NON-STYLE石田明に聞く「浜田雅功・ブラマヨ小杉・フットボールアワー後藤」の共通点。絶対真似できないもの

NON-STYLE石田明に聞く「浜田雅功・ブラマヨ小杉・フットボールアワー後藤」の共通点。絶対真似できないもの

2026.01.26
「ローワライ」雪野朝哉が直撃1
ヤングマガジン編集部 

NON STYLE石田明さん(写真左)と「ローワライ」作者の雪野朝哉さん

NON STYLE石田明さん(写真左)と「ローワライ」作者の雪野朝哉さん


2008年のM-1グランプリ王者であり、今も第一線を走り続ける実力派コンビ・NON STYLEの石田明さん。自身のYouTubeチャンネルでのさまざまな芸人とのお笑い分析トークも人気です。Xで20万以上の“いいね”を獲得した漫画『ローワライ』の作者・雪野朝哉さんは、「聾とお笑い」を組み合わせたこの漫画を描くためにお笑いを大研究。石田さんの動画も多く見ていたといいます。

『ローワライ』は聴覚障害者の平里(ひらり)と、聴覚健常者の嶋が大学で出会い、お笑いコンビ「ローワライ」を結成し、漫才の頂点を目指す物語。第92回ちばてつや賞の優秀新人賞を受賞してXに投稿されたところ、大評判となり、2026年1月26日発売号から『ヤングマガジン』本誌で連載がスタートすることに。

Xで20万いいね!をこえた「ローワライ」。新人賞で「ちばてつや賞」を受賞した読み切りが、連載に!©雪野朝哉/「ローワライ」/講談社「ヤングマガジン」

Xで20万いいね!をこえた「ローワライ」。新人賞で「ちばてつや賞」を受賞した読み切りが、連載に!©雪野朝哉/「ローワライ」/講談社「ヤングマガジン」
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この連載スタートの「ヤングマガジン」グラビアページに石田さんと雪野さんの対談が掲載されているのです。

石田明さんは、緻密に計算された漫才で知られており、雪野さんも漫才研究のために動画を何度も観ています。作品のためにお笑いを徹底的に研究した雪野さんと、自著『答え合わせ』(マガジンハウス刊)の帯に「生粋の漫才オタク」と書かれている石田さんが、“笑い”の深淵に迫る対談はとても誌面に収まり切れず、特別にFRaUwebにて構成も変えているロングバージョンを掲載することに! その第1回は石田さんのお笑い分析。


雪野朝哉さんロングインタビュー 


1)デビュー前からXで20万いいね!「ローワライ」の覆面漫画家・雪野朝哉の「素顔」 

2)20万いいね「ローワライ」漫画家・雪野朝哉に聞く「ろう者とのやり取りが漫才になる」理由 

「ローワライ」無料試し読み 
耳が聞こえなくても漫才ができるのか。Xで20万いいね!雪野朝哉「ローワライ」の力

司会/ヤングマガジン編集部 構成・文/前川亜紀

M-1をみながらメモを取る?

編集:まず、漫画『ローワライ』の感想をお伺いしたいです

石田明さん(以下、石田):面白かったですよ! 作中漫才のクオリティが高いですよ。しゃべくりで、単純にもボケも面白い。お笑いの基本は緊張と緩和というのがやっぱりあって、「聾」というテーマはお客さんが緊張する題材ではあるんですね。それを緩和することでしっかりお笑いになっているし、それが作中のネタでも、ストーリーでもそうなっていて。

石田明さん

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雪野朝哉さん(以下、雪野):ありがとうございます。

石田:お笑いお好きなんですか?

雪野:好きですよ。でも、いわゆるお笑いマニアってほどではなく、テレビでネタ番組がやっていたら見る、とかその程度ですが好きです。

石田:作中のネタはどのように作ったのでしょうか?

