公開日:2026.09.09 / 更新日:2026.09.09
著者:Hint-Pot編集部

元デフサッカー日本代表で、デフゴルファーの中島正行さん【写真提供:中島正行(msnakaji)さん】
子どもがふと見せる飾らない言動に、親はハッとさせられたり、大きな成長を感じたりするものです。友達を連れて帰ってきた娘が、耳が聞こえない父親を紹介したときのエピソードがスレッズで反響を呼んでいます。いったい、どのように紹介したのでしょうか。投稿者で父親の中島正行(msnakaji)さんに詳しいお話を伺いました。
◇ ◇ ◇
手話を交えて友達に伝えた娘の言葉
「娘が、友達を連れてきた。『パパ、耳聞こえないんだよ』 紹介のされ方が、あまりにも普通で、なんだかうれしかった」
そんなエピソードをスレッズに投稿した中島さん。投稿のきっかけは、夏休みのことでした。友達を連れてきた小学5年生の娘さんが、玄関で中島さんを手話交じりに紹介したといいます。
「友達を連れてきて、そのまま流れで言ったという感じです。特別な間はありませんでした。家では手話で話すので、そのまま手話が出たという感じです。わざわざそうしたというふうでもありませんでした」
紹介された友達も「ふーん」という顔をしただけで、ふたりはそのままどこかへ遊びに行ってしまったそうです。
投稿には約3000件の“いいね”が集まり、「素敵な娘さん! パパさん愛されてるんだな」「お友達にとっては、自分の大切なお友達の大切なお父さんだから、それ以外のとこはどうでもいいのよ。最初からそう言ってもらえると理解できることがあるんですよね」「隠さないでいてくれたのうれしいですね」といった温かいコメントが寄せられました。
「偉いね」と褒められることへのモヤモヤ

2人の娘さんはパパが大好き【写真提供:中島正行(msnakaji)さん】
中島さんの「聞こえないこと」を、娘さんが特別視していないと感じたのは、これが初めてではありません。過去の授業参観でも、友達に「聞こえないだけで、みんなのパパと変わらないよ」と話していたことを、パパ友から聞いたことがありました。しかし、今回はその様子を直接見ることができ、受け取り方が違ったといいます。
今でこそ自然に振る舞う娘さんですが、中島さんにはかつて葛藤がありました。娘さんが小さい頃は、頼んだわけではないのに病院などで先生が娘さんに話しかけ、娘さんが中島さんと周囲の間に立って話を伝えることが多かったといいます。
そうした姿で、娘さんは周囲から「偉いね」「しっかりしているね」と褒められていました。しかし、中島さんはうれしいはずなのに、少し落ち着かない気持ちを抱えていたそうです。
「『偉いね』と言われるのは、娘が何かをしてあげている子として見られているということだと思いました。その役が固定されていくのが、僕は怖かったです。それに周りの人も、本当は僕と直接やりとりしてほしかったです。娘がいなければ話しかけないという状態が続くのが嫌でした」
娘さんの行動に感謝する一方で、中島さんには、娘さんに通訳としての役割を背負わせたくないという強い思いがありました。
「直接パパに言ってください」 娘の言葉が変えた景色

娘さんはふたりともとてもお茶目【写真提供:中島正行(msnakaji)さん】
そんな中島さんの思いを知ってか知らずか、娘さんが小学3年生頃になったある日のこと。空港の受付や病院、スーパーマーケットのレジなどで、娘さんは相手に向かって「直接パパに言ってください」と伝えるようになったのです。
「初めてそれを見たとき、心の中で拍手していました。僕が言わせたわけじゃないので、なおさらです。大人に向かって『直接パパに言ってください』と言うのは、子どもには簡単じゃないと思います。頼まれたことを断る形にもなるので」
中島さんが娘さんに「通訳しなくていい」と伝えたことは、一度もありません。ただ、時間がかかったり、うまく通じなかったりしても、やりとりはできるだけ自分でやると決めて実践する中島さんの姿を、娘さんはずっと横で見ていました。
「パパは自分でやる人だと思っていたんじゃないかと思います。その姿勢から伝わったのかもしれません」
娘さんが間に入らなくなったことで、行きつけのスーパーの店員やかかりつけの病院の先生は、中島さんのほうを向いて話すようになりました。うまく伝わらなくても、笑いながら身振りを交えたり、スマートフォンに文字を打ったりしてコミュニケーションを取ってくれるようになったそうです。
「むしろ、そのほうが気楽です。信頼感も違います。先方も、気づかないうちに対応力が身についているんじゃないかと思います。その様子を、娘は横で普通に見ています。自分が作った景色だとは、たぶん思っていません」
記事のポイント!
耳が聞こえない父親を「聞こえないんだよ」と友達にごく自然に紹介した娘さんの姿から、障害を特別視しない家族の日常が伝わります。一方で、幼い頃には周囲とのやりとりを娘さんが担う場面もあり、父親は子どもに通訳役を背負わせたくないと感じていました。娘さんの「直接パパに言ってください」という言葉をきっかけに、周囲も本人に向き合い、身振りや筆談、スマートフォンなどを使って直接コミュニケーションを取るようになった変化が印象的な記事です。
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