状況を読み、判断する力を磨いてきた。
昨夏、運命の出合いがあった。高校の遠征で訪れた福岡市で偶然、デフサッカー日本代表の試合を観戦。ルール上、競技中は補聴器を外さないといけないため、ピッチ上ではアイコンタクトや手話でコミュニケーションを取っていた。「自分もやってみたい」。新たな世界への扉が開いた。
3月にデフサッカーU23育成選抜合宿があると知り、急きょ参加した。「フィジカルやボールキープ力は強み」と手応えを感じる一方、「手話のやりとりが難しかった」と課題も見つかった。1月から育成選抜の指揮を執る森保洋監督(V・ファーレン長崎ヘッドオブ・プレ・アカデミー)は「健常者と競ってきた力があり、自分から発信してコミュニケーションを取れる。頑張ろうとする意思が伝わる」と高く評価する。
日本代表は2025年東京デフリンピックで銀メダルを獲得した。「いつかはトップチームで活躍したい。耳の聞こえない子どもたちの希望になりたい」。18歳の挑戦は始まったばかりだ。
記事のポイント!
長崎県諫早市出身の山口惺也選手は、幼少期に前庭水管拡大症と診断されながらも、健常者と同じ環境でサッカーを続けてきました。補聴器を外してプレーするデフサッカーとの出会いをきっかけに、新たな挑戦を決意。U23男子育成選抜に選ばれ、将来は耳の聞こえない子どもたちの希望になることを目指しています。
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原文掲載元はこちら
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=16c0065c5d784f85bc337c38cb60fa8c