雪野:お笑い番組や過去の『M-1グランプリ』(以下M-1)をひたすら研究しました。ちばてつや賞の締め切りが2025年の2月末で、『ローワライ』のネームを描き始めたのが2024年12月なんです。「12月と1月ってお笑い番組がすごく多くて、「M-1」をはじめ「ヒットパレード」「東西ドリーム漫才」など、他にもたくさんのお笑い番組をメモを取りながら見てました。M-1は過去の大会も遡って審査員のコメントもメモしながら研究しました。

雪野朝哉さん

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石田:それ、楽しめてるんですか?(笑)

雪野:楽しんで、笑いながらやってました(笑)。

石田:面白いですね(笑)。でも僕も元々そういうタイプです。昔はずっと劇場でメモりながらお笑いを見ていました。1回目は何もせずにひたすら笑う、で、2回目からはメモるってふうにして。

雪野:考察と分析をしながら観ていると、今まで漠然と面白いと思って笑って見ていたものに、法則性があることに気づいたんです。

石田: そうなんです。お笑いは緻密に構成されている。オチに近くなって「前にあったこの言葉があって、この言葉が効く」ことが、かなりありますから。

NON STYLE石田明さん(写真左)と「ローワライ」作者の雪野朝哉さん

NON STYLE石田明さん(写真左)と「ローワライ」作者の雪野朝哉さん


「M-1はお笑いのボディビルのようなもの」

雪野: M-1は審査員の方のコメントにも気づきがありました。ローワライを書く前は、純粋に「お笑いの大きな大会だ!」と楽しんでいたので、「こんなに面白いのに、審査員は厳しいコメントしているな」と思っていました。しかし、分析的にお笑いを観るようになってから「なるほど、この視点から考えれば、この人たちはもっと面白くなる」と納得しつつ、来年が楽しみになるんです。M-1はすごい番組だと改めて思いました。

石田: お笑いを徹底的に“競技”として捉えているんです。その対極にあるのは、寄席です。例えるなら、M-1はお笑いのボディビルのようなもので、無駄を削ぎ落とし、筋肉をつけ、どこまで仕上げていくかを競っています。

一方、寄席はお笑いの贅肉を見せるようなもの。お客さんもリラックスしているので、寄席でM-1のような漫才はウケにくい。寄席では、芸人のくまだまさしさん(ダンディサングラスなどのネタが有名。営業が多いことで知られる)のような人が、ウケます。M-1初代王者・中川家さんも、お笑いの贅肉を見せるのが上手です。使い分けをしているのでしょうね。やはり、お笑いは、お客さんと相互に作用をして成立するものだと思います。

石田

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雪野: 寄席といえば、先日初めてBKBさん(ピン芸人・バイク川崎バイク。サンシャイン池崎さんとのコンビ・シャウト‼︎ としてM -1に出場)のネタを見たのですが、とても面白かったです。

石田: そうなんですよ。M-1で評価され、テレビで見られる芸人は、寄席でも面白いです。

雪野:会場が一体となって「ブンブン」というネタをやっていました。「ああ、この人はこれほど面白いのに、なぜあれほどテレビでいじられているのだろう」とも思いました。

石田: 寄席でしか感じられないものが、あるんですよ。

雪野: 石田さんが著書『答え合わせ』(マガジンハウス新書)書いていらっしゃった「生っぽさ」のところですよね。

マガジンハウス新書「答え合わせ」


石田: はい。舞台とお客さんとの間には、それを遮断する薄いカーテンがあります。これをどれだけ壊せるかが漫才の……そして寄席の醍醐味。僕が見ている限り、M-1で育った人は、お客さんを遮断する傾向にあるんですよ。いつの時代からかわかりませんが、「お客さんと共にネタをやる」ことが、M-1ではよくないことと見なされるようになったと感じます。

 

「令和ロマン」のネタはカーテンが揺らいだ

雪野:それは自分たちの技を磨き、完成度を高めるということですか?

石田:はい。でも2023年の令和ロマンのネタを見ると、お客さんと一緒に作り上げる漫才になっているんですよね。

雪野:会場を巻き込むような雰囲気がありました。

石田:呼びかけ一つで、遮断しているカーテンが揺らぐわけですよ。お客さんが引き込まれ、今この世界を一緒に作っているという感覚が生まれると、皆が漫才の世界に入って行ける。

雪野:会場に行き、空間を共有して気づいたのは、芸人さんは声が大きく、よく通ることでした。

石田:声が大きいのも能力です。大きいほどお客さんに届くスピードが速くなりますから。これを声量と“間(ま)”で調整する人も多いです。例えば、上方落語家の桂文珍師匠は、最初に「わーっ」っと出てきて、その後、しばらく黙ることがあるんですよ。沈黙を長く続けた後に、お客さん見渡して、「え、僕の番ですか?」というと、バコーンとウケる。

そのまま「僕の番ですか?」と言ったらウケないと思います。間には“表間(おもてま)”と“裏間(うらま)”があって、「え、僕の番ですか?」は、裏間なんですね。たったこれだけで、「今リアルに生まれた感じ」が出てくるのです。

石田

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雪野裏間にすると、予定調和感がなくなるということですか?

