積み木で遊ぶ子供

ADHD脳は障害ではなく「ギフト」、"不注意・多動"は一部にすぎない――1万人以上の脳を診た脳内科医が伝えたい真実

公開日時:2026/07/25 14:00

積み木で遊ぶ子ども

「ADHD脳」の能力を開花させる最大にして唯一の方法とは?(写真:eizan/PIXTA)

加藤 俊徳
医学博士/「脳の学校」代表

ADHDと聞くと、「多動」や「不注意」などネガティブな特性を思い浮かべる人は多いでしょう。しかし、それはほんの一側面にすぎず、ADHD脳を持つ子どもは、それよりもはるかに多くの天才的な能力を持っています。「超ポジティブ」「ノンバーバル思考」「桁外れのエネルギー」……そのすばらしい才能を開花させるには、まず一番近くにいる親がネガティブな視点ではなく、ポジティブな視点から子どもと向き合うことが重要です。
ここでは、脳内科医・小児科医の加藤俊徳氏の新刊『すごいADHD脳 -天才的な能力を200%引き出す方法-』から一部抜粋・編集して、すごい強みを持ったADHD脳の子どもが、その天才的な能力を存分に発揮するためのポイントを解説します。

 

すごいADHD脳は天才の素質

ADHDと聞いたとき、どんなイメージが浮かびますか?

「不注意」「多動性」「衝動性」

ほとんどの人は、この3つの特性を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、この3つの特性はADHD症状のほんの一側面にすぎません。そして、これらの症状があるからといって「発達障害」と断定する必要もないのです。

本稿では診断の有無にかかわらず、ADHD傾向にある人を含め、ADHD特有の優れた能力を持つ人たちを「ADHD脳」と呼ぶことにします。

ADHD脳は、これら3つの特性よりもはるかに多くのポジティブな特性を持っていることが、長きにわたる研究によってわかってきました。

「超ポジティブ思考」「先陣を切る自発性」「驚異の集中力」「桁外れのエネルギー」……これらはすべて「ADHD脳」が持つ天才的な能力です。ADHD脳が並外れた能力を秘めた天才であることは、今や世界の共通認識となってきています。

実際に、「ハリー・ポッター」シリーズで有名俳優になったエマ・ワトソン、スポーツ選手では水泳界で驚異的成果を出し、多くの金メダルを獲得したマイケル・フェルプスもADHDであることを公表しています。また、世界的起業家として知られるアップル創設者のスティーブ・ジョブズもADHDだったのではないかと言われています。

まさに「天才」と言われてきた人たちが、ADHD脳であることが知られているのです。

彼らは、「自分らしくないこと」をすることに違和感を覚えます。その結果、独自の思考力や高いエネルギー、創造性といったADHD脳の強みの特性を活かすことで、多くの人々にインスピレーションを与えてきました。

ものの見方、こだわりが規格外だからこそ、人が気づかないことに気づき、これまでにない発想で新境地を開拓し、あり得ないパワフルさで偉業を成し遂げていく人たちなのです。才能の種をたくさん持っている、それがADHD脳です。


「普通」に合わせなくていい

ADHD脳にとって、何よりも大切なのは「自分らしさ」です。どこまでいっても、自分のやり方で進めたい。自分の考え方を貫いて生きていきたい。そんなふうに自分らしさを求めてやまない人たちです。

ADHD脳が才能をうまく発揮できず、生きづらさを抱えてしまうのは、無理やり世間の一般基準に合わせよう、「普通(集団平均)」に順応させようとするから。つまり、自分らしく生きられていないからなのです。

その高い能力を開花させる最大にして唯一の方法は、自分らしく生きること。生まれながらにして強みを持っているので、素直にその特性を表に出すことが、才能を開花させるための正攻法です。

しかし現在、病気としてのADHDの診断項目は、不注意や多動性などのネガティブな症状を列挙した基準のものしかなく、強みがまったく診断基準に入っていません。ADHDの持つ強みを理解していないからこそ、子どもがADHDと聞くと、ほとんどの親はネガティブに捉えてしまうのです。

じっと座っていられるように

人の話は黙って聞いているように

周囲と足並みをそろえて行動するように

ADHDに関わる周囲の人間は、なんとか弱みを取り除いてあげよう、「普通」に近づけようと指導したり、叱咤する傾向があります。

ところが、これは逆効果。平均的なタイプになるように矯正しようとするほど、ADHDの弱み症状が表出している子は脳がさらに働かなくなるため、本人にとっても周囲にとっても意味のない行為になりかねません。それどころか、できないことばかり注目されるとADHD脳の強みは埋もれてしまい、自己肯定感は大きく下がります。弱みが強調されることで、しだいに生きにくさを強く感じてしまうのです。

