スポーツを通じて共生社会をデザイン、富士通が目指す持続可能な世界(2)

スポーツを通じて共生社会をデザイン、富士通が目指す持続可能な世界(2)

富士通企業スポーツ推進室のみなさん

2024/8/8 12:03


大切なのは、多くの人にとって便利にという視点

――ほかにも、さまざまな方にスポーツをライブで観てもらう取り組みをたくさんされているんですね。

武藤:はい。聾学校の子どもたちを試合に招待し、観戦してもらう取り組みもおこなっています。そこで活用したのが、会話をリアルタイムで文字起こしできるソフト「LiveTalk(ライブトーク)」です。

ライブトークでの試合観戦の様子
ライブトークでの試合観戦の様子

武藤:もともとは2013年くらいから社内で議事録や聴覚障がいのある方が会議をする時に使用していたソフトです。当時は、みんながゆっくり話せば使えるくらいだったのですが、改良され、いまは普通に会話するスピードであれば拾えるようになりました。

さらにリアルタイムで翻訳も同時にできるのも特徴です。対応言語が多く、だいたいの言語であれば問題なく対応できます。

実際の「ライブトーク」の使用画面
実際の「ライブトーク」の使用画面

白鳥:富士通が開発する技術やサービスをスポーツ観戦に活かせないか検討したのがはじまりで、目の前の試合をリアルタイムでテキストに変換するというのは初の試みでした。

アメリカンフットボールの試合で実証したのですが、アメフトってルールが難しいんです。聴覚障がいのある社員と準備をし、観客席ではアメフト選手のOBの方に解説してもらいました。小学校の生徒さんと保護者の方々で、スマートフォンで見ながら試合観戦をするという形で実施しました。ほかにもバスケでも同様のことをおこなっています。


――元選手の方々が解説してくれるのは貴重な体験ですね。実際にライブトークを使ってみてどんな反響がありましたか?

白鳥:アメフトは試合の展開も早いので、解説のスピード感が大切なんです。アメフトをはじめて観戦するお子さんがほとんどでしたが、試合が決勝戦だったこともあり、臨場感が伝わってすごく楽しかったとおっしゃっていました。

武藤:同じ仕組みを使い、ウクライナから避難している方を試合に招待する取り組みも実施しました。2022年にロシアがウクライナに侵攻し、会社もロシアにおける事業の一時停止などの対応をおこなったのですが、ウクライナに対して何か支援ができないかと考えていました。横浜市がウクライナのオデーサと姉妹都市ということで、横浜市に避難民の方が集まっていることを知り、アメフトの試合に招待したんです。

男性は国防上の要請で出国が制限されているため、避難民の方は家族を残して日本に来ている女性がほとんどでした。アメフトはルールが難しいですが、ライブトークのおかげで楽しみ方もわかり、すごく盛り上がりました。それに避難されている方同士で集まって会話をするような機会がなかったので、スポーツの試合がきっかけになり、気分転換につながったようです。

ウクライナ避難民の方を招待した際の様子
ウクライナ避難民の方を招待した際の様子


――ライブトークとスポーツの試合が、コミュニケーションのきっかけになったのですね。

武藤:はい。ライブトークはもともと会議などのためにつくられたものですが、リアルタイムで文字起こしをするというのは、スポーツと相性がいいことがわかりました。聴覚障がいの方だけにとどまらず、一般の人もルールがわかりやすいですし、今後も広げていくことができればと考えています。


――ウクライナの避難民も、障がいのある方もニーズは多様で大きなものではないと思うのですが、そこにチャレンジされているのが素晴らしいですね。

武藤:会社としてイノベーションを使って世の中をよりよくしていく、という考えが根底にあることが大きいと思います。社会貢献のために自分たちのテクノロジーを使うという考え方が昔からあり、 そういう意味でも実際の課題やニーズがあるものに対して、積極的に解決しようという姿勢です。

ビジネスの視点で考えると、特定の対象だけに何かをつくるというのは厳しいのですが、ライブトークは翻訳機能もありターゲットが広いですし、バリアフリーマップも、車椅子移動の方だけでなくベビーカーを使う方やお年寄りの方々にも使っていただけるものです。ターゲットをより広く、多くの人にとっても便利にという視点が大切だと思っています。

富士通企業スポーツ推進室の二人


――たしかに、ちょっと視点を変えるだけでいろいろな方に使ってもらえますよね。これまで携わってきた活動の中で感じる、スポーツやデザインの力というのはどんなことでしょうか?

白鳥:センサリールームの設置はそれぞれのリーグと協力できたことで、感覚過敏への認知度が高まり、それが個人的にはいちばん嬉しかったですね。今後、もっともっとセンサリールームがあることが当たり前になる社会になっていけたらいいなと思っています。

武藤:富士通はさまざまな技術を持っていて、それがスポーツというフィールドで活用されたというのが印象的でした。ただスポーツ好きの人が何かやっているのではなく、スポーツという切り口で、技術の新しい使い方を見つけていく。そのためにも常に社会へのアンテナを高くしていたいと思っています。

極端に言えば、別にうちの会社の技術でなくても、 先進的技術を取り入れて社会に眠っているニーズを何かしら解決できたらいい。社会のムーブメントに一石を投じられるような存在になっていきたいなと思っています。

常盤:弊社は企業スポーツ活動を通して社会にポジティブな変化を与えたいと思っています。そこに弊社のテクノロジーが存在すればベストですし、今回ご紹介した取り組み以外にも大いに広がる可能性があると思っています。

企業スポーツというのは世界でも珍しい日本の特長的なモデルです。ビジネスではライバルでも、スポーツ活動ではそういったライバル関係を超え連携することが可能です。そういったスポーツの特長を活かし、各企業と深く連携しながら社会を変えていければと思っています。

富士通企業スポーツ推進室のみなさん
富士通企業スポーツ推進室のみなさん

Fujitsu Sports
https://sports.jp.fujitsu.com/

文:井上倫子 撮影:井手勇貴 取材・編集:石田織座(JDN)


関連記事
スポーツを通じて共生社会をデザイン、富士通が目指す持続可能な世界(1)


リンク先はJDNというサイトの記事になります。
Back to blog

Leave a comment