石田:そうです。ですから僕もしゃべるときに。あえて詰まったりします。それは裏間を取りたいから。「今、思いついた」という感じになるんですよ。追い込まれた時は絶対裏間をとり、攻めたい時はシンコペーション(リズムの重心を意図的にずらす技法)にします。

雪野:音楽のアーティストさんの話を聞いてるようです。お笑い芸人さんたちは、いつもそんなことを考えているんですか?

石田: 感覚でやっている人がほとんどだと思います。僕も感覚ですが、説明を求められることが増えたので、理論をつけてみました。


お笑い芸人の「才能」とは

雪野:その感覚も能力の一つなのでしょうね。お笑い芸人の才能は何だと思いますか?

石田:多くの要素がありますよ。発想力とかもあれば、リアクションもそうだし、もうただただ個性っていうのもあります。キャラクター性の人、言ってしまえばそれこそ、ローワライの平里みたいに、顔がいいこともそうですし、それとは逆に顔がよろしくないのも才能です。身長は低い・高い、太っている・痩せているのも才能。重要なのは、これらの才能を、乗りこなせることなんです。これができないまま辞めていく人たちも多いです。

あとは声の才能もありますね。たとえばお笑いコンビ・ブラックマヨネーズの小杉竜一さんは、えぐいぐらいの声の才能の持ち主です。

雪野:「ヒーハー」とか。

石田:「ヒーハー」もそうだし、もう「なんでやねん」もレベルが全然違います。他の芸人が同じスピードで言っても、小杉さんには勝てない。あんな「なんでやねん」に攻撃力ある人いないわけですよ。1回のツッコミで、バシッとハマるそういう人は、希少価値が高い。他にも、ダウンタウンの浜田雅功さんもフットボールアワーの後藤輝基さんもダイアンの津田も「なんでやねん」の攻撃力が高いです。

雪野:声量、声のトーンと張りなどもひっくるめて、才能になるのですか?

石田:そうですね。声質、通り方、音圧もありますが、理屈や分析を超えた凄さがある。

石田と雪野

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雪野:「なんでやねん」は関西の言葉ですが、関東でそれができる人はいますか?

石田アンタッチャブルの柴田英嗣さんです。あの人の「なんでだよ!」は凄い。独自のリズムとスピードがある。場によって、「なんでだよ」とすべて言わずに、「(ん)でだよ!」って省略したり、早く言ったり、色々使い分けている。関西弁と比べて関東標準語はリズムを取りにくいんですけど、柴田さんはそれを見事に乗りこなしている。

編集:アンタッチャブルは、2004年のM-1で優勝しています。その漫才を見て80年代に漫才ブームを巻き起こした「やすきよ漫才」の横山やすしさんを思い出した人がいましたね。

石田:柴田さんは、関東標準語圏内の人(静岡県出身)なのに凄いことだと思います。

「ローワライは普通に売れると思います」

雪野:ローワライの平里と嶋は、お笑い芸人としてどうでしょうか。

石田ローワライは普通に売れると思います。ビジュアルも普通にかっこいいですし。

編集:二人がNSC(吉本総合芸能学院)の生徒だったら、どうアドバイスします?

石田:今後、どのように戦っていくかっていうことは話すでしょうね。ローワライの笑いは、事前にフリップを書いておくなど、「幕が上がる前に準備してきたこと」で笑いをとっています。彼らはやがてあらかじめ想定していることの先に、笑いを生み出すでしょう。それが楽しみですね。

©雪野朝哉/「ローワライ」/講談社「ヤングマガジン」

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編集:「ヤングマガジン」の連載は1月26日に始まりますが、それから何話目か先に、彼らが即興でネタをやる話があります。

石田:それはすごく楽しみ。やはりお笑いは“生(なま)”で生まれるものが最強なんです。どれだけ作り込んでも、その場で生まれるものには勝てない。だから多くの芸人が漫才をせずに、フリートークをするんです。その方が、笑いの爆発力が強いから。

雪野:その方がやりやすい、気持ちがいいという部分もあるのでしょうか。

石田:はい。今、この瞬間にいい笑いを作ったという爽快感があります。漫才って、宿題をきちんと提出するようなものなんです。でもそれを、「全く宿題をやってませんよ」って顔でやる。

