ギター(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

78歳・財津和夫流、言葉が聴きとれないときの返し方。「まず、うなずきながら笑顔で『うーむ』と言う。そして…」

2026年05月28日
大丈夫さ 私の履歴書
財津和夫 ミュージシャン、作曲家、音楽プロデューサー

ギター(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)


1972年に「魔法の黄色い靴」でデビューし、「心の旅」「青春の影」「虹とスニーカーの頃」などのヒット曲を生み出したミュージシャン・財津和夫さん。財津さんが所属するバンド「チューリップ」は、2027年に55周年を迎えます。そこで今回は、財津さん初の自伝『大丈夫さ 私の履歴書』より一部を抜粋し、財津さんの言葉をお届けします。


耳が遠い

補聴器が欲しい。ずいぶん前からテレビの音声や取材を受けるときのインタヴュアーの言葉がちゃんと聴きとれず困っている。

相手が不愉快にならないように「はい、はい」と相槌はするが、時々、質問に「へぇー、そうですかぁ」と、とんちんかんに答えるので相手はポカン。

眼は眼鏡をかければ視力は機能してくれるから、相手のそんな様子に『失敗した』とすばやく対応する私。

まず、うなずきながら笑顔で「うーむ」と言うことにしている。そのとき美味しいお茶のひと口めを味わうような表情をしなければならない。この相槌はどんな状況でも使えて便利だ。

 

つまり、違った言い方だとどうなりますかね?

そしておもむろに、まるで相手の言葉をきっちり聴いた上でより正確性を求めるかのように、「仰っていることは、つまり、違った言い方だとどうなりますかね?」と胡麻化す。

相手だって場をしらけさせたくない。

書影『大丈夫さ 私の履歴書』(著:財津和夫/日経BP 日本経済新聞出版)

『大丈夫さ 私の履歴書』(著:財津和夫/日経BP 日本経済新聞出版)


『財津は耳が遠いのかも』と直感しても、『伝わり難い言い方だったのかもしれない』と思うことにしようと自制する。プロとはそういうものだ。

ただ、自制はしたが、やはり人の子『財津は耳が遠いはず』の直感が払拭しきれてないから次に発する声は大きくなって私に向かう――有難や、果たして私の衰えた聴力でもトラブルなくインタヴューは続くのだ。

 

店員とのやりとりに於いては

でもカフェやレストランで店員とのやりとりに於いてはこんな訳にはいかない。

「コーヒーにはミルクと砂糖は必要ですか?」の問いに、まず、うなずきながら笑顔で「うーむ」は少し変だ。

財津和夫(写真:『大丈夫さ 私の履歴書』より)

(写真:『大丈夫さ 私の履歴書』より)


「仰っていることは、つまり、違った言い方だとどうなりますかね?」と続けると危険なくらい変だ。店員は店長を呼びにゆくだろう。

だから先日も私は「ごめんなさい、耳が遠いので――」と言った。すると店員は店中に届くような声で「ミルクと砂糖はどうされまーすーか〜!」と言う。

店員が声を大にすべき箇所は、「まーすーか〜」ではなく、「ミルクと砂糖」のところやろ、と思ったが、見ると相手は20歳前後、じじいの置かれた社会的弱者の立場なんて解るはずはない。いや、解ってもらうほうが惨めな気分。

店中の視線が私にそそがれているかもと恥ずかしかった。

 

記事のポイント!

78歳の財津和夫さんが、テレビの音声や取材時の言葉が聞き取りづらくなってきた実感を、ユーモアを交えて語っています。聞こえにくい場面で相手に不快感を与えないよう、笑顔で相づちを打つなど、会話を自然に続けるための工夫が印象的です。加齢による聞こえの変化を、身近で共感しやすい言葉で伝えている記事です。

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聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。 


原文掲載元はこちら 

 https://fujinkoron.jp/articles/-/22329

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