9割以上の難聴・耳鳴りが改善。聴覚治療の第一人者による「補聴器リハビリ」を解説

9割以上の難聴・耳鳴りが改善。聴覚治療の第一人者による「補聴器リハビリ」を解説

2025.08.26

補聴器をつけた女性の横顔


聴覚の名医が教える、聞こえが劇的によくなる方法(3) 難聴と耳鳴りは、適切な治療を受ければ大半の症状が和らぎます。『難聴・耳鳴りの9割はよくなる』(世界文化社刊)の著者である新田清一先生が行う「宇都宮方式補聴器リハビリ」について、書籍を元に詳しく解説します。


脳を鍛えて聞き取りを改善する「補聴器リハビリ」

連載第1回第2回を通して、難聴も耳鳴りも、脳に伝わる音の電気信号が弱まって起こると説明しました。つまり、どちらも原因は耳ではなく脳にあるのです。

そこで、脳を鍛え、脳を変える「補聴器リハビリ」が難聴と耳鳴りの改善につながります。ここでは、適切な病院選びや補聴器について解説します。


補聴器は専門知識を持った医師と販売店を通じて購入を

すでに補聴器を持っているものの「高価だったのに少しも聞き取れない」「つけたほうが聞き取れないから、ないほうがマシ」といった不満を持ち、使用をやめてしまう人も少なくありません。

日本で補聴器は専門知識を持たない販売者でも取り扱えます。そのため、適切な調整ができずに、患者さんが“買ったものの使えない”補聴器を手にしてしまうケースがあります。


現在、公益財団法人テクノエイド協会が、補聴器の専門知識と技能を備えた「認定補聴器技能者」の養成を行っています。また、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も認定補聴器技能者のいる専門店で補聴器を購入することを推奨しています。

認定補聴器技能者がいることを示す店。

認定補聴器技能者がいることを示す店。


きちんとした補聴器を作るためには、まず耳鼻咽喉科を受診して難聴の原因を特定することが大切です。病院で聴力検査などを行い、「補聴器リハビリ」の適用であれば補聴器を装用します。

ただし注意点として、すべての耳鼻咽喉科医が補聴器に詳しいわけではありません。明らかに難聴があり、補聴器も必要となりそうなことが予想される場合は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が認定する「補聴器相談医」のいる病院に行くことをおすすめします。

補聴器相談医は、補聴器に関する専門的知識と技能を持つ耳鼻咽喉科専門医です。補聴器相談医のリストは、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のホームページに掲載されています。


どんな補聴器を選べばいい? 価格やタイプは?

補聴器の価格は4万円ほどから、高いものでは50万円以上とさまざま。しかし、高価な機種ほど治療効果が高くなるかといえば、必ずしもそうではありません。

現在、補聴器はかなり進歩しており、1台15万円程度の補聴器でも、難聴や耳鳴りの治療にじゅうぶん役立ちます。高価な補聴器を購入する際にも、必ずほかの機種もあわせて貸し出してもらい、両者を比較検討しましょう。

また、補聴器には大きく分けてポケット型、耳掛け型、耳穴型の3タイプがありますが、最も多く使われているのは耳掛け型です。適応聴力の幅が広く、使いやすいことが選ばれる理由です。

■補聴器の主なタイプ

左からポケット型、耳掛け型、耳穴型の補聴器。ポケット型は服のポケットやカバンに入れて使うタイプで、サイズが大きいため操作が簡単。耳掛け型は耳の後ろに掛ける仕様で、種類や機能、カラーバリエーションが豊富。耳穴型は耳の穴に入るほどのサイズで、1人ひとりの耳の形に合わせてオーダーメイドで製作する。

左からポケット型、耳掛け型、耳穴型の補聴器。ポケット型は服のポケットやカバンに入れて使うタイプで、サイズが大きいため操作が簡単。耳掛け型は耳の後ろに掛ける仕様で、種類や機能、カラーバリエーションが豊富。耳穴型は耳の穴に入るほどのサイズで、1人ひとりの耳の形に合わせてオーダーメイドで製作する。


難聴と耳鳴りを予防する生活のポイント

難聴・耳鳴りを予防することも大切です。前回お話ししたとおり、耳鳴りの患者さんの9割は難聴があることから、難聴予防を心がけることが耳鳴りの予防にもつながります。

難聴予防のために重要なポイントは2つ。「メタボ対策」と「騒音対策」です。

■メタボ(メタボリック・シンドローム)対策

加齢によって聴力は徐々に低下しますが、この「加齢性難聴」を進行させる有力な因子が動脈硬化です。

動脈硬化が進んだ高血圧や糖尿病の人は心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなりますが、同時に難聴にもなりやすくなります。「動脈硬化があると加齢性難聴が悪化しやすい」という傾向も明らかになっています。

動脈硬化の原因としては、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、そしてメタボなどが挙げられます。つまり、動脈硬化予防のためには、生活習慣病とメタボ予防を心がけることが大切なのです。

■騒音対策

職場などで大きな音を聞き続けることで起こるのが「騒音性難聴」です。85㏈(街頭騒音)以上の騒音に8時間さらされ続ける状態が5~15年ほど続くと、発症リスクが高まるといわれています。大きな音になればなるほど、聞く時間が短くても難聴になるリスクは高まります。

連載第1回でお伝えしたように、耳から入った音は内耳にある蝸牛(かぎゅう)で電気信号に変換され、脳に伝えられます。このとき大きな音にさらされ続けると、蝸牛内部の音を感じるセンサーが抜け落ちたり傷ついたりしてしまい、その結果、音が聞こえなくなります。

対策としては、イヤホンやヘッドホンで長時間、音楽を聴かないようにすることを心がけましょう。騒がしいコンサート会場などで過ごした後は静かに耳を休ませることを忘れずに。

仕事や住まいの事情で騒がしい環境に身を置く時間が長い人は、耳栓を使用したり、騒音の生じる環境を少しでも改善したりするなど、可能な範囲で対策してください。そのうえで定期的に聴力検査を受けることをおすすめします。


「宇都宮方式補聴器リハビリ」を行う医療機関リスト

この連載で紹介した「宇都宮式」と呼ばれる補聴器リハビリを行う全国の医療機関リストです。病院選びの参考にしてください。
この記事が難聴や耳鳴りに悩む方の助けになることを、心から願っています。

■とも耳鼻科クリニック
〒060-0061 北海道札幌市中央区南1条西16丁目1- 246 ANNEXレーベンビル2階 電話011-616-2000 ※月、火曜日午前、金曜日午後、予約可


リンク先は家庭画報.comというサイトの記事になります。


 

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