フリートークは芸人同士が絡み合い、そこでバシッと笑いを決めていく。漫才とは別物なんです。とはいえ、漫才にもアドリブがあり、やはりウケます。笑いの鮮度が上がるんですね。

雪野:ローワライの2人は、平里が聾唖者なのでアドリブが難しい。平里と嶋のお笑い芸人としての才能は、どういうところにあると思いますか。

石田:感覚的に思うのは、才能がないボケは、ボケてる顔してボケるんですよ。

雪野:「今ボケてますよ!」みたいな。

石田:そうそう。でも平里は「ボケてない顔でボケられる」。これはすごい才能なんですよ。

雪野:ずっと普通の顔してます(笑)。

©雪野朝哉/「ローワライ」/講談社「ヤングマガジン」
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石田ツッコミの嶋も、常に動じないじゃないですか。これは間違うことに怯えていないからでしょうね。間違うことに怯える人は、ツッコミに向いていないんですよ。でも嶋は平里を誘ったときも、当たり前のように淡々と自分の意見を吐くじゃないですか。ああいうスタンスはツッコミに向いてるなと思いました。端正な顔で表情を変えずにボケられる平里と、間違いを恐れない嶋はいいと思いますよ。

雪野:そういえば、先日、学生のお笑いを見たのですが、ボケの人が「今ボケてるよ」という意図が伝わってきて、リアリティが少ないと感じました。作って覚えたものをただ再生しているように感じられて、漫才にも演技力が必要なのだと気がつきました。それこそ、石田さんは自身で脚本も書かれますし、演技もされますものね。そういう能力も才能の一つとして重要なのかもしれませんね。

石田:たしかにそうですね。演技力により、舞台の上にないものを、お客さんに見せることができますから。

編集:石田さんは、ご自身が舞台も手がけていますし、テレビドラマ(連続テレビ小説『スカーレット』〈NHK総合〉、『教場』〈フジテレビ系〉ほか多数)や舞台(『熱海殺人事件』『飛龍伝2020』ほか多数)など出演作品も多いですもんね。

石田:やはり、お笑いには必然性が何よりも大切だと思います。小道具や設定一つもあらゆる方向から考えますから。加えて演技力により、お客さんが自然に舞台の世界に入っていける。だから、多くの人を惹きつけるのでしょうね。

***

雪野さんは終始、ローワライの登場人物・平里と嶋がまるで実在しているように話し、それに真剣に答えていた石田さんの対談1回目でした。

2月2日公開予定の対談2回目ではバラエティ番組の背景について、2月9日公開予定の対談3回目ではローワライの魅力と漫画について、2人のディープなお笑いトークを紹介する予定です。

圧倒的な説得力がある『ローワライ』は、1月26日発売のヤングマガジンで連載スタート。Xで20万いいねの“推せる”コンビ・ローワライの活躍をぜひチェックしてください。

石田

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お笑いコンビ・NON STYLE 石田明(ノンスタイル・いしだ あきら)  
1980年大阪府大阪市出身。中学時代に出会った井上裕介と2000年5月にコンビ結成。神戸・三宮でのストリート漫才で人気を博し、オーディションに合格してプロデビュー。2006年「第35回上方お笑い大賞」最優秀新人賞受賞、「第21回NHK新人演芸大賞」演芸部門大賞受賞、2007年、NHK「爆笑オンエアバトル」9 代目チャンピオン、2008年「M-1グランプリ2008」優勝など、数々のタイトルを獲得。2012年、2013年、2年連続で「THE MANZAI」決勝進出。「M-1グランプリ2015」では決勝の審査員を、「M-1グランプリ2023」では敗者復活戦の審査員を務めた。2021年から、NSC(吉本総合芸能学院)の講師を務め、年間1200人以上に授業を行っている。テレビドラマ、舞台でも活躍。 YouTubeチャンネル「NON STYLE石田明のよい~んチャンネル」も人気。著書『答え合わせ』 (マガジンハウス新書)はベストセラーに。


漫画家・雪野朝哉(ゆきのあした)    
北海道出身、社会人を経て漫画家へ。2023年に『ひまわり』、2024年に『マイダンス』『残心』を発表。2025年『ローワライ』で、第92回ちばてつや賞 優秀新人賞を受賞しデビュー。好物は羊肉。1月26日発売の「週刊ヤングマガジン」から『ローワライ』連載がスタートする。



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