人工内耳埋め込み1年後、言語理解度と生活の質が有意に向上

人工内耳埋め込み1年後、言語理解度と生活の質が有意に向上

2025年11月28日

人工内耳(CI)による聴覚リハビリテーションを受けた成人227例において、埋め込み1年後に言語理解度、健康関連QOL(生活の質)が有意に向上し、うつ症状、不安、ストレス、耳鳴りによる苦痛が有意に軽減したことが示された。この研究成果は、J Clin Med誌2025年11月17日号に発表された。


単一三次医療センターでの10年間の経験に基づく大規模コホート研究

本研究は、人工内耳による聴覚リハビリテーションを受けた成人227例を対象に、言語理解度、健康関連QOL、併存症(うつ症状、不安症状、耳鳴り関連の苦痛)の変化を分析することを目的とした。また、この集団における健康関連QOLに影響を与える因子を特定することも目標とされた。研究では、人工内耳埋め込み前と埋め込み1年後のデータを収集。言語理解度(Freiburg Monosyllabic Test:FS)、主観的聴力(Oldenburg Inventory:OI)、健康関連QOL(Nijmegen Cochlear Implant Questionnaire:NCIQ)、うつ症状(General Depression Scale:ADS-L)、不安(Generalized Anxiety Disorder 7:GAD-7)、知覚されるストレス(Perceived Stress Questionnaire:PSQ)、耳鳴り関連の苦痛(Tinnitus Questionnaire:TQ)について評価した。


言語理解度と生活の質の向上、精神的苦痛の軽減を確認


Wilcoxonの符号付順位検定の結果、コホート全体で言語理解度、主観的聴力、生活の質に有意な改善が認められた。また、不安、うつ症状、知覚されるストレス、耳鳴り関連の苦痛を示すスコアは有意に減少した。Spearmanの相関分析では、埋め込み前は生活の質が主観的聴力と正の相関を示し、うつ症状、不安、ストレス、耳鳴りによる苦痛とは負の相関を示した。埋め込み1年後には、これらの関連性は持続しつつも強まることが確認された。回帰分析では、主観的聴力(OI)が生活の質の正の予測因子であり、うつ症状(ADS-L)と耳鳴りによる苦痛(TQ)が負の予測因子であることが判明した。特にNCIQスコアが低いまたは中央値の患者において、この傾向が顕著であった。


人工内耳の多面的効果と心理的介入の重要性


本研究は、様々な適応症を持つ成人患者の大規模コホートにおいて、人工内耳による聴覚リハビリテーションが言語理解度と主観的聴力を向上させ、健康関連QOLを改善し、うつ症状や不安症状、耳鳴り関連の苦痛の重症度を軽減することを示した。主観的聴力は生活の質に正の影響を与える一方、うつ症状と耳鳴りによる苦痛は、特に人工内耳埋め込み後のNCIQスコアが低い患者の生活の質に負の影響を与えることが明らかになった。これらの結果は、人工内耳埋め込み患者のモニタリングと心理的介入の重要性を強調している。研究者らは、人工内耳による聴覚リハビリテーションが聴覚機能の改善だけでなく、精神的健康や全体的な生活の質の向上にも寄与することを示唆しており、包括的なケアアプローチの必要性を指摘している。


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