田中美咲[Mashing Up Allies(公式アンバサダー)]
May 22, 2026, 6:30 PM

image:shutterstock
新年度になり、新たにDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)に関連する業務を担当することになった人もいらっしゃるはず。ただ、多くの人が最初に直面するのは、「何から学べばいいのか分からない」という壁ではないでしょうか。
DEIは単なる“良いこと”ではありません。組織の意思決定、プロダクト開発、採用、評価、文化形成にまで関わる、極めて実務的なテーマです。
一方で、その領域は広く、ジェンダー、人種、障害、セクシュアリティ、文化的背景など、多様かつ交差するものです。結果として、情報は散らばりやすく、学びの導線が見えづらいのも事実です。
そこで本記事では、これからDEIに関わる人に向けて、「最初の一歩」として押さえておきたいインプットを整理してみました。書籍、映画、実務ツールという複数の入り口から、全体像と具体の両方をつかめる構成にしています。
もちろんここに挙がっていないすばらしいリソースは山ほどありますので、ぜひこれをきっかけに調べてみたり、お勧めがあれば、ぜひ私にも教えてください!
まずは土台をつくる:必読に近い3冊+1冊
最初に押さえたいのは、「なぜ多様性が重要なのか」と「それがどう社会や組織に影響するのか」という構造理解です。単なる「良いこと」として多様性を語ることは容易ですが、それをハッピートークで終わらせないことが、実務において責任を持つ立場には求められます。
以下3冊は、私自身がチームメンバーや新たにDEIを担当する方に、まず最初に読むことを勧めているものです。

『多様性の科学(Rebel Ideas: The Power of Diverse Thinking)』マシュー・サイド(2019)
「多様性はなぜ“必要”なのか」ということを、感覚ではなくロジックで腹落ちさせる一冊。意思決定やチーム設計を見る目が変わります。
『多様性との対話』岩渕功一ほか編著(2021)
日本社会における多文化共生、ジェンダーや格差の構造を踏まえ、「多様性」という言葉の裏にある前提を問い直す本です。まさに多様性を批判的に捉えて議論をするのに良い1冊。
『Google流 ダイバーシティ&インクルージョン インクルーシブな組織をつくるための実践ガイド』アニー・ジャン=バティスト(Annie Jean-Baptiste)(2021)
理念にとどめず、制度・文化・マネジメントにどう落とし込むかの具体像が見える実践書です。
この段階では、「正しくなること」よりも、「単純化しすぎない視点」を持つことが重要です。
『ZINE - BEYOND CHECKBOXES』 PROJECT SOLIT(2024)田中 美咲、田野実 温代、和田 菜摘著
また、私が日本における企業のDEI担当者複数名と、さまざまな課題を経験したことのある当事者、そしてDEI関連の専門家の仲間たちと共に、近年のDEI推進における課題と展望をZINEにまとめました。(上記リンクはKindle版にとびます)
テーマ別に理解を深める
土台を押さえたら、次は個別テーマに踏み込みます。DEIは一枚岩ではなく、複数の論点の重なりでできています。基本的な用語や制度についてはAIや検索で概観を押さえつつ、書籍を通じて一歩深い理解に進むことをお勧めします。自分の担当領域や関心の高いところから紐解いていくのもいいでしょう。

障害とデザイン
『デザインと障害が出会うとき(Design Meets Disability)』グレアム・プーリン(Graham Pullin)(2009)
“できないこと”を出発点にすることで、従来の前提を揺さぶり、新しい発想を生み出す。
イノベーションと多様性
『ジェンダード・イノベーションの可能性』小川眞里子、鶴田想人、弓削尚子著(2024)
性別や属性に関する無意識の前提が、研究やプロダクトの質そのものに影響していることを示す
インターセクショナリティ・交差性
『On Intersectionality: Essential Writings』キンバリー・クレンショー(Kimberlé Crenshaw)(2019)
「インターセクショナリティ」という言葉の出発点となる思考をまとめた論集。日本語で体系的に読める書籍は多くないが、DEIの本質理解において重要な基礎文献です。
こうした本は、「知識を増やす」というよりも、自分の前提を揺さぶる役割を果たします。
感情から理解する:映画という入り口
DEIの理解には、当事者の経験を“追体験する”視点も欠かせません。映画はそのための強力な入口になります。作品が制作された時代や国の社会背景を意識しながら観ることで、理解はさらに深まります。
本を読むのが苦手な方にとっても、映画はひとつの対話のきっかけにもなりますし、お勧めです。
『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』(2025/韓国)
『ムーンライト(Moonlight)』(2016/アメリカ)
『ハーヴェイ・ミルク(Milk)』(2008/アメリカ)
『CODA あいのうた(CODA)』(2021/アメリカ)
『最強のふたり(Intouchables)』(2011/フランス)
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『ワンダー 君は太陽(Wonder)』(2017/アメリカ)
『ミナリ(Minari)』(2020/アメリカ)
『グリーンブック(Green Book)』(2018/アメリカ)
『ドリーム(Hidden Figures)』(2016/アメリカ)
多少の偏りはありますが、データや理論では届かない部分を、感情のレイヤーで補完してくれるのがこれらの作品です。
記事のポイント!
DEIを「良いこと」として捉えるだけでなく、組織づくりやサービス設計、意思決定に関わる実務的なテーマとして学ぶための本や映画が紹介されています。障害とデザイン、インクルーシブデザインに加え、映画『CODA あいのうた(CODA)』のように、ろう者の家族と聞こえる子どもの関係を描いた作品も取り上げられており、多様な人の視点をどのように社会や仕事に活かすかを考えるきっかけになります。
聞こえの本と映画
映画『CODA コーダ あいのうた』についてもう少し深く知りたい方には、LMHの「聞こえの本と映画」で紹介している映画『CODA コーダ あいのうた』もおすすめです。作品の見どころや、聞こえ方の違いが家族関係や日常のコミュニケーションにどのように関わるのかを、鑑賞前後に振り返るきっかけとしてご覧いただけます。
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