「まだ若い」というプライドが、逆に老化を早める? 和田秀樹氏の書籍から、50代が陥る「過去の栄光」への執着と、オムツや補聴器などの道具を味方につける「賢い老い方」を紹介。今すぐ捨てるべき古い価値観とは?(画像出典:PIXTA)
和田 秀樹
2025.12.30

プライドを守って倒れるか、老いを受け入れて楽しむか……50代の分かれ道(画像出典:PIXTA)
「自分軸で生きる」ことの大切さはわかっていても、50代がなかなか手放せないものがあります。それは「過去の自分」です。
30代、40代の頃を基準にして、今の体力や気力にがっかりしていませんか? 「こんなはずじゃない」と過去の栄光にすがることは、実は自分らしい生き方を大きく妨げます。
本記事では、和田秀樹さんの著書『50歳からのチャンスを広げる 「自分軸」』(日東書院本社)から一部抜粋・編集し、50代が今すぐ切り替えるべき「老いを受け入れる覚悟」について解説します。
「老いを受け入れる」は諦めではない
「自分軸の生き方」を実践するうえで、多くの人が陥りがちなのが「過去の自分」に縛られることです。人は誰しも、若い頃の自分にとらわれがちです。体力や気力、見た目の衰えを受け入れられず、過去の栄光にすがろうとします。特に50代はその傾向が顕著です。
体力や食欲の低下などを自覚しつつも、まだ30代、40代の延長線上に自分を置いている人が少なくありません。
実は、私自身もそうだったために、48歳からクロード・ショーシャ先生に弟子入りして、アンチエイジングを学び、これ以上歳を取らないようにと心がけていました。実際、人より歳を取らないほうだと思いますが、60代になると明らかに老いが忍び寄ってきます。できることよりできないことが少しずつ増えます。老いを受け入れざるをえなくなるのです。
50代のみなさんは、そう聞くと、何かを諦めるように感じるかもしれません。体力や気力の衰えを自覚し、できないことが増えていく。確かに、そんな現実を直視することは、たやすいことではありません。
ただ、悲観する必要もありません。老いとはそういうものだと達観することで新たな扉が開くのです。テクノロジーの章でも書きましたが、今の世の中はシニア世代が不自由なく生きるための道具にあふれています。衰えを認め、道具を利用しながらでも社会生活に参加する姿勢があれば、みなさんが想像しているより快適な生活を送れます。
たとえば、耳が遠くなっているのならば素直に補聴器を使ってみましょう。おそらく、想像していたよりも人との会話を長く楽しむことができるようになるはずです。補聴器を拒否し続ければ、会話から遠ざかり、簡単にボケた状態になってしまいます。
足腰が弱って、歩行に不安があれば、杖や歩行補助器に頼りましょう。それらを拒否していれば、転倒・骨折のリスクも高まります。それこそ寝たきりに直結する可能性は低くありません。歩くのがおっくうになって外にでないと歩行困難だけでなく、脳の機能の低下にもつながります。
衰えを認めることが自立を守る
高齢者を補助する道具の中で、最も高齢者に拒否感が強いもののひとつにオムツがあります。「オムツをするようになったら終わり」と思う人さえいます。
私の知り合いの有名な音楽家の人は、ある時期から次のブレーク(休憩)まで尿がもたなくなり、オムツをする決意をしました。
本人にしてみれば一大決心だったらしいのですが、してみたらこんなに楽なのかと拍子抜けしたそうです。演奏に専念できるようになり、今でももちろん現役の音楽家として活躍しています。
道具だけでなく、素直に人の手を借りて、感謝の気持ちを伝えたほうが、お互いに物事が気持ちよく回ることもあります。
たとえば、公共のサービスに頼れば高齢者が楽になるだけでなく、家族の介護負担も減ります。行政の世話になりたくないと頑なに拒否する人もいますが、過剰な自尊心や羞恥心を捨て利用できるものは使ったほうが、生活の質が上がり、気分もよくなるはずです。
困難をどう乗り越えるかに知恵を絞り、柔軟に対応していく。それが「自分軸の生き方」の第一歩になります。
そのためにはこれまでの自分の生き方にこだわらずに、道具を味方に付けたり、行政に頼ったりしながら、柔軟に前を向いて歩んでいく。老いを受け入れるというのは、衰えを素直に認めて、それに対応して上手に生きることです。
これまでの自分の考え方や生き方を変えることになるかもしれませんが、変えることにより「老い」を乗り越えられるはずです。
過去の自分を忘れ、今を生きる
「老いを受け入れる」とは、決して諦めることではありません。「今」を精一杯生きる覚悟を持つことなのです。限られた残りの時間をいかに有意義に使うかというマインドリセットを行うことでもあります。
そして、能力や体力の限界を認識しながら、できることは続け、やりたいことをするということです。今を前向きに楽しむ。長年高齢者を診てきた私からすると、それこそが、豊かな高齢期を送るための秘訣といえるでしょう。
私自身も「今」を生きてきました。
40歳の頃はぼんやりと「まだ物書きとしてやっていけているのかな」と思ったことはありますが、「60歳の自分」はまったく想像できませんでしたし、想像もしませんでした。定年のない職ということもあって、40歳から60歳まであっという間に過ぎていきました。気が付いたら60歳になっていたのです。
ただ、それなりに今を一生懸命生きてきました。これからも特別に歳のことを考えずに生きて、「気がついたら80歳」ということになる気がします。
「予測不能な寿命」を悩んでも無駄
そもそも、人の寿命は分かりません。50代のみなさんの中には「持病もあるし、そんなに長生きしないし」と考えている人もいれば「食事にも運動にも気を配っているし、90代までアクティブに生きたい」と思っている人もいるでしょう。
ですが、人間の体は思うほど予測可能ではありません。たとえば、高血圧や糖尿病は、脳出血や心筋梗塞の確率を上げますが、そのような病気を抱えていても、脳出血や心筋梗塞にならない人はたくさんいるし、逆にともに正常値なのに、脳出血や心筋梗塞になって亡くなる人もいます。
いずれにせよ、60歳を超えて、歳を重ねるほど、時間の流れは速く感じられるのは間違いありません。だからこそ、「あの時こうしておけば」と後悔するのではなく、今を大切に生きることが何より重要になります。
過去に縛られるのでもなく、将来を悲観するのでもなく、今を充実させる。その意識が長寿時代を生きる、50代のみなさんの心構えと言えるのかもしれません。

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この書籍の執筆者:和田秀樹 プロフィール
1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。
東京大学医学部付属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部付属病院精神神経科助手、アメリカ、カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、現在、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長、 立命館大学生命科学部特任教授 。
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