これまでADHDについては、ネガティブなイメージだけが蔓延し、本来のADHD脳が持つ多くの強み、高い能力への理解がされていない実態がありました。

しかし、今や世界では、ユーモアがありクリエイティブ、そしてエネルギッシュなADHD脳は大人気。多くの場面で高い能力を発揮し、精力的に活躍すると期待されるADHD脳には魅力があるという認識に変わってきています。


医師よりも親の目が正しい

私が小児科医として、診察時に常に心にとどめているのは「親の目は正しい」ということです。

医師は医学的に判断した自分の見解に親が違和感を抱いたときには、親の違和感のほうが正しい事実と考え、自分の診断過程を見直す必要があると考えています。我が子のことを誰よりも考え、すべてを受け止める親の愛は、医師としての知識や経験を超え、子どもの本当の姿を捉える力があると多くの患者さんが教えてくれました。

診察室で見えるのは子どもの一面にすぎず、ほとんどの場合、毎日一緒にいる親から見えているものが真実なのです。

子どもが発達障害かもしれないと不安になったとき、ネットの情報をかき集めても不安を払拭できることはないでしょう。医師に「もう少し様子を見ましょう」と言われても、もし親であるあなたに不安や疑問が残っていたら、自分の「親の目」を信じてください。

「ネットにこう書いてあったから」「お医者さんがそう言ったから」と自分の不安にふたをしてしまってはいけません。あなたの不安に寄り添う医師を探してください。

発達障害と思える症状は、早く気づいて、早く対応を開始することが最重要です。

子どもに診断名をつけることが大事なのではなく、できるだけ早く耳鼻咽喉科や睡眠障害の専門家にも介入してもらい、我が子の脳が成長するために協力し合える医療と育成のチーム作りが大切だからです。不安や心配をあおるようなネットや周囲の意見より、自分の直感を信じましょう。


ADHDの弱み=発達障害ではない

現代の日本では、まだまだADHDは「障害」であり「悪いもの」だと認知されていることが多いのも事実です。

しかし、自身が強いADHD症状に悩まされ、加えてひらがな音読ができないという極端な遅れを感じたことをきっかけに脳の研究を志して半世紀。世界最先端のADHD研究に携わり、1万人以上の脳を診断してきた私がはっきりと断言できるのは、弱み症状だけをとらえてADHDをネガティブに受け止めるのは、間違っているということです。

今や世界ではADHDの強みの研究が進み、その高い能力は社会から大歓迎されているほど、ADHDをポジティブに受け止めるほうが常識になりつつあります。

ADHDの弱み症状だと思われている「多動」などの特性は、たしかに生きるうえでのリスクにもなりますが、これらは一部の症状でしかありません。ADHDの弱み症状があるからといって、「発達障害」だと断定する必要はまったくないのです


対策を取れば症状軽減できる

書影『すごいADHD脳-天才的な能力を200%引き出す方法-』(ワニブックス)

『すごいADHD脳-天才的な能力を200%引き出す方法-』(ワニブックス)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします
ADHDの弱み症状を引き起こす原因は複数あり、適切に鑑別診断して対策さえすれば、症状を軽減できることも、明らかになってきています。

また、ADHDの弱み症状は、他の病気が原因となって起こることもあります。

例えば、多動で落ち着きがない子は、扁桃腺肥大によって昼も夜も呼吸がうまくできず、睡眠時無呼吸症候群になっていることが原因である可能性もあります。この場合、扁桃腺摘出または、CPAP(シーパップ・持続陽圧呼吸療法)などの治療によって、多動性や衝動性は一気に改善することもあるのです。

だからこそ私は、ADHD症状を持つ子が「発達障害」であるという認識は変えていくべきだと考えています。

親の理解が早ければ早いほど、子どもが強みを伸ばし、社会の中で自分らしく生きる道が開けていきます。そのためにも、まずは親がADHDはギフトであるとポジティブに受け止めましょう。

 

記事のポイント! 

ADHDには不注意や多動、衝動性だけでなく、優れた集中力や創造性、豊かなエネルギーなどの強みがあるとし、子どもを「普通」に近づけようとするのではなく、その子らしさを理解して能力を伸ばすことの大切さを紹介しています。また、落ち着きのなさなどの症状には、睡眠時無呼吸症候群をはじめ別の病気が関係している場合もあるため、診断名だけにとらわれず、耳鼻咽喉科などとも連携して原因を見極め、早期に対応する重要性を伝えています。

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気になる症状がある場合は  

聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。 


原文掲載元はこちら 

 https://toyokeizai.net/articles/-/951726?display=b

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